書籍と他の娯楽の関係について-重回帰分析を用いた検証-
読みたいなと思っている本を積んでいるのですが、なかなか減りません。減らない原因は明白で、本を読んでいないからです。読みたい、とすごく思っている自分がいるのに、スマホをいじったりして時間を溶かす自分が毎回圧勝してしまいます。決して、スマホをいじってる方が読書よりも圧倒的に面白いというわけではないのに、なぜいつも読書したい方の自分ばかりが負けてしまうのか、不思議に思っています。
こんな感じで、読書というものが他の娯楽に取って代わられているのではないかと思いました。そこで、読書と他の娯楽の関係を明らかにすることを目的に、県庁所在地別パネルデータを用いて、書籍の購入金額と他の娯楽に使うお金の関連性を重回帰分析によって検証してみました。
重回帰分析というのは、例えばYを被説明変数、xを説明変数、bを係数、cを切片としてY=c+b1x1+b2x2という式が考えられるときに、各説明変数xの係数bと切片cの値が何かを推定するものです。係数bが正であれば被説明変数Yと説明変数xには正の相関関係が、逆に負であれば負の相関関係があると考えられます。
重回帰分析の仕組みとしては、神様のみぞ知る真の値から構成される式があるとして、その式との誤差が最小となるように各係数を推定する、みたいな感じになっているような、なんかそんな感じなはずです(最小二乗法)。多分、そんな感じだったと思います……。
あんまり技術的な部分に触れるとボロが出るので止めます。
今回は上記の重回帰分析を用いて、読書と他の娯楽の関係を明らかにすることを目的に、2014-2018年の県庁所在地別パネルデータを用いて、書籍の購入金額と他の娯楽に使うお金の関連性を検証してみました。本と代替関係がありそうな娯楽としてスマホ、テレビや、パソコンが考えられます。そこで今回、被説明変数を世帯当たり総支出に占める書籍の購入金額の割合、説明変数を、世帯当たり総支出に占める移動電話通信料、テレビ放送受信料、インターネット利用料の割合として検証します。移動電話通信料は、スマートフォンでモバイルデータ通信を利用した際の料金を指します。例えば外出先でスマートフォンを使用する場合が当てはまります。インターネット利用料は家でwifiなど固定回線でインターネットを使う時のイメージです。例えば、自宅wifiでパソコン、スマホを使うのはこれに当てはまります。そのため、スマートフォンについては、外で電車とかでいじるときは移動電話通信料、家でいじるときはインターネット利用料に加算されます。データは総務省統計局「家計調査」からです。本来ならばこのへんで回帰式を書く必要があるのですが、noteに数式がうまく貼れないので諦めます。また、誤差項の相関を考慮するため、クラスターロバストな標準誤差を県庁所在地をクラスタリング単位として計算しました。
また、分析前の予想として、説明変数に設定している各娯楽は本と代替関係にあるものだと考えられるため、各説明変数の係数は負の値を取ると予想します。つまり、書籍にかけるお金と、スマホやテレビ、インターネットを見るのにかけるお金には負の相関があると思っています。
各変数の基本統計量は以下です。と言いたいのですが。表がうまく貼れないので諦めます。
分析結果は以下です。と言いたいのですが、表がうまく貼れないので頑張って文章だけで示します。変数ごとの回帰係数を示すと、切片は0.003***で0.1%水準で有意、移動電話通信料は-0.019*で5%水準で負に有意、放送受信料は-0.015、インターネット利用料は-0.045でした。
予想通りすべての係数の符号が負の値でした。この結果から、スマホ、テレビ、パソコンと本は代替関係にあるのではないかと考えられます。その中でも注目してほしいのは、スマートフォン利用料に*がついていることです。この*は、示された推定結果が統計的に有意であることを表しています。つまり、スマートフォン利用料の係数が負であることは、単なる偶然ではなく、意味がある可能性が高い、ということです。逆に、他2つの係数は有意ではないため、結果が負であることについては、偶然である可能性も捨てきれません。この結果から、特に書籍の購入金額と移動電話通信料には比較的強い負の相関があると考えられます。前述の通り、移動電話利用料は主に外出先でスマホを利用するときに加算されるものです。ここから、今まで外出先で本の出番となっていた場面が、スマホに取って代わられてしまったのではないかと考えられます。例えば、昔は電車移動中や友達との待ち合わせ中、本を読んでいたのに、今はスマホをいじっている、という経験があるかもしれません。私です。そのように、スマホが本に取って代わられているのではないかと思います。
娯楽の中でも特にスマホが本の立ち位置を侵略できたのは、外出時に関わらずいつでもすぐ手元でできる時間潰しの道具である、という本の特徴を、スマホ、テレビ、パソコンの中でスマホだけが唯一持ち合わせていたからではないかと思います。
以上から、読書と他の娯楽の関係について、特にスマホが書籍と強い代替関係にあると考えられます。スマホは「手元でいつでも使用可能である」という特性により、本の立ち位置を侵略できたのではないかと思います。分析により、本を読もうとしてもついついスマホに手が伸びてしまうのは私だけじゃなく全体の傾向であると考えられるので、私の積み読が全然減らないのもしゃーないです。私と同じく、みんなの右手(もしくは左手)の玉座にも、最近はスマホばかりが居座っていることでしょう。たまには本が革命を起こし、スマホの王座陥落を引き起こしてくれることを願います。100日天下でもいいので。