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ブータン映画『お坊さまと鉄砲』(3)前作『ブータン 山の上の教室』

2.ドルジ監督の前作『ブータン 山の教室』について

『お坊さまと鉄砲』にはいる前に、その前提となるのが、パオ・チョニン・ドルジ監督にとって初の長編監督作となる『ブータン 山の教室』Lunana: A Yak in the Classroom, 2019です。


主人公は、ブータンの都市部で暮らす若い男性教師、ウゲン・ドルジです。
音楽を趣味とするウゲンは、オーストラリア移住を夢見ながら、標高4,800m、人口50~60人の、水道も電気もないルナナ村に派遣されます。


Lunana, Bhutan 北部は中国、南部はインドと接しています

ルナナは、ブータン北端のガザ州に位置する僻村で、首都ティンプーから、バスと登山で8日間かかりまます。隔絶された環境に、ウゲンは当初は絶望したものの、村人たちの暖かな歓迎や、子供達の純真さと向学心に触れて、奮起します。

本作は、ブータン映画としては初めてアカデミー賞国際長編映画賞の候補作となりました(ちなみにこの年の受賞作は濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』でした)。

ルナナ村での撮影は困難を極めたようです。
当時のルナナ村は基本の都市インフラ(水、電気、ガス)が完全に欠けていたため、カメラをまわすのに太陽光発電でまかなったそうです。
また、登場人物の多くは、実際のルナナ村の村人たちが演じたそうですが、背景には、ブータンは映画産業が貧弱でプロの俳優が少ないというのもあるようです。

ドルジ監督が本作でアカデミー賞の外国語部門へ応募を考えた時点で、ブータン国内に公式選考団体は存在せず、そもそも、「ブータン」も「ゾンカ語」(ブータンの公用語)も、選択言語に含まれていなかったそうです。その結果、手続き上の問題で、応募は翌年に持ち越されたそうです。

とはいえ、さまざまな困難や不遇を乗り越えての本作のアカデミー賞候補にまで至ったことは、もっと強調されてもよいのではないかなとも感じます。


2022年12月17日には、ブータン映画の国際的認知度を高めた功績が認められ、ブータン王室のドゥルック・トゥクセ勲章を最年少で授与されました。

(まだまだ つづきたいです)


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