#3「苛立ち、不安、絶望を希望に変える3つの視点ーーその時、篠沢さんが見せた『恩を売る行動』の裏側とは?」【トキシックワーカーの影】
前回はこちらからどうぞ↓↓
1話はこちらです↓↓
着任早々の苛立ち
着任してから、とにかくイライラしていた。
着任して1か月はイライラするものだが、
この店は本当にひどかった。
まず、オペレーションがめちゃくちゃだった。
役割分担が全くなされておらず、
野菜を出していた人が途中で果物を出したり、
カットサラダの補充中にキャベツを並べ出したりする。
持ち場の意識が完全に欠けていた。
必死さは伝わるが、その光景は、
檻から野に放たれた動物たちと変わらなかった。
苛立ちと絶望で言葉が出ない。
このままではいけない。
「最初が肝心だ」。そう自分に言い聞かせ、
まずは改善の優先順位を明確にすることにした。
今すぐ変えなければならない部分と、
1~2か月後でも構わない部分を冷静に見極める。
焦れば信頼関係を損ねるリスクがある。
物事を捉える際に必要なのは
「虫の目、魚の目、鳥の目」
僕はまず、魚の目(全体の流れ)で状況を俯瞰し、
流れを整えることを優先した。
具体的には、持ち場の役割分担を徹底し、
全員が自分の仕事に集中できる環境を整えることにした。
細かい部分は後回しだ。
ただし、社員が本来すべきではない雑務は即座に切り分け、
スタッフに任せることにした。
人員不足が長引いた結果、
皆が「とにかく売り場を埋める」意識に偏ってしまっていたのだ。
それぞれの能力は高いのに統率が取れていない。
全員が同じ方向を向けば、この店はもっと良くなる。少し希望が見えてきた。
篠沢
改善の手応えを感じ始めた頃、ひとつのミスが目についた。
「アレ?きゅうりの産地が段ボールとPOPで違っている…。」
確認すると、それを補充したのは新人の篠沢さんだった。
「篠沢さん、きゅうりの産地が違っていたよ。補充時に確認しましょう。」
「あ、すみません!確認するようにします!」
指摘を素直に受け入れる様子に、正直ほっとした。
別の日に彼女を観察してみると、
笑顔で明るく挨拶をし、
積極的な接客もこなしていた。
「今日は〇〇がお買い得です!」といった声掛けも自然だ。
接客に関しては、これまでのスタッフの中でも群を抜いている。
しかし、彼女には華美な印象があった。
奇抜な私服や手首の装飾品などがそれを際立たせていた。
勤務中に着用しているのも気になったが、
なぜか誰も注意していなかった。
彼女自身は「お局三人衆」とも徐々に打ち解けているようだったが、
前任者から聞いた話が脳裏をよぎる。
「お局三人衆は仕事はできるが、わがままで、
自分たちの都合で物事を進める。」
篠沢さんの接客力や前向きな姿勢には感心しつつも、
どこか引っかかるものを感じていた。
恩着せがましさ
ある日、篠沢さんはこう言った。
「私はダブルワークですが、
お金が欲しいので、全然出れますよ。
他の人が突然休んだら、1時間後には出られる日もありますから。
人が足りない日も声かけてください。」
一見ありがたい申し出だが、少し引っかかった。
彼女の過剰な振る舞いと、
この「恩を売ろうとする」姿勢が気になったのだ。
「ありがとう。でも、そこまでしてもらう必要はないよ。
気持ちは嬉しいから、それだけ受け取っておくね。」
その場はそうやり過ごしたが、
気になっていた手首の装飾品について話すことにした。
「篠沢さん、手首の装飾類や時計は異物混入のリスクがあるから、
勤務中は外しましょう。」
「あー、これですか。はい、でも時計は時間を見ながら仕事しているので…」
明らかにトーンが低くなり、不満そうだ。
「時計は見える場所に配置されているし、
つけたい気持ちはわかるけど、
ルールブックにも載っているから…」
「わかりました。でも、聞いてなかったです。」
「でも」はマイナスポイント
「でも聞いてなかったです」は
必要のない言葉だ、ここは論破して教育し
納得させることもできた、部下なら行っていた。
今は、思うだけでいい。業務の改善は素直に行ってくれる
こちらが伝えてなかったことを謝ると、彼女は何か納得したような表情を見せた。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
Amazon Kindle出版を目標に執筆しています。
(夢は大きく)
皆様からの御感想や御意見を
真摯に受け止めて向上していきたいです。
コメント頂けると励みになります。
気軽なコメントもぜひお願いします