未来の芸術家をつくる
フィンセント・ファン・ゴッホと聞くと、どんな絵を思い浮かべますか?
自画像の人もいれば、ひまわりを想像する人もいるでしょう。
私の場合は、とても印象深い作品である『タンギー爺さん(Le Pere Tanguy)』がぱっと出てきます。
穏やかそうなこのじいさんは、実在していたジュリアン・フランソワ・タンギーという人物で
画材屋兼画商で、印象派を支えた重要な人物です。タンギー爺さんと親しまれていたそうです。
印象派は、1860年代半ばにフランスで始まった芸術運動で、描くものの輪郭や色ではなく、描く対象の周りの光や空気感をとらえようとした手法です。印象主義とも呼ばれています。
新しいチャレンジには、支援・理解してくれる存在がいるということを、私自身、強く印象づけられた人物です。
タンギー爺さんは、パリ・コミューンの一員として参加し、逮捕・勾留された経験もあるような前衛的な人物です。
パリ・コミューンとは…
1870年7月に突発したプロイセン・フランス戦争がフランスの敗北に終わった直後の71年3月18日から5月28日まで、パリに樹立された労働者階級を主体とする民衆の革命政権。
そんな経験から、若く貧しい芸術家にとても理解を示していました。彼らが新しい作品を作れるように様々なサポートを行っていました。
例えば、画家がお金がなくて、画材が買えないときは、創った絵を売って、それを画材代を払ってよいとしていたのだとか!
そんな懐の広いタンギー爺さんを頼って
彼の店には、ゴッホやセザンヌなど印象派やポスト印象派が出入りしていました。
画材店の経営者という視点に立つと、貧しいお客ばかりで、回収できるものは売れるかどうかわからない絵画は、お宝になるかガラクタになるか紙一重です。
もし、自分ががタンギー爺さんの立場だとしたら、こんなチャレンジングなことは、なかなかできないと思うんですよね。
前衛芸術に投資するって、歴史と時代の流れを読む力だけでなく、芸術家と彼らの作品に対する
情熱や愛情、思いが欠かせないと思います。
現代でも、そういう思いや実際にお金を投資して、芸術家を支えている人はたくさんいます。
例えば、前ZOZO社長の前澤友作さんもミシェル・バスキアの絵画を買ったりしてアートへの投資が熱心な人の1人です。
ただ、貨幣価値があるとかではなく「美しいものを見てもらい、人々と共有したい」という思いから、123億円での落札というチャレンジな投資をしているのだと、彼は語っています。
美術史の教科書を辿ると必ず背景には、
様々な角度から支援している存在がいるということを忘れてはいけないですね。