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シノンの家族経営ワイナリー・クーリー・デュテイユ

1月3日の金曜日、我々家族と食道楽のS氏も加わった2泊3日の小旅行。

まず目指した場所は、ロワール川の流域のヴァル・ド・ロワールと呼ばれるワインの名産地・トゥーレンヌ地方にあるシノン。シノンではヴィエンヌ川沿いでブドウを生産していて、その殆どが赤ワインの生産となっている。

カベルネ・フランと呼ばれるブドウ品種を使い造られるシノンの赤ワインは、フランスのチェリーの果肉やラズベリーのようなフルーティーさに加えて、爽やかなハーブの香りに、柔らかいタンニンが特徴。

またその殆どの生産者のワインが10ユーロ前後で購入でき、味わい自体も普段の食事との相性も良く、気軽に楽しめるワインが多い印象のワイン産地。

僕がこの地域周辺のワインが好きになったきっかけは、ボルドーのレストランで務めていた当時のシェフが、ヴァル・ド・ロワール地域一帯のワインを好んで飲んでいた事から始まる。

彼は僕がワイン好きなことを知ると、自分が飲んで気に入ったワインのことを普段からよく話してくれ、それに影響されて自分でも少しずつワイン産地の興味を、彼を真似するように広げていった経緯がある。

赤ワインはカベルネ・フラン、白ワインはシュナン・ブランで造られるアンジュ・ソミュール地区を中心として、ロワールワインのそれぞれの地域を代表する様々な造り手のワインと出会うことで、僕はファンになっていった。

だから当時はボルドーに住みながらボルドーワインの探求と同じくらい、熱心にヴァル・ド・ロワール一帯のワインに触れていた時間が長かったと思う。

さて今回、食道楽のS氏と僕自身も初となるシノンの訪問。自宅を出発して車で二時間半の道のりの末、シノンの街の中心地に到着。

フランスは冬ヴァカンスシーズン。ただ年明けすぐの週末で、天気もすぐれず非常に寒い気温が続く時期もあり、街自体は静かな印象。

前日出発前に、シノンの町並みや訪問できそうな生産者などを調べたが、単独行動でないことや滞在時間の都合上、生産者への訪問はあらかじめ連絡は取らずに、ほぼ行き当たりばったりで道中見つけた生産者やワインブティック等を訪れるといった流れをとった。

そんな中、シノンの到着時間と都合よくワインをブティック内で直接試飲できる場所を見つけることができた。

ドメーヌの名前は、ドメーヌ・クーリー・デュテイユ。

ブティック内の様子。
クリスマスツリーは今週いっぱいでお役御免ですね。

ちょうどシノン城の向かいの斜面に位置するシノンワインの発祥と言われ、ドメーヌのブティック真横にある単独所有畑「クロ・ド・エコー」を所有する家族経営のシノンを代表する造りての一つである。

シノン城からも眺めることができるモノポールのクロ・ド・エコー。シノン城から大声を出すと、石垣(クロ)に囲まれたこの畑にこだまする(エコー)ことから、この畑の名前がついたらしいです。

シノンのワインを今まで個人的に深堀りしたことのない自分にとって、家族経営で伝統を重んじているとされる造り手から今回の旅の目的の一つをスタートさせることができた。

またドメーヌを直接的に訪問できなくても、家族連れで、尚且つ短時間でドメーヌやワインの特徴に触れることができるブティックでの試飲は、今回の僕らの旅には都合が良かった。

試飲を始める前に、ブティックを担当しているマダムからドメーヌの説明も含めて、畑の特徴や使用品種の赤・白それぞれの味わいなど初歩的な説明からしていただいた。

クーリー・デュテイユでは、90ヘクタールの畑を所有し、栽培は農薬の使用を極力避けたリュット・レゾネ。ブティックの真横にあるモノポールのクロ・ド・エコーは、およそ2ヘクタールとのこと。

まず試飲させていただいたのは、シノン・ブラン レ・シャントー。

石灰質の特に強い区画に植わるシュナン・ブラン100%の白ワイン。エキゾチックなフルーツの香りと柑橘系の心地よい酸味。そして口に含むとアーモンドや白い花の印象もある。

余韻でミネラル感もあり、白身魚のバターソースやローストチキンをクリームソースと合わせたものと味わってみたくなる味わい。レ等の牡蠣との相性も面白いかもしれない。

続いて試飲させていただいたのは、カベルネ・フランから造られるキュヴェ・バロニー・マドレーヌ。長期熟成に耐える粘土質石灰岩土壌から栽培されたカベルネ・フラン。

右のボトルがキュヴェ・バロ二ー・マドレーヌ。
先代の母・マドレーヌ・デュテイユを偲んだ名前が付けられているとのこと。

エレガントにワインが仕上がる珪質土壌の複数の畑から栽培した葡萄をアッサンブラージュして造られたとのこと。

カベルネ・フランらしい赤系果実のフルーティーさと鉄っぽいニュアンスの香り。

ピュアな果実味の味わいに伸びのある酸味。酸味は日本人に親しまれる梅っぽさもあり、長期熟成の可能性を感じられるとともに、気軽に食事と合わせても楽しめそうな1本。

続いて試飲させていただけたのは、このドメーヌのフラグシップとなるクロ・ド・エコーのカベルネ・フラン。畑は南向きの傾斜で粘土石灰質土壌。約2ヘクタール畑には平均樹齢60年とのこと。樹齢90年以上に及ぶ樹もあるとのこと。

写真右のボトルがキュベ・クロ・ド・エコー。

香りはカシスのコンフィチュールのような黒系果実の香りやカカオや土、そしてフレッシュなシャンピニオン・ド・パリをカットした際に生じる淡い香り。

ブティック真横にあるクロ・ド・レコーの畑

味わいはミディアム・ボディ。柔らかいタンニンに旨味の中に留まるような酸の余韻も長い。赤身肉や仔羊肉と合わせて味わってみたい、複雑で僕好みのカベルネ・フランといった印象。

最後に試飲したのは、シノンの中心地から東側に位置し、畑も南に面したクラヴァン・レ・コトー(Cravant-les-Copteaux)にある、キュヴェ・クロ・ド・ロリーブ。シノンの中でも優れた粘土石灰岩の土壌を有し、ブドウの栽培に最適な土壌として知られているとのこと。

写真の右端のボトルがキュヴェ・クロ・ド・ロリーブ

クロ・ド・レコー同様の黒系果実の香りに加え、甘い香りのスパイス、シナモンやクローブなど複雑な(甘草ぽっさ?)香りに印象。わずかに皮のニュアンスもあり。

こちらもミディアム・ボディで良質なタンニン。さらなる熟成の可能性も感じられる生き生きとした酸味も心地よい。

30分ほどのドメーヌの説明と試飲時間を設けていただき、非常に印象に残ったクーリー・デュテイユのブティック訪問。

最終的に個人で購入したのは、2本目に試飲したキュヴェ・バロ二ー・マドレーヌ。3本目に試飲したクロ・ド・エコーに最後に試飲させていただいた、クロ・ド・ロリーブの三本になる。

ボトルのデザインはブルゴーニュボトルを意識して、
ヴィンテージをボトルの上部に記しているキュベもあるとのこと。

加えて僕らがワインを試飲中に、息子がマダムからドメーヌで造られたぶどうジュースを頂きご満悦の様子だったので、ノンアルコールワイン(ぶどうジュース)も1本お土産に購入した。

また今回は購入をしなかった、もう一つのクロ・ド・エコーは、優れたヴィンテージのみ、畑の中心部から収穫したカベルネ・フランを使用して造られるトップキュベとのことで、価格も倍。

今回のように直接生産者や生産地を訪れ、造り手やそのドメーヌで働いてる人の表情や情熱を感じとることで、訪問先のワインの印象は強くなる。

また、実際ドメーヌを訪問できなくても、生産地域の自然環境や街の雰囲気を味わうだけでも、自宅や生産地域から離れた場所でワインを味わったときに、頭の中で訪問先の情景を想い浮かべる事ができるのは、ワインの味わいを左右する経験にもなる。

僕自身ワインは楽しく味わうことをモットーにしているが、それでもワインとなるブドウの産地を目の当たりにしてから、感情的にワインと共に時間に浸るのが好きな性格。

だから今回の旅の目的のように、自分の足で様々な生産地域を訪れ、生産者の言葉や物語に触れる時間は貴重な時間なのだと再確認させられた。

それでは今回の記事はここまで。次回はクーリー・デュテイユの真向かいにある、ドメーヌ・シャルリー・ジョジェのワインショップから続く、旅の続きの報告とさせていただきます。

Chef ichi


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chef ichi
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