童話 :『神様の居眠り』🐑
(約900字)
りっちゃんは、考えていました。
ノートを開いて、鉛筆をコツコツと鳴らしていました。
「目標、って言っても、何を書いたらいいか分からないんだよね〜」
りっちゃんは、家から5軒隣の遊び場に来ていました。そこは、子供たちが自由に過ごせるたまり場のようなスペースです。
りっちゃんのお父さんとお母さんは、学校の先生をしていました。数年前に交通事故で亡くなってしまい、りっちゃんはお父さんの兄弟の家で暮らしています。
「お父さんもお母さんも悪いことしてないのに、急にいなくなったでしょ?
りつ(自分)もそのうち、お父さんとお母さんのとこに行っちゃうんだよ」
ノートには、象やライオンやカメの絵が描いてありました。
「目標って、なんでもいいの?」
うーん、と頭を傾げて
「何でもいいと思う。じすうせいげんも無いんだって」
ふと見ると、窓からフワリと綿毛が入ってきました。高く澄んだ色の空に浮かぶ羊雲を2人で見上げました。
「お父さんもお母さんも、何でいなくなったんだろう。つまんないな」
〜そうだよね、お母さんに宿題を教わりたかったよね〜
その言葉は、飲み込んだ。
私は目を合わせずに言葉をしぼりだした。
「りっちゃん、眠いとき、あるでしょ?神様はみんなのことを見ているけど、時々、眠くなってしまうんだね。そのときに起こることは、止められないのかもしれないね」
「そうかぁ。気をつけていても、神様でも止められないこともあるかぁ。じゃあ、目標はむずかしいことじゃなくてもいいかな」
そうだね、手が届きそうな目標にしようか、と提案しました。
「りっちゃん、これが目標なの?」
ノートには色々な動物が描いてあります。
真ん中には、りっちゃんの姿。
「ずっと動物といっしょにいるんだよ。大きい動物も小さい動物も、みんな一緒にいるの。こういうところで、ずっと暮らすの」
りっちゃんは、大人のりつです、と人間らしき人物に矢印を向けて、満足そうに宿題のノートを閉じました。
羊雲がゆっくり流れていきます。
花が終わった後の綿毛は、いつの間にか見えなくなっていました。
おしまい
※初めてnoteで物語⁇を書いてみました。
神社仏閣巡りを好むのですが、神様の存在をときどき心から失っている自分がいます。
信じたいときだけ信じる、という選択肢もあります。