「呪術廻戦」考 ①折れない心と世界的ヒット
いよいよ呪術廻戦が完結したね。いろいろと心に残るシーンはたくさんあるけれども、「心が折れないようになる」と言うテーマで考えると、渋谷決戦は見逃せないね。
ここで虎杖の心を折るために、野薔が殺されるわけだけれども、ここで虎杖の心の中に重要な変化が生まれたように思うんだよ。
それは今まで大切な友達を守ろうと言う、少年ジャンプ的な発想で戦っていたんだけれども、敵が手に生えない位強大なものになっていく中で、呪術師としての伝統を受け継ぎ、自分の後の人たちにつなげていく1つの結節点として、あるいは1つの歯車として自分を見るようになっていくんだね。
これはベクトルで言うと、横のベクトルから縦のベクトルへと、心の働きが180度転換していると思えるんだ。
そして、ここで、戦う人間としての先祖から受け継いだ力や技と言うものに力点が変わっていくんだね。
これは鬼滅の刃の炭次郎にも言えることだと思うよ。
鬼と戦う理由は、妹を守ると言う姉妹のつながりだったんだけれども、それが最強の鬼と戦う中で、先祖から受け継いだ技を磨く方向へと変化していくんだね。
ここでも横のベクトルが縦のベクトルへと転換しているように思うんだよ。
これはジャンプが戦後民主主義を乗り越え始めたと言われることだと思うんだよ。
つまり大東亜戦争の敗戦によって、タブー視されてきた、日本民族の戦う力と言うものに視点が移ってきていると思えるんだよ。
これは世界的な敵と戦うとか、巨大な悪や闇と戦うためには、個人の力を超えたより強い力を引き出してこないといけないし、それはご先祖とか、職業的に受け継がれてきた長い長い伝統とか、そういったものが必要になるよ。
そしてこれが呪術廻戦と鬼滅の刃の世界的なヒットにつながっていると思えるんだよ。
つまり、世界の人々は、様々な苦しみや、偏見や差別と戦っているわけだし、その戦う力と言うのは、自分を超えたより大きな力を引き出してくると言う意味で、自分の民族性や、ご先祖から受け継いだ伝統とかそういうものに郷愁を感じるんだよ。
昔、アメリカの黒人の男性が、自分のご先祖を探していて、結局はアフリカにまでたどり着いたと言うルーツと言う小説がテレビドラマ化もされて大ヒットしたけれども、それも同じだと思うよ。
結局世界的にヒットするジャンプ漫画と言うのは、戦後民主主義を越えていかなくてはそうならないだろうし、マーケットが世界的になっていく上では、避けられない流れだろうね。
やっぱり「心が折れない」自分になると言うのは、全世界的な普遍的テーマでもあるけれども、自分を超えた大いなる力と言うものに目が向いていくことになるしかないよね。