時々思い出す先輩の一言
これは20年ほど前
まだ私がケーキ屋に勤め始める前のキラッキラした専門学校生だった頃のお話です。
製菓専門学校に通い日々その腕と体重をメキメキと上げていた頃、夏休みや春休み前には各自好きな菓子店へ研修をさせていただくというものがありました。
もちろん当時の私は絶対ケーキ屋さんになると決めていたため、研修が楽しみで楽しみでなりませんでした。
しかしいざ研修に行くと立ちっぱなしな上に研修生に任せられる仕事といえばとにかく掃除といった感じで、またものすごく重労働であるということに気が付かされ、研修で就職を諦める生徒もちらほらいたのも現実でした。
2週間ほどの研修が終わり、夏休み明けに各自行った研修先の報告会が行われました。
各自何が大変だったとか何が面白かったとか、自分の研修先はこんなに酷かったのにお前のところは良かったなとかなんとか言い合ってたのですが、クラスでどちらかといえば元気のいいグループでチャラっとしていた男子が研修先の店長から言われたという一言が今でも忘れられません。
その研修先というのが個人経営の小さな洋菓子店だったのですが、なんだかみんなが生き生きと楽しそうだというのです。
それもこれもみんな社交性が高くてノリノリな人たちが集まっているというわけではなく、上に立つ立場の店長が常に場を盛り上げ楽しそうに仕事をしているということでした。
研修最終日、自分はバイトもしてきたし別の研修先にいかせてもらったこともあるが、こんなに楽しい厨房は初めてでしたと伝えると嬉しそうに店長が言ったそうです。
1日24時間しかなくてそのうち8時間くらい寝てるとして
活動できる時間って16時間しか無いでしょ?
しかもそのうち8時間は、休憩や通勤の時間を入れたら10時間くらいは仕事をしなきゃいけないよね。
だからその仕事が楽しい時間じゃなくて辛いだけの時間だったらしんどいだろ?
だから自分は楽しく仕事をしてるんだよ。
衝撃でした。そんな楽園のような職場があるのかと。
それから20年近く経った今でもたまに思い出します。
自分のモチベーションや体調によって日々の仕事の感じ方は違います。
正直そもそも仕事という物自体楽しいものではないと思っています。
楽しいものではないにも関わらず楽しんじゃおうという意識があって、
上の立場から部下に対してもその楽しいという姿勢が伝わっていたのだろうなと。
私もそんな上司の下で一度でいいから働いてみたかったなぁと
そして上に立つ立場になった際にはそのような雰囲気を出せるような人間になれたら良いなと。
直属の上司であったというわけではありませんが、
人生の先輩からいただいた心に残る言葉でした。