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「逆転」の鎌倉誕生史

鎌倉幕府の誕生とは何だったのか。その過程から、武家政権の誕生を見てみよう。個人的な結論としては、古代の律令制度を、よりリアルな統治者(武家)のための制度に変えたことだろう。 その律令制に反旗を翻した幕府がなぜ八幡神を祀ったか。これは意外と重要な論点である。 八幡神は「応神天皇」のこととされ平安末期から鎌倉にかけてもそう信じられていた。これが源頼朝を知る上で重要なポイントになる。頼朝が挙兵し、平家とは異なる政治統治方法を思いついたにも関わらず、それでも彼が信奉したのは、古来よ

    • 植物が変えた人類史

      コムギが人類を操り、世界中に広まった。そんな見方が増えている。人類に農業を教えてくれた主食である地位にとどまらず、世界でもっとも繁栄した植物として今日、君臨しているのかもしれない。 冒頭画像は、本稿では必ずしも主役でない植物「トウモロコシ」だが、コムギにしろ、トウモロコシにせよ、個々の植物だけで、ものすごい量の内容が書けてしまう。そんな植物たちの魅力的な横顔をサラッと見ていこう。画像の引用元は「ナゾロジー」のサイトだが、トウモロコシの項(下記に目次)で示す。 コムギコムギが

      • 日本列島、地域ごとの壮大な歴史

        「新世代第四紀」と聞いて、いつの時代を思い浮かべるだろうか。実は(他でもない)現在のことである。258万年前以降の時代区分だが、人類の登場に彩られた時代と言える。同じような(地質区分の)年代名で、有名な「白亜紀」や「ジュラ紀」が、ひとつ前の中生代になる。恐竜が活躍した時代だ。「カンブリア紀」もよく知られているが、こちらは古生代。生命が大爆発した時代である。 「地質」で分けた時代区分とは、そこから発見される生物化石の様相から相対的に定めたものである。代表的な生物が大規模な絶滅

        • 日本列島の誕生と、プレート原理

          最近のお気に入り番組「ブラタモリ」。テーマは非常に稀有だが、地学だ。この番組と並行して、NHKでは「ジオ・ジャパン」も好評だった。日本は地学の世界でも興味深いトピックの宝庫である。そんな番組に触発され、日本列島の100万年史を勉強してみたのが前稿である。 今回は、もう少し、地学の理論的なところを学んでみよう。冒頭画像は、『ちーがくんと地学の未来を考える』サイトからの引用。火成岩の分類のお話が分かりやすく説明されている。この話は本稿の中盤でも登場する。 プレート(地殻)はな

          人類を支える材料の話

          本稿で紹介する材料には、鉄(鋼)、アルミニウム、紙、ケイ素、ゴム、陶磁器(や土器)、炭酸カルシウム、絹、そしてプラスチック。実に、多様な材料が我々の生活を構成している。特に鉄は、建物や橋などの構造物をなし、車を走らせ、船を造り、交通・運輸を通じて都市文明を創っている。 冒頭の画像は、鉄の香炉の様子だ。引用元は下記の通り。 「Rolling Mill with Coil Box」 by Mouser Williams on Flicker 現代は、プラスチックの時代だ。多くの

          人類を支える材料の話

          具体例で考える著作権

          冒頭画像は、本稿参考図書からの引用である。その一部をネットで見ることもできる( イノベーションズアイ)。『知らなかったでは済まされない著作権の話』、堀越総明(ボングゥー特許商標事務所)の著作だ。 さて、我々の身の回りは「著作物」で溢れかえっている。写真しかり、テキストしかり、音声から動画に至るまで、著作物はインターネットを通じて、爆発的に増え、しかも拡散されていく。それらを勝手に利用することは、常に、著作権侵害のリスクを負うことになる。そんなことに「びくびく」することがない

          具体例で考える著作権

          フェアユースと著作権、その論点

          日本の著作権法は、非常に困った法律だ。大切な「フェアユース」が規定がない。これはネット社会において、著しい問題を孕んでいる。ひるがえって米国の裁判所は、その判決文で「(著作権法における)究極かつ最大の受益者は公衆である」と断言している。著作権法の最大の利益者は、何と、著作者ではないのだ。 冒頭画像は、アメリカのフェアユースを、図で示したものである。「What is Fair Use Copyright?」からの引用。 日本には、その「公衆」側に立つロビイストがいない。権利

          フェアユースと著作権、その論点

          明治維新の財政問題

          冒頭の写真は「大日本帝国政府日本銀行全景」である。明治政府が成立した後の大混乱は、政治的には西南戦争(明治10年)をもって落ち着き、金融的には日本銀行の設立(明治15年)をもってようやく山を越える。本稿では、その足跡をたどりたい。 幕末、鳥羽伏見(京都郊外)にて戊辰の戦いが切って落とされた。わずか4日間(1868年1月3日~)で幕府軍は敗走。空威張りだった幕府軍に対して、最初から戦を仕掛ける気だった新政府軍の作戦が功を奏した。そして同月末(1月29日)、新政府は商人を集めて

          明治維新の財政問題

          教科書とちょっと違う日本史の教え方

          日本史の、いや現代日本の、紙幣の肖像となった回数が最も多いのは誰だろうか。天皇の地位にあった方ではない。聖徳太子、その人だ。彼があまりにすごいため、実像はともかく、なぜすごく描かれるようになったか、そこに研究の焦点が当てられている。彼がやったか否かより、彼のいた時代に起こった出来事として、広く俯瞰してみる方が有意義だろう。 冒頭画像は、本稿の参考図書(下記)からの引用。 今回の参考図書は、歴史エンタメを、あの吉本で提唱・行動されている、房野史典氏の(共同執筆)作品。彼のツッ

          教科書とちょっと違う日本史の教え方

          お酒の科学【後編】:ビール

          ビールはいつの間にか、世界で最も飲まれているアルコール飲料となった。日本も、世界有数のビール消費大国だが、中国やブラジルやメキシコといった人口の多い国の消費量がいまなお伸び続けている。ただ、これだけ身近な飲料でも、僕たちのビールに関する知識は少ない。 冒頭画像は、キリンの「ビール大学」からのコンテンツ引用である。ぜひ、そちらを受講してもらいたい。無料で、多くのコンテンツを学ぶことができる。歴史から科学、そして今日での楽しみ方まで、さすがはビールの王者「麒麟」である。 本稿

          お酒の科学【後編】:ビール

          お酒の科学【中編】:醸造酒・日本酒

          お酒を神秘的に語ったり、お酒好きな方にありがちな官能部分について、本稿ではあまり深入りしない。あくまで科学的な部分で学んでみよう。ウイスキーの回(下記リンク)に続く内容でもある。 全部で三本続く連載でもある。 酒税法で言えば、日本酒は「醸造酒」にあたる。ワインやビールも同じだ。他には、ウイスキーなどの「蒸留酒」や、梅酒などの「混成酒」がある。 醸造酒は色々と気を遣うワインのブドウにはもともと糖分が含まれており、そのまま自然発酵でアルコールが産まれる。これに対し、大麦や米

          お酒の科学【中編】:醸造酒・日本酒

          お酒の科学【前編】蒸留酒・ウイスキー

          世界的に有名なウイスキー産地のひとつが日本である。それにしても、世界の五大産地のひとつに選ばれるのは大変誇らしい。日本初のウイスキーは、あのサントリーだ。創業者が、京都郊外の山崎の地に最初の蒸溜所を建設した。ちなみに、山崎の住所は大阪府で始まっている。 「山崎12年」がその代表格だが、そんな日本の奇跡に、若干違和感を覚える。この国にまったく存在しなかったウイスキーが、なぜこの国の産業に根付いたのか。その秘密を、科学的に探ってみたかったのが、本稿のテーマである。そしてもちろん

          お酒の科学【前編】蒸留酒・ウイスキー

          プーチンとヒトラーが重なって見える

          ウクライナの戦争を見るに、ロシアの指導者・プーチンには危うさを感じる。その人物像は、歴史を振り返ると、限りなくあの「ヒトラー」に近い。ところが滑稽なのは、そんなプーチンをしてウクライナを「ナチ」と呼ばしめたことだ。 そんなわけで、ヒトラーの入門書を手にしてみた。ヒトラーとプーチンは果たして同じなのだろうか。同書の作者は、著名な、そして一時不名誉な「都知事辞任」を経験した舛添要一氏。本来の職である、国際政治学者に戻って筆を執ったようだ。 ちなみに、冒頭画像は文春オンラインのコ

          プーチンとヒトラーが重なって見える

          「大国」になれるはずだった、小国ウクライナの悲劇

          日本の京都は、ウクライナの首都・キエフと「姉妹都市」の関係にある。その歴史は共産圏の時代にさかのぼり、両者に共通するのは「古都」であること。ただ、日本とウクライナはあまりに遠く、両者の本格的な交流の記録は、ソ連崩壊以降のことである。 ロシア人側も、みずからの起源(のひとつ)と考える都市。それがキエフだ。有名な聖ソファア大聖堂は11世紀に建てられ、千年の歴史をもつ。皮肉なことに、この理屈(ロシア人とウクライナ人は「ひとつの国民」)は、昨年、プーチン大統領が論文で主張しているも

          「大国」になれるはずだった、小国ウクライナの悲劇

          「やさしき革命」は何に挑んだのか

          以前、社会の変革を担う、アダルトグッズ・メーカー、TENGAの物語を紹介した。おそらく、多くの男性にとって知られた企業でありながら、彼らの奮闘はなかなか知られてこなかった。タブーに挑み、社会的意義のある問題として向き合う。だからこそ、著名人の方々が、堂々と名前をさらして支持してくれる。 そんな恥ずかしさをぬぐえない話題。それが「性」に関することだ。とりわけ「自慰行為」はなおさらだろう。社会ではタブーのレッテルを貼られ、親子関係でも口にすることがはばかられててしまう。 タブ

          「やさしき革命」は何に挑んだのか

          ある企業の「やさしき革命」の行方

          TENGAが「典雅」であることを知っている方はどれくらいいるだろう。この漢字は造語ではない。上品さを示す一般単語だ。この単語をブランドに冠した商品が、実は抜群の知名度を誇るオナカップだ。しかし、この、有名であるのに、知られていない企業。本稿はこの謎に挑む。 言葉の力は恐ろしい。たとえば、オナニーという単語。これはセルフプレジャーと言い換えるだけで(たとえ、何のことか分からなくても)卑猥さが消える。言葉がともなっている固定観念とは恐ろしい。何よりも、それを「偏見」だと気づかず

          ある企業の「やさしき革命」の行方