見出し画像

フラの牡蠣とブータン・ノワール

12月30日月曜日。

食道楽なS氏が我が家に滞在して3日目を迎える年明け2日前。

本日は自宅を挟んでラ・ロシェルとは反対方向に位置し、牡蠣の養殖の産地でもあるフラ(Fras)を訪問することに。

フラは昨日S氏に紹介したラ・ロシェルと比べると、目立って大きな町でもなければ、オシャレなカフェやパティスリーといった部類のお店があるわけではない。

ただ個人的に町の中心部の雰囲気と、ビーチからの眺めが好きと理由のみでS氏を連れてきた。今日は妻は仕事で、S氏とともに一緒に同行しているのは4歳時の息子。

息子は1月5日までヴァカンスシーズンなので、S氏の滞在中しばらくは僕が息子との時間を過ごすことになっている。

フラの中心地までは自宅から近くを通っているバイパスを車で走る。バイパスを出てから湿地帯を抜けて、15分。そこから更に西へ進んで行くとフラにある牡蠣の養殖池を見ることができる。

養殖池周辺に到着したのは午前10時半ごろ。大西洋を眺めると、正面には島民が130人前後で夏のハイシーズンには観光客で賑わうエクス島。

右手に見えるのがエクス島
中央に見えるのはエネット要塞
左手奥に見えるのは、ボワイヤール要塞

エクス島へはフラから毎日行き来している船、もししくはラ・ロシェルの旧港から観光シーズンに出ている大型の観光船に乗って行くことができる。僕ら家族も昨年の夏にラ・ロシェルから1時間以上かけて、エクス島を散策したことがある。

夏のエクス島

そして左手には小さな島のマダム島と、更に奥からエクス島を包むように見える牡蠣の養殖地で有名なオレロン島。

そして右手斜め奥には、こちらも夏のヴァカンスシーズンに非常に賑わうレ島を眺めることができる。

そんな場所に僕ら3人が到着した午前10時台はちょうど引き潮の時刻。

満潮時は浅瀬の海の中に隠れてしまう牡蠣の養殖の様子を眺めることができるため、生産者用に少し舗装された道のような場所を歩き、牡蠣の養殖地を眼の前で見ることができた。

牡蠣の養殖の様子

浅瀬の海で足元は不安定。一人で歩くにもしっかり足元を見ないと足を取られてしまいそうになる。

ところどころ僕は息子を持ち上げるように抱えてゆっくりと進み、普段の生活では見ることも珍しい牡蠣の養殖地の様子を写真に収めたりした。

そんな足元が不安定で、ところどころ海水が残っている道を歩きいていれば、気をつけていてもズボンの裾や靴は汚れてくる。

干潮時はエネット要塞まで歩いていける

足先が冷たい海水で徐々に不快に感じてきたところで、僕らは歩きにくく冷たい道を引き返す。

続いて訪れた場所はフラの町の中心地に当たる屋内マルシェ。昨日のラ・ロシェルのマルシェを案内したとき同様に、途中でフラでお気に入りのパン屋でヴィエノワズリーを購入して、食べながらマルシェ通りを歩いて屋内マルシェまで移動した。

フラのマルシェもラ・ロシェルのマルシェのように屋内に商店があるスタイル。しかも2つの建物に別れている。

フラの屋内マルシェ

マルシェ通りに面している建物は、主に鮮魚やフラ産の牡蠣を購入できる。もう一つの屋内マルシェは、1つ目の鮮魚専用の建物の右斜め奥に位置しており、ここでは精肉、乳製品に野菜や地方の特産品を購入できるスペースとなっている。

マルシェ通りは案の定シーズンオフの時期と、朝から吹く冷たい風の影響からか、正午前の時間帯でも人がまばら。

僕らは冷たい外の空気を避けるようにして、食べかけのヴィエノワズリーを持ちながら、はじめに右手にある屋内マルシェのなかに入ることにした。

屋内マルシェの中は、店舗によって行列ができているお店もあれば、退屈そうにお客を待つ店主が腰をかけている様子が遠目からでもはっきりうとうかがえる。

ここでは一つ一つの店舗のショーケースや商品を見て、マルシェの雰囲気を感じる程度に。屋内を時計回りで一周した後、再び入ってきた正面の出入り口を出る。

続いて2つ目の鮮魚が売られている方の屋内マルシェに足を運ぶ。

鮮魚店の並ぶ屋内マルシェの中でも、入口付近にお店を構え、大人の手のひらサイズの大きさのフラ産の牡蠣を発見。店主によると生育期間も4年になる特別大きくふっくらして旨味も強いとのこと。

S氏は牡蠣好きで、特にフランスの生牡蠣をたくさん食べたいという要望があったので、通常サイズの牡蠣と比べても価格も倍以上する大きい牡蠣を購入して、自宅に戻った。

自宅に戻った時刻はすでに13時をまわり、昼食の時間が終わろうとしている時刻

僕は買ってきた牡蠣開き、昨日購入していたバケットに妻があらかじめ準備してくれていた、香草を聞かせたサーモンのリエットと、こちらも昨日ラ・ロシェルのマルシェで購入していた野菜がたっぷり詰まったパテ・シャランテを一口大にカットしてお皿に盛り付ける。

リムー産のシャルドネの白ワインとともに、軽い昼食をS氏と楽しんだ。

リムーのオセアニック地区のシャルドネ。
ミネラル感と柑橘の味わいのバランスが絶妙でちょっぴり塩味も。

当日の夕食は、昼食に続き昨日に購入済みのブータン・ノワールとじゃがいものオーブン焼きとりんごのピューレを添えて、昼食時の残りものとともに楽しんだ。

初めて行きつけのお惣菜屋で購入したブータン・ノワールは、りんごの甘味がすでに溶け込んだような味わいで口当たりも滑らか。豚の血の味わいをダイレクト楽しみたい僕にとって、ちょっぴり自分好みの味わいではなかったが、見た目とは異なり誰でも抵抗なく味わえるブータン・ノワールは、これはこれでありなのかもしれない。

こんな滑らかで鉄分の香りと味わいの優しいブータン・ノワールなら、きっと昼間に味わったフレッシュ、もしくは軽くポッシェした牡蠣と合わせても面白い。

ちなみにフランス北西部では、牛肉のタルタルとフレッシュ牡蠣を合わせた僕の大好きな料理がある。牛肉の鉄分と牡蠣のミネラル感を包むような旨味のバランスが絶妙なマリアージュを生み出す僕の大好きな組み合わせ。

彼の滞在中にチャレンジはできなそうだが、今度また同じお惣菜屋でブータン・ノワールを購入することがあるときは試してみたい。

さて、S氏が我が家に滞在してまだまだ日は浅いが、明日以降も食道楽な日々を楽しめると思うと、ワクワクが止まらない。もちろん美味しいワインも忘れずに。

Chef ichi


いいなと思ったら応援しよう!

chef ichi
最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。 感謝です!! Youtube撮影用の食材代として使わせていただきます。サポートしていただけると非常に助かります!