現代印象派画家KOH 〜絵を飾らない私が欲しがる絵
それはまさに絶望に沈む私にとって、ひとすじの希望の光だった
Instagramで偶然見つけたそのポストは、たしかクラウドファンディングについて書かれていたものだったと記憶している。
クラウドファンディングサイトCAMP FIREで支援金を集め、海外で画家としてのキャリアを積み、
2度目のクラウドファンディングでは、ルーヴル美術館地下で行われるアートフェアにブース出展の挑戦をすると支援を募っていた。
私はアートの世界に踏み出したばかりで、周りには海外で活躍するようなアーティストは1人もいなかった。
そうか、そういう世界もあるんだ…と、自ら描いた絵に囲まれて青年が座るその写真を羨望を込めて見ていた。
それが、私が憧れ、絵が欲しいとまで思わせた唯一の現存画家、現代印象派画家KOHさんとのはじめての接点だった。
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画家として生きていくことはなかなか難儀だと思う。
来る日も来る日もデッサンを続け、厳しい倍率を突破して美大に入学しても、卒業後に画家として頭角を表すことはさらに厳しい倍率だ。
土台となる技術力に加え、その描き手ならではの画風、一目でその人とわかる特徴的ななにかがなければ、たくさんの画家の中で埋もれてしまう。
人の好みも評価も時代とともに変化していくし、SNSの普及によりチャンスが広がったように見えて運要素の形が増えただけとも言える側面もあり…
誰もが知る過去の有名な画家のほとんどは実は死んでから評価されたなんて話を聞くと、もはや夢すら見れなくなる。
絵を描くことは好きだったけど画家を目指すことをしなかったのは、そんな厳しい世界で自分がやっていけるはずがないと最初から諦めていたからに他ならない。
私は回り回って偶然のオリジナリティの発見によって、画家とは違う切り口で遅ればせながらなんとかアートの世界に居場所を見つけようとしている。
しかしKOHさんは、多くの画家のように美大卒で画家になったわけではない。
シカゴに滞在中、路上販売を行う1人の画家の絵に感銘を受け、横に座り込んで見よう見まねで油彩画を始めた。
しかも前身はプロのテニスプレイヤーだったという。
最もクラシカルで敷居も倍率も高い油彩画しかも風景画の世界に飛び込んで、最も勢いのある若手画家として評価・期待もされている。
そんな一風変わった経歴にも興味が湧いた。
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KOHさんのInstagramの過去ポストを辿ると、彼の絵にはどれも印象的な独特の光が描かれていた。
単に光をテーマにした絵なら他にもありそうな気もするけれど、その輝きにこれまで感じたことのないほどにものすごく心惹かれるものがあった。
クラウドファンディングは日本人画家として最高額となる300万円を超える支援金を集めることに成功。
Instagramでその活躍を追いかけていた私は、次第にその光を実際に見てみたいと思うようになり、2019年5月に開催された個展に足を運んだ。それらは本当に圧倒的な眩い光だった。
絵の光の輝きに吸い込まれるようになると同時に、放射される光には包み込むようなエネルギーも感じられる。
その一点を見つめていると、頭の中のごちゃごちゃしたものが溶けていくようにぼーっとして、その光の中へと引き込まれていく。
写真で見るよりもずっとずっとその光は強く感じられて、
私は生まれて初めて、心から「絵が欲しい」と思った。
私は小さいころからずっと絵が好きで、自分でも描いていたし、美術の教科書の絵を眺めることも、美術館に行くことも好きだった。
けれど振り返れば不思議と部屋に飾るための絵が欲しいと思った事は一度もなかったように思う。
ずっと賃貸物件に住んでいるので、いまだになんとなく壁に穴を開ける事に抵抗があるからかもしれない。
そもそも自分の作品すら飾っていない。
そして・・・実を言うと風景画は私の好きなジャンルではない。
なのに、KOHさんの描く〈光〉が家にあったなら、どんなに素敵だろうと思ってしまったのだ。
その時から、KOHさんの絵を所蔵することは私の目標になった。
自分の作品が売れたお金でKOHさんの絵を買う!
それはすべてを失い作品を作ることしか残っていない抜け殻のような私に差した「私は今も生きている」というリアルなひとすじの希望の光だった。
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それからKOHさんの作品が常設されている六本木のギャラリー「 Donde Kristal & Glam|ドンデ クリスタル &グラム 」での在廊新作発表や都内の個展などには必ず出かけるようになる。
KOHさんの絵のモチーフは主に訪れた先で見た風景で、その場で見ながら描くのではなく心の中に残ったその景色を自分の中で消化しながら絵にしていくスタイルだ。
直接本人にどこで見た景色の絵なのかを聞いてみるのも楽しみの1つで、KOHさんが見たその景色を、絵を通して自分も眺めているような気持ちになり、ここではないどこかへ旅することができた。
KOHさんの描く光を浴びたその時は、悲しみから少し離れていることができた。
私はこの何ヶ月もの間絶望の淵に留まり続けていたけれど、心のどこかでは希望を渇望していたのかもしれず、それでこんなにもKOHさんの絵が欲しいと思ったのかもしれない。
KOHの描く「光」
それは「希望」であり「目標」
人生においていかなる状況でも
希望を見失わず
目標に向かい続ける事の大切さを
伝えていきたい。
僕の作品がそれを忘れない為の
あるいは思い出すきっかけになれば
嬉しい。
(出典:現代印象派画家KOH 公式ホームページ)