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EU配偶者ビザ"Verification against EU law"申請ガイド

1. はじめに


オランダでのEU配偶者、
滞在資格 ”Verification against EU law” について
その説明と申請方法について記載をします。

投稿の背景

私はオランダ在住の日本人。1996年生まれの28歳、会社員です。2024年にEU市民(イタリア)である妻の仕事の都合にてオランダに移住をしてきました。妻は移住にあたって、特別な手続きは必要ありませんでしたが、私自身は、特に日本企業からの派遣や駐在といった形を取らず、また個人事業主、ワーホリ等も予定しておりませんでしたため、EU市民の配偶者としての就労許可と滞在許可の申請が必要でした。

その際に利用したのが「Verification Against EU law」という滞在資格です。この資格は、オランダ人またはEU市民のパートナーとしてオランダに移住する際に使用されるものです。

個人事業主や駐在員、学生ビザの手続きに関する情報はネット上でも多く見つかりますが、「Verification Against EU law」に関する情報は意外と少なく、外国語でもなかなか見つけられません。私の場合、EU市民である妻からの積極的なサポートがあったため、情報収集や申請もある程度スムーズに進みました。それでも不確定な部分も多く、不安な要素ももちろんありました。またパートナーの時間的な余裕等にも作用されますため、全てのカップルが同様のサポートを受けられるわけではありません。また、情報の不足により多くのストレスを感じる方もいるでしょう。

EU市民のパートナーとしてオランダに移住される皆様。この投稿が少しでもお役に立てれば幸いです。


簡単なポイント

  • いくつかの書類は、日本で準備してください。オランダに行ってからでは時間がかかる場合があります。(オランダからも取り寄せ可能)

  • 本記事ではRNIとしてBSN(市民登録番号)を先に取得する手順をとります。これにより、デジタルでの申請が可能になります。私の場合、申請開始から2営業日で”Endorsement Sticker”取得まで進むことができました。

  • 住民登録(Registration)は後回しにすることを想定しております。



2. Verification against EU law とは

簡単にこの滞在資格の内容について説明をします。申請方法が早く知りたい方は、飛ばしていただいて問題ないです。

概要と目的

「Verification against EU law」とは、EU市民の家族や配偶者がEUの自由移動権を行使して滞在する際、その権利をオランダで正式に認めてもらうための手続きです。具体的には、EU市民の非EU市民の家族(配偶者や子供など)がオランダに滞在する権利を確認するものです(※就労の権利については確定ではなく、後述します)。この申請により、居住権や就労権を得て、オランダでの合法的な滞在が可能となります。他のビザタイプと異なり、EU法に基づく保護を受け、自由な移動と滞在の権利が保証されることが大きな特徴です。
Verification against EU law for Union citizen family members | IND

対象となるのは、以下のようなEU市民の非EU市民の家族や配偶者です。

  • EU市民の配偶者(結婚している場合)

  • EU市民のパートナー(登録されたパートナーシップがある場合)

  • EU市民の直系の子供(18歳未満)

  • EU市民の扶養を受けている親やその他の扶養家族

他のビザタイプとの違い

  • EU法に基づく保護:
    「Verification against EU law」はEU法に基づく権利を行使するものであり、国際法におけるEUの自由移動と居住の権利が保護されます。これにより、EU内での滞在が比較的簡単で柔軟になります。

  • 迅速な手続きと簡素化された要件:
    他のビザ(例:労働ビザ、学生ビザ)と比較して、申請手続きが簡素化されており、必要な書類も比較的少ないことが多いです。

  • 特定の経済的要件がない場合が多い:
    他の滞在許可証では特定の収入基準を満たす必要がある場合がありますが、「Verification against EU law」では、EU市民の移動権行使の一環としての家族の滞在が認められるため、経済的要件が適用されないことがあります。

このビザのメリット

  • 居住権と就労権の確保:
    「Verification against EU law」を取得すると、申請者はオランダで合法的に居住し、場合によっては就労する権利を得ることができます。これはオランダでの生活の安定と経済的自立に直結します。

  • EU全体での自由な移動:
    このビザを持つことで、オランダだけでなく、EUの他の加盟国にも比較的自由に移動し、短期間の滞在が可能となります。

  • 長期的な滞在と家族の安定:
    家族がオランダに長期的に滞在し、一緒に生活するための安定した法的地位を確立できます。

  • 手続きの柔軟性:
    他のビザタイプと比べて、申請や更新が比較的スムーズで、必要な条件も少ない場合が多いです。


3. 必要書類リスト

「Verification against EU law」の申請には、以下の書類を準備する必要があります。 申請用紙や各書類の具体的な記入方法については別の記事で詳しく説明します。

  • Verification against EU law 申請用紙
    必要なフォームは右記のリンクからダウンロードできます。 申請用紙リンク

https://ind.nl/en/forms/5005.pdf

  • 戸籍謄本(アポスティーユ認証/翻訳付き)🇯🇵日本で用意

  • 結婚受理証明書(アポスティーユ認証/翻訳付き)🇯🇵日本で用意

  • 申請者(日本人)のパスポートのコピー ※写真ページに加え、すべてのスタンプが押されているページのコピーが必要です。

  • 配偶者(EU市民)のパスポートのコピー

  • 配偶者(EU市民)の収入証明書(オランダ語または英語)

  • 配偶者(EU市民)の雇用証明書(オランダ語または英語)

準備のポイントと注意点
最終的に書類を提出する際には、「郵送」「電子申請」の方法があります。 郵送で申請する場合、すべての書類に詳細番号(V-numberまたはクライアント番号)を記載する必要があります。どちらの場合でも提出をするのは、上記書類のコピーです。(※原本不可)また後で詳しく書きますが、私の経験上、

電子申請をお勧めします。
書類のPDF保存にはiPhoneの機能を使用しました。
iPhone や iPad で書類をスキャンする方法 - Apple サポート (日本)

4. 実際のプロセス

ここでは、私の経験に基づいて「Verification against EU law」の申請を最もスムーズに進めるための方法を紹介します。なお、この方法は、「Endorsement Sticker」を入手するまで住民登録(Registration)を行わないことを前提としています。理由としては、「Sticker」がない状態での住居探しが効率的でないと判断したためです。

渡航前の準備

※余裕を持って渡航の1ヶ月前には準備をスタートしましょう。

結婚受理証明書と戸籍謄本の取得(アポスティーユ認証 & 公的翻訳)
これらの書類は、日本国内で取得し、アポスティーユ認証および公的な翻訳が必要です。こちらの方法の詳細はいろんな記事に記載されておりますので、割愛します。指定された翻訳業者に依頼すれば、日本国内で簡潔が対応可能です(取得には1〜2週間、費用は合計で約15,000円でした)
※他にも、預金残高証明書など、住居探しに有用な書類がありますが、ここでは詳細を省略します。 和蘭翻訳事業者情報リスト

市役所(City Hall)へのRNI登録の予約(日本人と配偶者の両方)
オランダに到着後、最初のプロセスとして「RNI(非居住者登録)」が必要です。そのため、事前に市役所での予約を行っておくことをお勧めします。予約は、日本から出発する前に行い、オランダ到着後、できるだけ早い日程で市役所を訪問できるようにしておくと良いでしょう。市役所の所在地や連絡先は以下のリンクから確認できます。 
RNI登録のための市役所一覧はこちら

オランダ入国と下準備 

必要日数: 3〜5日間

オランダの電話番号の入手
電話番号を取得しておくと、今後の申請がスムーズになります。私は Simyoのプリペイド E-simを活用して、オランダ電話番号を入手しました。

eSIM: voor Sim Only en Prepaid, op het KPN netwerk - Simyo

市役所訪問とRNI登録(非居住者登録)
日本人と配偶者(EU市民)のどちらも、RNI登録を行い、BSN(市民サービス番号)を取得します。<渡航前準備>にて予約を行った市役所を訪問して、手続きを行ってください。

⚠︎詳細は下記を参照ください。

これにより、BSNを入手し、DigIDでの電子申請が可能になります。

DigIDの申請とアクティベーション(非居住者として)
日本人と配偶者(EU市民)のどちらもアカウントを作成してください。海外居住者としてのアカウント作成が必要です。アカウントを作成したのちに、指定されるオランダ国内の窓口にて、Activatinを行う必要があります。(※予約が必要)こ詳細については、以下のリンクを参照してください。また別記事にも記載予定です。
DigIDの詳細はこちら
⚠︎詳細は下記を参照ください。

N26銀行口座の開設(日本人のみで問題ありません)
オンライン申請時に必要なオランダ特有の支払いシステム(iDeal)対策として、N26の口座を開設しておくと便利です。
N26口座開設についてはこちら

⚠︎詳細は下記を参照ください。


申請〜結果まで 

「Verification against EU law」の電子申請 
「Verification against EU law」の申請は、「My IND」オンラインポータルを通じて行います。この場合、配偶者(EU市民)アカウントからの申請が必要です。申請に関する詳細や質問がある場合は、お問い合わせください。
申請フォームはこちら

INDからの通知(手紙)を受け取る(2〜3営業日)
INDから申請受理の手紙が届きます。その後、Endorsement Stickerの受け取りとバイオメトリクス認証を行います。

⚠︎詳細は下記を参照ください。

市役所にてバイオメトリクス認証
RNI登録と同様に、どの市役所でも対応可能です。手紙を受け取った翌日に、市役所(例: Zwolleの市役所)で予約を取り、訪問して手続きを完了しました。これで一時的な滞在許可(Endorsement Sticker)と労働許可(Decision Period)を取得でき、オランダでの滞在と労働が可能になります。※就職活動については別の記事で紹介します。

INDからの最終結果の連絡を待つ
現在、私もこの段階にいます。最終的な決定を受けた後、居住カードを受け取ることができます。




5. まとめ

以上、私が「Verification Against EU law」**の申請に当たって実際に経験し考えた、最もお勧めする方法をご紹介しました。
この方法を推奨する理由は、以下の3つです。

オンライン申請で状況確認が可能

オンライン申請を利用することで、自分の申請状況を随時確認できます。ウクライナ情勢や移住者の増加により、INDや市役所の対応が遅れることが多いです。オランダでは、基本的に電話がつながりにくく(長時間の待機が必要)、窓口訪問には予約が必須です。申請状況がすぐにわからず、提出証拠が残らないと不安になることが多いですが、My INDでオンライン申請をすれば、各プロセスの進捗を確認でき、精神的にも安心です。

BSN番号を事前に取得できる

オランダでは、行政手続きや保険手配などが日本に比べて簡素化されていますが、その一方で、何かを行うには他の書類や番号が必要になることが多いです。特に重要なのがBSN番号です。これを事前に取得しておくことで、申請結果を待っている間に「家探し」や「仕事探し」、その他の手配を効率的に進めることができます。

Sticker取得までのスピード

この方法と手順が結果的に最も早いかと思います。RNI、銀行口座開設を飛ばして、郵送にて直接申請する方法もございます。実際、私もこの郵送申請を行ったのですが、郵送後、10営業日がたった後でも、「INDから何も連絡がない」「INDに電話をしても1時間以上繋がらない」「繋がっても担当によっていうことが違う場合があり、状況がはっきりわからない」というような状況でした(情報のトラッキングを使用にも郵送のため、私が封筒を送ったという事しか確認できず。。)そのため、急遽オンライン申請に切り替えたところ、2営業日でINDから手紙が届きました。


6. さいごに

オランダに現地の方と結婚して移住する日本人の方は多いと思います。毎月多くの方がこの滞在資格を申請しているでしょう。私も申請を通じて情報の少なさに驚きました。英語での情報も限られております。Redditなどの知恵袋系サイトには、こちらの申請に関するやりとりを見つけることはできるのですが、信憑性という面では不十分でした。また、日本のオランダ大使館もビザ関連の詳細なアドバイスは提供していません。もちろん、移民弁護士といったプロフェッショナルな方々に申請を依頼して安心する方法もあります。しかし、こちらの滞在資格、書類の準備自体は非常にシンプルで、多くの方が自分で対応できるような内容だとと思います。(手順が簡潔にまとまっていないのが問題です)オランダ滞在の初期に大きな費用をかけるのはもったいないかもしれません。
この情報が、これから申請を考えている方々にとって、少しでも役立てば幸いです。


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