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90式戦車

90式戦車は主に北海道に配備されている。
私が新兵だった頃は未だ制式化されておらず単に「新戦車」と呼ばれ、北海道での試験を行っていた。

その頃の戦車連隊は74式戦車が装備され、内地の戦車大隊では61式戦車が主力の頃であった。

90式戦車は3人乗りで、自動装填装置の導入により装填手が居らず3人乗りとなった。

新戦車が3人乗りと聴いて我々若い戦車乗員は「演習行ったら警戒員とか斥候とか掩体掘りとか人員3名じゃやれないだろう」と古参陸士長が言った。

「戦車乗員外に警戒要員とかそういうのを別に配置するんじゃないですか?そうしないと中隊の定員だって減って警衛や臨時勤務の糧食班だって人が足りなくなりますよ」と若い陸士長が答えた。

ふむふむと新兵の私は大人しく陸士達の話を聴いていた。
戦車に乗る者としての当然の予想であり、懸念であった。

現実は警戒要員なんていないし装填手1名欠になっただけの話。

警戒の歩哨も無線傍受も偵察斥候も、戦車掩体の構築も装填手の大事な任務コーヒー淹れも3名でやることになった。
負担倍増になっただけ、中隊の人数も陸士が大幅に減ってしまった。

兵隊レベルでも予想できることを陸上自衛隊の上層部は判っていない。
演習ならなんとかなっても実戦になったら戦車乗員は疲れ果てて戦闘どころじゃないだろうということを・・・。

机上の空論で設計思想に戦車乗員の意見は反映される前に意見すら無いのだから・・・。

61式戦車の時は戦車に乗る者の意見を聴いて設計されたと聞くが時代が変わり技術者の意見だけで乗る者の意見は取り入れられずに開発されたのが90式戦車以降の設計思想である。

新車の90式戦車なら射撃も当たるし故障も少ないが・・・・古くなると自動装填装置の故障が多くなるのがね・・・。

10式戦車開発にもそういう設計思想に変更が無かったのが悔やまれる。

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