見出し画像

イタリア1日目、ローマ郊外

午前4時、まだ空は真夜中の様相。

トランクを積んだ車で成田空港を目指す。
東の空がうっすらと明るみを帯びだす。

「今から、世界の反対側に行く。」

新しい日の太陽を迎えるため、徐々に薄明るいオレンジ色を備えていく空を見ていたら、実感がやっと湧いてきて、どうしようもなく胸が跳ねる。


今回は、娘たちも旅に同行する。

私の趣味(カフェ文化に触れたい)が主体になる旅なので、一緒に行きたいと次女が言ったときは嬉しかった。

長女は旅に対して、気乗りしていなかった。
だけど長女とも、新しいものに触れまくるこの時間を共有したいと思い、しつこく誘ってみた。すると、渋々応じてくれた。

渋々応じていたけれど、いざ出発日が近づくと、たくさん写真撮るんだおしゃれするんだと、イタリア情報をあれこれ調べ、服に髪にどうしようとあれこれ準備していて、かわいいな、嬉しいなとほくそ笑んでいた。




飛行機の窓の外からは、海や、砂漠や、田園風景や、名前のわからない川、地中海など。
そこでもやっぱり、そこに暮らす人たちの生活が流れているんだろうな…と、想像しながら、時々外を眺めた。


所要時間は、乗り継ぎも含めて16時間。
本を読んでも読んでも、映画を見ても、眠っても眠っても。
時計を見るたび少ししか時間が経っていなくて、永遠に着かないような気になった。

でもちゃんと着いた。よかった。



初めて訪れる国、イタリア。
だけど空港に降り立ってみたら、不思議と、親近感がある。

湿度と気温が日本と似ている、というのもあるかもしれない。
あとはイタリアの人たちの、力の抜け感、と言ったらいいのだろうか。
空港の職員も、売店の人も、宿の人も、自然に無理なくフレンドリーで、自然に親切。
アウェイ感を全く感じない。
この感じ、気に入った。

親近感を感じられたのは、事前にこの本を読んでいったことの影響も、大きいかもしれない。



とても読みやすかった。

古代ローマの変遷を知ることは、歴史の中に「とんでもない人間くささ」を存分に感じられて、楽しかった。
遠い国、イタリアが、ぐっと近くなったように感じられた。



21時。タクシーで宿に着く。
ローマだけど、市街地からは離れた閑静な住宅街の中のアパートメントの一室に、宿を予約していた。

部屋よりもはるかに広いバルコニーからは、着いて早々、真っ赤な月と、遠くにゆらゆらと光るローマ市街地の明かりが出迎えてくれた。
夜風は優しく、湿り気はすくなく、心地よかった。
気づいたら、バルコニーにあったリクライニングチェアで30分ほど、ぐっすりと眠っていた。


静かな住宅街を見下ろすと、ところどころ、店の明かりがついている。

夕食をとっていなかったので、軽い食事をと思い、徒歩で近くのバルへ。このとき、22時。

(宿の人が、「このあたりの治安は全く悪くないから、安心して歩いて出掛けて大丈夫」と教えてくれた。)


歩いて5分ほど。気さくな店員さんが静かに開けている街角のバルを見つけた。

サンドウィッチと、ビールと、ジェラート。
それぞれ好きなものを頼み、外のテラス席でいただいた。


なんとなく、偏見で、イタリアの人たちは夜中まで働いたりせず、夕方にはさっさと家に帰って寛いでいるんだろうから、こんな時間まで開いてるお店は一軒もないんじゃないかと思っていた。

だけど実際には、こんなに静かな住宅街でも、あちこちに数軒のカフェがまだオープンしていて、「夜遊びが好きそうな人たち」ではなく、老若男女問わず、ラフな格好をした普通の住民たちが、テラス席で飲み物やサンドイッチなどを片手に、会話を楽しんでいた。


ああ、この感じ、いいな。
この営み、好きだな。
と思った。


この力の抜けた温度感。
外国人ファミリーが店に入ってきても、まるで空気が変わらない。

人と話すのは楽しいから、と、ただシンプルに。
一日の終わりに、好きな人たちと気楽にバルで楽しんでる感じ。


不思議と妙に馴染んでしまって、新しい体験のはずなのに気づけば写真を一枚も撮っていなくて、いま、びっくりしている。

私たちも、会話と軽い食事を楽しんだ。
優しい夜風の中を、幸せな気持ちで歩いて宿に帰った。


明日はローマの市街地に繰り出す。
明日は、ちゃんと写真を撮るぞ。
日記は、書きたくなったら書くぞ。


追記:

イタリア1日目。
次女は、実は新しい環境に、少し緊張していたみたいだ。宿に戻ってシャワーを浴びたらすぐに眠ってしまった。
長女は、あれこれ食べて、イタリアの慣習についてiPhoneで調べたり、宿の鍵の難解な開け方を積極的にマスターしたり、寝不足思い出して不機嫌になったりと、終始忙しそうだった。

明日から、二人はどんなふうにイタリアの空気を受け取るんだろう。
ゆっくり見守ってみようと思う。

いいなと思ったら応援しよう!