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~息子の話~彼の戦国時代
息子の中学生時代を思い出すと、毎朝学校に出掛ける時の「戦争にでも行くのですか?」と聞きたくなるような顔が思い浮かぶ。
覚悟を決めて自転車にまたがり、ペダルを踏み込み出掛けて行く後ろ姿。
あの時彼にとって学校は、それこそ戦場みたいな場所だったんだろう。
部活動の顧問の先生に、身も心も振り回された
3年間だった。
とても厳しいと評判の先生で、入部を決める時も先生がネックでさんざん悩んでいた。
でも他に選択肢もあまりなかったし、小学生の時にやっていたスポーツの流れから仕方なく決めたようだった。
…が、それが良くなかった。
ネガティブな方向にしか進めないループに陥っていった。
確かに厳しい先生だったし、理不尽な事もたくさん言われていた。
試合の応援などに行った時、よく母達で
「あれだけ鍛えられれば、あの子たち将来どんなブラック企業でもやっていけるね…」
と話した覚えがあるw
息子は、技術的に上手く出来なかった時
「なんでやれんかわかるか?」
と聞かれ、答えられずにいると
「おまえだからだよ」
と言われた事もあるそうだ。それをそのまま受け止めてしまえば、確かになかなかの人格否定。
でも、体は大きく身体能力も低くないはずなのに
繊細過ぎで、あまりにも萎縮しのびのびとやれない息子に対し、もどかしさと苛立ちがあったのかなとも思う。
スポーツをやっているからにはもっとガツガツして欲しかったんだろう。
そしてまた、言われた事をストレートに受け止めて傷つき、ますます萎縮してしまう。
同じ環境にいても、先生にきつく言われた悔しさをバネにぐんぐん上達している友達もいる。
文句言いながらも確実に成長している彼らの存在も、息子にはプレッシャーとなっていたかもしれない。
一度しかない中学生という青春時代を、もっと前向きに楽しめばいいのに…と親は勝手に思っていたが、当人はその時、そんな風には思えなかったのだろう。友達ともあまり絡もうとせず、この世に楽しい事なんて一つもないって顔して、毎日をこなしていた。
ただただ、この時が早く過ぎて行く事を願って😓
ある時こんな事を言っていた。その先生の事を
「なんかオレの人生のラスボスが、ちょっと早めに出てきちゃったって感じ」
だといいな…
ラスボスと戦ったあなたは、もう怖いものなんて何もない!
高校では、違うスポーツの部活を選んだ。その時の顧問の先生は、くだらないいじりをする人のようだった。
住んでいる町より少し都会の高校に進んだので、田舎者だと何かといじられていたらしい。1度も聞いた事はなかったが、部活の最後に後輩たちがくれたメッセージカードほとんどに
『先輩あのいじりは一回キレるべきでしたよ!』
みたいな事が書いてあり初めて知った。
でも、そんなくだらない事はどうでも良かったと思う。
ラスボスと戦った彼には…
きっと中学時代のラスボス先生に言われる事は、正論過ぎて苦しかったのだろう。彼にとって納得出来る内容だから、余計響いて辛かったのかもしれない。
毎日が戦いだったあの日々も、息子にとっては意味のある時間だったんだと、今は思える。
母も戦場に送り出す朝は、毎日胸が痛かったが…
本人も、そう思っているんだろう。
今でも時々あの先生の話が出るが、怖かった思い出を楽しそうに話している。そして
「でも良い指導者だったとは思う」
と言う。
そうだね…部活の仲間でそのスポーツを続けた子達はそれぞれの高校で活躍し、よく新聞にも載っていたし、その道で最高峰の企業チームに入った友達もいるしね。もちろん彼らの努力の賜物だけど。
あの時間があっての息子…
これから先、あの戦国時代があった事に感謝する瞬間もたくさん訪れるのだろう。
お読み下さりありがとうございます☺️
今回もフォトギャラリーの可愛くも心に響くイラストを表紙に使わせて頂きました。感謝です✨
おやすみなさい