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やっと観れた! アンジェイ・ワイダ監督作品「灰とダイヤモンド」「地下水道」
今学期は、大学図書館所蔵のDVDを次々鑑賞するひとりプロジェクトを遂行しています。
ありがたいことに、ポーランドが世界に誇る巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の古い作品も所蔵されていて、ずっと見れていなかったのをいくつか見ることができました。
「灰とダイヤモンド」、そして「地下水道」、さらには「約束の地」です。「約束の地」は時代もテーマも異なるので、また別途、記録するとして。
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ポーランド映画と言えば必ず名が挙がる「灰とダイヤモンド」、なかなか見る術がなく、ようやくの鑑賞となりました。
第二次世界大戦中、ドイツ占領軍に抵抗し、多くの犠牲が出た「ワルシャワ蜂起」の生き残りである青年マチェクは、戦後、独裁体制を強めていくポーランド共産党の幹部を暗殺するが、自らも撃たれてゴミの山で悶え苦しんで死ぬ、という話です。
大まかなあらすじや、青年が死ぬ場面についての解説はあれこれ目にしてきましたが、実際にちゃんと鑑賞すると、イメージとは少し違っていました。
主人公の青年が狙う相手は、共産党の偉いさんなのですが、この人もドイツと戦ってきた人。そして抵抗運動に参加して行方知れずになっている息子を探しています。人あたりも良く、殺されても仕方ない嫌なヤツどころか、むしろきちんとした紳士として描かれています。
対して、青年らは、その偉いさんと間違って工場の労働者を殺してしまう。そして、人違いだったことが判明してショックを受けながら、その直後に酒場で一目ぼれした若い女性にぐりぐり押しの一手でナンパする。どうも共感できないのです。(^_^;)
重要な登場人物2人を、それぞれそういう人物像にしたからこそ、1958年当時の検閲を通り抜けられたのでしょうけど。でもなあ~
日本で公開された当時は、どう受けとめられたのでしょう。1959年くらいでしょうから、きっと青年に自らの理想や苦悩を投影して共感した人が多かったのではないかな。
自分たちの国を自分たちで守る! その大義のために命をかける! ついでに影のある美女との劇的な恋もできちゃう! でもそれを振り切って男同士の使命を選ぶ!! なのに志半ばで散っていく… 当時の青年たちにドーンと響いてそうです。
◇
それからすると、その2年前の作品「地下水道」の方が、登場する多様な人々の誰もかれもが悲惨で、ぜんぜんヒロイックでなくて、生々しさに満ちていて、予想よりも引き込まれました。
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こちらは、「灰とダイヤモンド」よりも前につくられた作品であり、舞台も「ワルシャワ蜂起」の最終局面なので、前史的な話となっています。
ドイツ軍に反旗を翻したものの、どんどん追い詰められて、地下水道に潜ることになった抵抗軍の面々は、道案内できる女性とはぐれてしまい、迷路のような下水道をさまようことになります。
体力を奪われ、精神状態もおかしくなっていく人びと。次第にエゴが表出して… まったくもって救いのない、絶望的な展開です。
少し前にワルシャワ蜂起関連の展覧会や実録映像による映画も観たので、ああワルシャワ蜂起の最後の方は、地下でこんなことになっていた人たちがいたのか…と、より関心が持てたのかと思います。
こちらも広くおすすめするというようなタイプの作品ではないですが…
◇
ワイダ監督の晩年の作品の方が洗練されていて面白く思いますが、この2作を制作したとき監督はまだ30歳そこそこだったのですね。そう考えるとやっぱりすごいですね。
何年も探していた2作、これにて鑑賞完了!
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