ファンベースな会社づくりとコロナとの戦い|C.S. STORY 2019-20
noteやTwitterで自分の考えをしっかり発信
大きな区切りだった7周年を迎え、次の8年目は、新しいスタートにしたいという想いがありました。
というのも2016年12月に「& CHEESE STAND」をスタートして以来、さまざまな取り組みを展開し、お客様や卸先の方々にお支えいただきながら成長できた部分もありましたが、どこか「前に進めていない」という停滞感を感じていました。そんななか、2018年末から7周年を迎える頃にかけてスタッフも多く集まり、ようやく次のスタートを切れる状態にもなっていました。
次の8周年、9周年、10周年に向けて、「ファンベースを軸とした会社づくり」を目指そうと考えます。
というのもCHEESE STANDは、お客さまとのコミュニケーションができていないと感じていたからです。実際それまでイベントなども多く開催していましたが、お客様とのコミュニケーションが継続しているかというと、とても弱かったのではないかと思っています。
それは、僕自身が前面にでるのではなく、「CHEESE STAND」というブランドが全面に出ていく方がいいという思いがあったからですし、もう少しいうと僕自身が常連さんが集まるような閉鎖的な飲み屋さんが苦手だったこともあるかもしれません。誰でも気がねなく来店できるお店にしたかったのです。
しかし、ブランドが前面に出るという考え方は間違っていなかったにせよ、それらの手段の多くが間違っていた、と今では断言できます。
もっともっと自分が考えているチーズへの愛や店づくり、働いている仲間やチーズのことを使ってくださっている仲間のことを発信し、私たちのプロダクトを好きでいてくださる方とコミュニケーションを取っていくことが今後最も重要なことになると、このとき強く考えたのを覚えています。
そんな考え方に変わったのも、2015年ぐらいに行われた、さとなおさん(コミュニケーションディレクターの佐藤尚之さん)がさまざまなゲストを招いて行われた広告についての講義を聞いたことがきっかけです。それ以来、CHEES STANDならどうするかと模索していました。
noteやTwitterも、自身の現在思っていることをしっかり発信していこうと、力を入れ始めました(このnoteの執筆・編集をしている江六前さんに個人編集者としてついてもらったのも8年目からでした)。
チーズ仲間のつながりが見えた
「CRAFTED CHEESE CAMP」
ファンベースな会社であったり、自分の思いをしっかり伝えていきたいというなかで、力を入れたのはイベントでのファンの方との交流です。11月には、2つのイベントを自ら発案し、多くの方と一緒に作り上げました。
1つは、11月2日と3日に国連大学で開催された「CRAFTED CHEESE CAMP」です。「日本の、職人の手で作られたチーズを楽しみましょう」というテーマのもと、青山ファーマーズマーケットの運営チームと一緒に作りあげ、国内のチーズ工房の仲間たちと開催するイベントでした。
参加したのは、CHEESE STANDのほか、那須高原今牧場 チーズ工房さん、ダイワファーム(宮崎)さん、ミルク工房そら(京都・京丹後)さん、木次乳業(島根)さん、ナカシマファーム(佐賀、11/2のみ)さん、共働学舎新得農場(北海道、11/2のみ)、乳ぃーずの物語(広島、11/3のみ)さん、高秀牧場ミルク工房(千葉、11/3のみ)の9つの工房。
各日出店する全7出店者のチーズを、実際に作り手と話ながら一通り試食することができるというもので、当日同時開催していたFarmer's MarketのワインイベントOne Love, Wine Love 06と連動して、チーズとワインの提案もするものでした。
こうした大掛かりなイベント企画運営は初めてで、コケないか、何かトラブルがないかと心配ばかりでしたが、蓋を開けてみれば、休憩もできないほど、どのブースも大盛況。心から嬉しかったのは、チーズ工房の仲間が遠かったり忙しいかったりするなか、このために集まってくれたことやお客さまの多くが笑顔で来てくれたことなど、人と人とのつながりがすごくよく見えたことでした。
生産者自身でチーズの魅力を発信し、大きなうねりを作っていくことが大事であることも感じました。
信頼関係のある絆を作ることを目指した
「CRAFTSMAN × SHIP」
「CRAFTED CHEESE CAMP」から3週間後の11月23日に同じ会場で開催した「CRAFTSMAN × SHIP」は、自分自身が発起人となったイベントです。
伝統的な技と知識をもとに、自らの手から誠実で偽りのないものを作り出す「CRAFTSMAN=職人」が、どんどん姿を消していっている。そんななかで、「人類の本質」ともいえる手仕事が失われていっていることに、さびしさを感じながらも、良いモノを作っているだけでは時代に淘汰されていく、ということに強い危機感を感じていました。
一方で職人は、これまであまりやってこなかった「使い手のみなさんとのつながり」をより強く持っていくことも大切だと思うようになりました。つまり、自分たちのプロダクトや、お店や工房での体験を通じ、「信頼関係のある絆」を作ることが必要なのではないかと考えたのです。
正確・不正確な情報が氾濫する現代にあって、この「信頼」こそが、これからもっとも価値とされるものになっていくと思います。その信頼と絆がプロダクトやお店での体験の質を上げていくのではないか。そんな考えのもと「CRAFTSMAN × SHIP」は、職人と使い手のみなさんとの絆をつくるための対話ができるような場にしたいと考えたイベントでした。
イベントには、僕のほかに、「Minimal」の山下貴嗣さん、「365日」の杉窪章匡さん、「FUGLEN TOKYO」の小島賢治さんという、奥渋メンバーに集まってもらって、4人がそれぞれ作ったチーズ、チョコレート、パン、コーヒーを味わってもらいながら、そこに込めた自分たちの想いを、みなさんにお伝えしました。
1回目にして伝説になりそうな錚々たるメンバーにお声がけして、賛同してもらい登壇していただきました。イベントは来ていただいたお客さまの多くが笑顔で帰ってくれたので良かったです。手応えを感じ、「CRAFTSMAN × SHIP」のコンセプトは続けていきたいと思いました。
自分たちの想いを濃厚に確実に伝える
「CHEESE PAPER」創刊
直接お客様と接するイベントを開催した一方で、CHEESE STANDの想いを濃厚に確実に届ける手段として、SNSよりも紙媒体の方が適しているのではないかと考え、季刊誌「CHEESE PAPER」を創刊したのが、2018年12月のことでした。
当初は毎月出すようなニュース的なものにしようかと思いましたが、CHEESE STANDはチーズの種類が変わるわけではなく、またSHIBUYA店の飲食メニュー変更はTwitterやinstagramなどのSNSで補完できるので、もっと想いを伝えるものをじっくり作り込んで季刊誌のような形で提供していこうということになりました。ニュースなどは極力少なくし、僕たちの日頃考えていること、チーズへの愛を伝える記事をメインに置いています。
作り込んでいく際には、普段ファンコミュニケーションの分野でベンチマークさせていただいている「イケウチオーガニック」さんや「Minimal」さんのメディアも参考に勉強しました。
チームはデザイナーは、永田洋平さん(o-flat inc.)、コピーライターの石井ツヨシさん(孤独出版)、写真はDaisuke Miyagiさん(OWL COMPANY)、当時の広報担当だった今井未央さんで作り上げました。
イタリアの空港で感じた「コロナの実感」
年が明けて1 月 27 日から 2 月 3 日まで、一般社団法人中央酪農会議の「国産チーズ競争力強化支援対策事業 海外現地調査(イタリア)」の一員としてイタリアに渡りました。現地調査は、日本のチーズ生産者が本場イタリアのチーズ製造の現場を学ぶというもの。僕を含めて6名が、マルケ州のコリナルドという村でチーズ研修をみっちりと受けました。
これまでイタリアに行くたびにチーズ製造所の見学はしてきましたが、個人の見学だと2、3時間が限度でしたので、とても貴重な経験です。
実際に見てみると、チーズの作り方が違うんです。一気に酸度を落とす方法が乳酸菌でなく前日の乳をヨーグルトのように発酵させて、それが種になって、スターターになるんです。その方が早く酸度が落ちて、早くチーズができるから牛乳が甘いままで酸っぱくない。ただ乳酸菌ではないので、賞味期限は短いですが。とにかく、作り方自体は聞いたことありましたが、目の当たりにするのは初めてでした。
日本でチーズを作る同じ仲間たちとの時間はさらに貴重で、その日に学んだことを話しながら、夕食のテーブルを囲んだり、そのあとも夜通し語り合うような濃密な日々でした。
ちょうどイタリアに行っている前後に、日本でも新型コロナウイルス感染症のニュースが広がっていました。日本最初の感染例は、1月15日でしたが、出国前はのちのような状況になるとは思ってもいなかったですし、出国時も普段と変わりない出国手続きでした。
しかし、8日間のプログラム中、イタリアでもローマの港に停泊した船の乗客に感染者がいたことがニュースになっていたり、プログラムを終えて帰るミラノの空港でも、ごっついマスクをしている人が列に並んでいるのに遭遇して、これは一大事になるのかもしれない、と思ったのを覚えています。
帰国してすぐの2月には、松屋銀座で、CHEESE STANDと「パンとエスプレッソ」「横浜燻製工房」でコラボしたピザスタンドを期間限定でオープンしました。「パンとエスプレッソ」はCHEESE STANDをオープンさせる前からベンチマークしてきた憧れのブランドで、ご一緒できたのは、すごく光栄でした。まだコロナ禍の自粛ムードのない時に開催できたのも、今思うとよかったです。
強みを活かして次々に手を打っていく
CHEESE STANDの「コロナとの戦い方」
2月26日に日本政府が、大規模イベントの中止、延期又は規模縮小等の対応を要請したのが大きなきっかけに、私たちの生活が大きく変わっていきます。
3月11日には、WHO(世界保健機関)が、「新型コロナウイルスはパンデミック」と表明すると、4月7日には、日本政府が特別措置法に基づく緊急事態宣言を発出。当初は4月16日から5月6日までの期間でしたが、結果的には5月31日まで続くことになりました。
新型コロナウイルスの感染拡大については、「これはけっこうやばい、自分たちで動かないと大変なことになるぞ」と思っていましたが、経営者の動揺は、社内を不安にさせるだけなので、CHEESE STANDのスタッフには、小売りもあるし、ECもある。何とかなるから頑張ろうと話していました。
会社のスタッフに対してこのようなメッセージも伝えました。
それから、自粛要請を受けてカフェがメインのSHIBUYA店は4月上旬から休業。しかし、工房の稼働は止めず、チーズ製造は続けながら、物販がメインの& CHEESE STANDは短縮営業。卸業務、オンラインショップを続けていました。
とはいえ多くの飲食店が休業する中で卸の売上高も6~7割ほどと激減し、売上の大半をSHIBUYA店の飲食、卸業務に頼っていたため会社としても大幅な売上減になりました。
それでも、「何がなんでも勝ち抜く」「やれることはすべてやる」という気持ちで動きました。僕はこの1~2カ月、チーズ製造はほとんどスタッフに任せ、指揮系統のトップとして戦略を練り、スピードを上げて決めたことをどんどん実行していきました。
前述の売上金額が大幅に減る以上、自粛が明けても当面飲食店の売上は見込めないと早くから考えていました。
そこで中期的に、自分たちの持っているリソースで売上を補填することをまずは考えます。「僕たちの強みは何なのか?」いくつもメモに書き出した中から、強みを以下のように絞りこむこともできました。
こうした強みを活かして次々に手を打っていく。こうしたコロナとの戦いがこの先2年以上も続くことになります。
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