世界で一番若い国を背負っていく母と娘たち 映画「南スーダンで生きる ~ある家族の物語~」(2022年)@難民映画祭
国連UNHCR協会主催の難民映画祭、4本目は、「南スーダンで生きる ~ある家族の物語~」を観ました。またまた、夜にオンラインセミナーがあるので、日中にダーッといろいろこなして、映画鑑賞。
想像と違いました。予想外に良かったです。いつも映画は「予習」をせずに観ているのですが、困窮や暴力にさらされながらも故郷で生きる家族の話かな?と、うっすら思っていたら、南スーダンの「建国の父」の未亡人とその娘たちの話でした。
未亡人といっても、南スーダンの独立闘争の指導者である夫に常に寄り添い、「国の母」的存在となり、夫を亡くしてからも、おかしいと思ったことには声を上げたために国を追放され、そして、再び国を建て直すべく帰国して副大統領に就任するという、闘う女性です。
この人の言葉が、とても良いのです。
母の姿を撮影する娘(映画の監督)は、帰国後、「無職で独身、実家暮らし」で、自分と祖国との関係や、自分自身の道に悩んでいます。
母や妹は国や国民の現状をなんとかしようと覚悟をもって進んでいるし、街角でお茶を売る女性たちも生活のために一生懸命働いている、そうした人たちと比べて、自分は「建国の父」の一家であるという特権的な存在であるだけで、何者でもないと揺れているのです。
そんな娘に、母は、
「あなたも政治に関わっている」
「撮影をして記録に残すのは政治よ」
「世に発信するのが政治」
「話し合うのもそう」
「“政治”は自分の考えを持って行動することよ」
と言います。
おおお、そうそう! そうですよね!! 思わず、再生を一時停止して、メモってしまいました。
政治というと、政治家がやることだとか、政党の分裂と統合だとか、権謀術数とか、汚いことばかりで、自分たちとは遠いところで勝手に行われていることと思っている若者も多いのですが、政治ってそれだけではないし、関わり方にもいろんなありようがある。社会や国に貢献する方法もいろいろある。
人ごとのように傍観したり、無関心だったり、あきらめていたりしても何も良くならない。だけど、政治家になったり、直接何かの活動に従事したりするだけが政治との関わりということもないのです。
大学で教えることだって、ともおっしゃってました。ありがとう、副大統領。
自分が頑張る姿を見せることで、若い女性に希望を持たせたい、若い世代を大事にしたいとも話していました。
そんな毅然とした女性ですが、亡き夫の墓(記念碑?)を前にすると泣き崩れます。
生涯にただ一人の夫を愛し続ける妻であり、家族を愛する母親であり、国を建て直そうと奮闘する政治家。
この映画でも、ほれぼれする女性を知ることができました。
そして、悩みながら映画を製作した娘さんですが、とても良い作品を作る才能のある人だと思いました。ドキュメンタリー映画ですが、映像も編集も良くて、美しい作品になっていました。
ぜひ、この後も、作品を生み出していってほしい、また観てみたいと思いました。