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2種類ある語彙の増やし方

↑の記事が結構長いこと伸びているので、今日は単語の覚え方について少し。

受動語彙と能動語彙

まず、「単語を覚える」「ボキャブラリーを増やす」と一口に言っても、まず語彙自体に種類が2つあります。ここを取り違えるとおかしなことになります。

この2種類の語彙というのは、ご存じの方も多いと思いますが、「受動語彙」「能動語彙」というやつです。

受動語彙というのは自分では使いこなせないけど(話したり書いたりするときに正しく使えない)、読んだり聞いたりしたときには理解できる語彙のことです。分かりやすく日本語に例えると、読めるけど書けない漢字みたいなものです。「魑魅魍魎」←これ大体誰でも読めると思いますが、書ける人はほとんどいないと思います。自分でこんな単語を手書きして使うことはまずないですからね。受動語彙もそんな感じです。

一方で、能動語彙というのは自分で使って書いたり話したり出来る語彙のことです。

極端で若干不正確なことを言えば、皆さんが日本語でやってる日常会話(プライベートであれ仕事であれ)が能動語彙、村上春樹の小説が受動語彙みたいな感じです。皆さんも村上春樹の小説を読んで意味を理解することは出来ると思いますが、「日常会話を村上春樹の小説と同じノリでやってください」「次の契約書は村上春樹の小説と同じ書き方でお願いします」とか言われても一部のマニア以外そんなことはできないでしょう。そんな感じです。

そんなわけで2種類の語彙をヘンな例えで紹介したわけですが、これらの語彙は覚え方が全く異なります。それぞれ見ていきましょう。

受動語彙

この受動語彙というものは、自分で言えなくても書けなくても使いこなせなくてもとりあえず聞いたり読んだりしたら意味がわかるというものです。つまり、発音も綴りも用法も(少なくとも最初のうちは)覚える必要はないということです。ただ、出てきた時に「ああ、アレか」と分かればいいわけです。

私がニュースとか洋書とか読むときの語彙も大半コレであり、自分でニュースみたいな文を書けと言われたら氏にます。ていうかニュース記事とか論文とか書くのはネイティブですら練習が必要でしょうから、その辺まで行くと最早英語力とかいう範疇を超えます。

さて、それを踏まえた上で受動語彙を増やすにはどうしたらいいか考えると、↓のようになります。

見聞きして分かったらオッケーだからインプットをどんどんやって無限にブチ込みましょう

要は多読多聴ということです。大量にインプットしても全部は覚えきれませんし、全部覚えようとしてもいけません。とにかく読んで聞いて、インパクトあるやつとか何回も出て来るやつが無意識に記憶に残っていくという感じでいいと思います。辞書やネットの使用はお好みで。多読勢は「辞書は使わない」と決める向きが強いですが、私は気が向いたときだけ辞書を使います。

ちなみに、冒頭の記事にも書いたのですが市販の単語帳をひたすら暗記するのは無駄が多すぎるのでお勧めしません。簡単なものからでいいので、最初からネイティブ素材にGoです。

こんなやり方ですから、記憶する語彙数は無限でオッケーです。ていうか管理できません。Out of control! 読んだり聞いたりする数は多ければ多いほどいいです。

言い忘れてましたが(そして当然ですが)、この受動語彙の数は能動語彙の数の何倍もの量になります。この後紹介する能動語彙の覚え方はもっとややこしいのですが、やりがちなミステイクが「受動語彙すべてに能動語彙の覚え方を適用しようとする」→「数が多すぎて氏ぬ」というものです。そもそも種類が違うので、ここを勘違いするとあまりいい結果になりません。

能動語彙

自分で使えないと意味ないやつがこの能動語彙です。

まず最重要なことが、数を絞ることです。
特に序盤は語彙だけでなく、文法項目や構文なども数をひたすら絞ります。で、その必要最低限の語彙や文構造をスラスラ話したり書いたりできるようになるまで練習あるのみです。

これには音読や暗唱、自分で作文するなど、文字通り能動的な覚え方が不可欠です。覚えたらインターネッツを使って(使わなくてもいいけど)、誰かに話したりメッセージを送ったりして実際に使います。

語学学習者がやりがちなミステイクに、無理ゲーな量をいきなり能動語彙にしようとすることが挙げられます。特に文法問題集とかを丸々一冊仕上げて「全部やったのに全然話せるようにならない!!何故だ!!」とか言って落ち込んでるみたいな人たまにみますが、あんな大量の文をいきなり全部話せるようになる方が異常です。実際には極少量の文(ここに能動語彙が含まれる)を何も考えなくてもポンポンと出せるまで練習するのが先決です。

そうやって絞った語彙や文構造を快適に使いこなせるようになったら、新しいものを覚える候補に加えてまた練習します。それの繰り返しです。

勝手に能動語彙に転移する受動語彙もある

これは朗報なのですが、頻繁に見かける受動語彙の中には知らぬ間に能動語彙に転移するものも多々あります。これらの語彙には以下の特徴があると思われます。

  • 綴りや発音がそんなに難しくない

  • 用法を他の単語経由で既に知ってる

  • 用法がそんなに難しくなくて大量に見聞きしてるうちに勝手に覚えられる

これらの条件は直観的にも理解できると思います。綴りや発音が短くて簡単だったら意識しなくても覚えられる可能性が高いです。

用法に関しては、そこまで複雑でなければ多読多聴の中で覚えられる可能性が低くないでしょう。

また、ある単語の用法を他の単語経由で既に知っていれば単に単語を入れ替えるだけで新しい語を使いこなせます。例えば、effectiveという単語の使い方を知っていれば意味が反対のineffectiveも同じように使えるだろう、といった感じです。(もちろんこの手の推論が思わぬミスを招くこともあるのですが、まぁそれは例外ということで。) ちなみにinvaluableをvaluableの反対だと思うと氏にます。なんというトラップ。

これらに該当する語彙は、受動語彙を増やしていく過程と既に覚えた能動語彙に関する知識の間で伸びていくので、基本的には学習を進めれば進めるほど増えやすくなります。

まとめ

そんなわけで、単語帳や試験勉強で受動語彙ばかり増やしている人が話せるようにならないのはよく考えたら当たり前なのでありました。学校の英語科目でも能動語彙を使える形で徹底的に覚えたりとかそんなことはせずにどんどん先に進んでしまうので、話せるようになる要素は大分少ないと思います(私の頃はそうでしたが、最近はどうなんでしょう)。

私も昔、スペイン語の文法問題集をバチクソ仕上げ、単語カード20束くらい(1束100枚くらいだった気がする)を一生懸命覚えていざスペインに行ったら口から何も出なくて氏にました。今考えてみると当たり前すぎます。そんなことしてる暇があったら使い道がありそうな文を100個くらいがっつり練習してった方が明らかに有意義でした。ちなみに単語カード20束分の語彙はその後半年も経たないうちに脳内から全て溶けて消えました。あんなん維持できません^p^


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