ジョン・コルヴィル「ダウニング街日記(下)」
対独戦で徐々に優勢となる英国軍。
激戦が続く中、官邸では様々な方面で先手を打つための準備が進む。
ソ連対策、オーバーロード作戦、戦後処理、ヨーロッパ連合。
チャーチルのリーダーシップの源泉は先見性と決断力だ。
独特な時間の流れも面白い。
会談に向かうための船と列車の旅、別荘への日常的な移動、午前中のベッドでの執務、午後の昼寝、来客との食事会や散歩、仲間との映画鑑賞、深夜に及ぶ執務・・・
歴史的な場面に次々と立ち会う中、著者の描写は常に冷静だ。
教科書で知るだけの遠い世界がぐっと身近に感じられる。
若き日のチャーチルがそうであったように、事実を記録することが後に大きな価値になることを著者は体現した。