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イタリア2日目 ローマ市街地〜ヴェネツィアへ

ツアー旅行に参加したことがないから、ツアー旅行がどんなものなのか詳しくは知らない。

だけど、どんどん目的地に運んでもらえて、案内してもらえて、きっとすごく楽なんだろうな、と思う。

一度は試してみてもいいかもしれない。

対して、個人で海外を旅行するときは、あらゆるアクションのすべてが【クイズ】になる。

タクシーの呼び方、目的地への辿り着き方、宿の玄関の開け方、バスの乗り方、地下鉄の乗り方、公共トイレの使い方、食事の注文の仕方、お金の払い方…


私はこの小さなクイズたちを、試行錯誤しながら一つ一つ解くのが、結構好きだ。

しかも、イタリア。
意外なほどに、英語が通じない。
身振り手振りで伝えて、翻訳アプリで解読。


イタリア2日目、ローマ郊外。
早朝、宿にタクシーを呼ぶミッションから始まった。慣れない現地のタクシーアプリを使う。
観光名所がひしめき合う、ローマ市街地へ。



旅行に行っても、自分に縁もゆかりもないような観光名所には、行きたいと思うことは殆どないのだけど。今回一緒に旅をする家族は観光名所巡りをしたいと言う。

行ったら行ったで、楽しめると思うから、もちろん行く。

コロッセオ、トレビの泉、パンテオン…

事前にローマ史の本を読んでいたおかげもあって、「ここ知ってる!」という場所がいくつもあって。
画集でしかみたことなかった絵画の原画を、初めて肉眼で見るときのような楽しさがあった。

昔の人たちが途方もないような時間と労力を注いで作り上げて、そのあと、長い長い時間と雨風や日光が少しずつ衰退させた、その唯一無二の味わいに、まじまじと見たり手で触れたりして愉しんだ。


コロッセオの一部。
人が手を加えていない箇所はひとつもない。


観光名所になるだけある。見事。
だけどやっぱり観光名所。
軽犯罪が横行しやすい場所。
見事にターゲットにされたりもした。

背後から、私のリュックに片手を突っ込んでいる観光客風の女性を、次女が見つけた。

咄嗟に駆け寄って顔を覗き込み、「Hey!!!」って叫んで追い払ってくれた。

その様子を私に詳しく報せる次女の手は小刻みに震えていて、勇気を出してくれたんだな、怖かったよな、と思った。

だけどその逞しさ、立ち竦まない瞬発力に、嬉しくもなった。

10代、揺らぐ姿も見かける。
それでいい。それでこそ10代。
存分に揺らいだらいい。

でも大丈夫、生きていける。

と思った。
強く生きてほしい。ますます。



朝食とおやつに、バルに入った。
昼食はパスタの美味しそうなリストランテ。

どこに行ってもご機嫌な店員さんが目立つ。
無理な接客用笑顔でもなく、自然に「チャオ」と微笑んでくれる。

仕事することが楽しそうだなと思う。



バルのカウンターでは、店員さんとお客さんたちは、一言二言交わし合う。
お客さんたちは、エスプレッソをきゅっと飲み干して、コインを置いたらさっさと立ち去る。

これだけでいいんじゃないか、充分だな、と思った。

一言二言でもいい。
素顔で気楽に交わし合う。

誰も依存しない。さっさと立ち去る。重くない。
だけど拠り所ではある。


自分の喫茶店のことを想った。
いい喫茶店だと思ってる。

だけど、もっと違うかたちを試してみるのも、いいかもしれない。



炎天下のローマを歩き回り、夕方に鉄道の駅へ。

イタリアの新幹線のようなものに乗り、ヴェネツィアへ。所要4時間ほど。

時差ボケと、歩き回った疲労からか、移動中のほとんどの時間を死んだように眠った。


夜22時頃にヴェネツィアに着き、バスに乗って宿へ。

バスを見つけることも、チケットを買うことも、バス停から歩いて宿を見つけることも、鍵を開けることも、またまたクイズの連続だった。

イタリアの人たちは、夜中でも家族連れでぞろぞろと出歩いて、涼しい夜を楽しんでいる。

宿が見つけられなくて街中をウロウロしていたら、よちよち歩きの赤ちゃん連れの家族とすれ違った。

お母さんに宿の住所を見せて道を尋ねたら、言葉は全く通じないけれど、身振り手振りと、iPhoneの地図を駆使して、一生懸命道を案内してくれた。

その間、赤ちゃんは地べたに座り込んで、おもちゃで遊びながら、にこにことお喋りしていた。

現地に暮らす人の親切に触れる。素顔に触れる。
旅のありがたみ、嬉しさは、観光名所を巡るよりも、こういうときに、より鮮明に感じられる。

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