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私の料理の軸となった言葉

大阪の樟葉駅ビルにある水島書房くずは駅店さん。
私は去年関西に来たばかりで初めましての書店さんだったのですが、本と作家さんへの愛情が溢れた、特にPOPがとても素敵で作家さんからも愛されている書店さんで。
そんな書店さんですが、昨今の本が売れない状況に抗えず、惜しまれながら今月いっぱい7月31日をもって閉店されることとなりました。
最後にと、沢山の作家さんへ依頼され7月中にいくつものトーク&サイン会が開催されました。
その中に私の大好きな歴史小説『みをつくし料理帖』シリーズの作者である高田郁さんのイベントがありました。

SNSは一切されず、顔出しも全くされていない方なので、お人柄を知る手段は数年おきに出るエッセイのみ。申し込みが電話のみだったので、開始時間から何度もトライして、やっと11回目の電話で申込み出来た時は、嬉しくて声が出ました。

当日、1時間程前に取り置き本を購入しに行きレジにいたら、「いらっしゃいました~」と書店員さんに案内されて数人の方と入ってらした方が。
タイミング的にも間違いない!!旦那さんにキラキラの目を向けて訴えました。笑

トークが始まると「後ろの方が見えないから」と、椅子に座らず立ったままで、20分予定のところ30分以上沢山色んなお話を聴くことが出来ました。
あの場限りの内容もいくつかあったはずなので、1つだけ。

以前エッセイでも読んだことがあるのですが、夜間中学について高田さんはとても強い想いをお持ちでした。
昔、入院中だったお父様が向かいにある中学校をずっと眺めてらしたそうで。そこは、夜になると明かりがついていて高齢の方達がひらがなやカタカナ、算数を習いに通ってくる夜間中学をやっていたそう。
その光景が忘れられなかった高田さんは、作家になった後新刊の題材として夜間中学を書きたいと思い、2ヶ月間取材に通ったそうです。
そこでの体験は確か『晴れときどき涙雨』というエッセイに書かれているのですが、作品を書く上での原点になっているとのことでした。

私も、日々家族の食事を作る上でずーっと軸にしている言葉があります。
『みをつくし料理帖 八朔の雪』で、登場人物の一人である医師の源斉先生が澪に言うセリフにこんな言葉があります。

「口から摂るものだけが、人の身体を作るのです」

それまではただ美味しいものをと料理に励んでいた主人公が、"食事はそれ自体が病を治す薬や助けとなる"というこを知り、開眼する場面です。

私も料理はずっと好きで、一番といっていい程大事なものだと思って努力してきましたが、だからこそ読んだ瞬間に心から腑に落ちたというか。
あぁ、やっぱり間違ってなかったと改めてその大切さに気付かせてくれた作品でした。最初に読んでから10年以上経っても未だに色褪せず、ずーっと私が料理をする上での、一本の太い軸になっています。
私の作る食事を食べてくれる大切な人が、出来るだけいつも健やかであるように。食べる時間が楽しいものになるように。

なので、高田郁さんに直接お会いできたことは本当に嬉しくて。
家を出る直前に思い立ってお手紙を書いたのでサインを頂く際に直接お渡ししたら、「これ住所は書いてある?」とご本人から。「えっ!お返事頂けるんですか!?」とびっくりしたら、「ちょっとお時間は頂きますけどね」と言ってくださって。
泣きそうでした。お話し聴きながら既に何度か泣きそうだったけど。

とっても明るい方でした。
前後2週間以内にお誕生日の方がいらして、合図されて皆でHappy Birthdayを歌ったり(笑)

6月末の手術からまだ約3週間だったので、申込をする時点では色々と不安がありましたが、本当に参加できてよかったです。
前日に相当疲れた様子で出張から帰ったばかりだったのに、車で連れて行ってくれた夫にも感謝しています。
人生初めての入院・手術を無事終えてのとっても素敵な自分へのご褒美でした。

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