変化が起きる前のこと
(約700字)
ゆるブラック企業ではなかったんだな、というのが頭に浮かんだ。
仕事で、会社の業績から変化が始まることが分かり、一員である自分が巻き込まれる。
近く、ほかの係の担当から面接を受けることが決まった。
慣れてしまえば、ぬるま湯に浸かったような緊張感のない業務にすっかり気持ちは緩んでいた。
上司に呼ばれて約束の時間に会議室に居たのは、あまり会話をしたことのない上役が2人、そして直属の上司だった。
入ったことのない会議室に普段は挨拶しかしない面子が揃い、さすがに緊張した。
人件費を削り、会社の方針や勤務の体制を見直すことを告げられた。
そこまで聞いて、リストラを切り出されるかと覚悟した。
新しい業務内容の説明がなされて、内心は動揺していた。
できるだろうか。
給料は変わらない。
退社する理由は見当たらないため、前に進む選択をした。
来月、一週間も療養休暇をもらえることになったばかり。
社会にとっては、歯車の一部であると自負がある。
この国にとっては何でもない人員。
私ひとり居なくたって誰も困らないが、
私には大きな決心だった。
決断も、迷いも、
会社のビルの自動ドアが開いたら、ほんの
少し肌に冷たい夜風に吹かれているだけ。
長い髪が乾燥していた。
念入りにトリートメントをしよう。
自分を整えてから眠って、また日が昇れば
何とかなる気がする。
これまでだって、それなりに乗り越えた。
ここ数年、突出して良かったことは一つも
なかったけれど、今回はそんなに不安がない。
雲のかからない白い月を見られた。
繋がった縁をチカラに、ジャンプしてみる秋。
リアルでは友達2人から、それぞれ
お誘いメールが送られていた。
緊張とこれからの新しい縁に心が躍った。
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