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<台子荘飾り>~今更聞けない其の二~

年が明けて、初釜が催されるこの季節
お稽古は台子(Daisu)を用いたお稽古が行われることがよくあります。

<台子荘飾りについて>


 1.台子とは…?

台子と一言で言っても、台子には真台子、竹台子、及台子(Kyuudaisu)、高麗台(Kouraidaisu)、爪紅台子(Tsumaguredaisu)とあり、五つ台子という種類があります。今日は真台子をイメージしながら話を進めたいと思います。

台子は、元来、中国禅院で使用されていたもので、臨済宗の僧南浦紹明 (Nanbojyomyo)が入宋し、径山寺(Kinzanji)の虚堂智愚(Kidouchigu)から法を嗣いで、文永四年(1267)の帰朝に際し、台子及び皆具一式を博多の崇福寺に将来したという。その後、紫野大徳寺に伝わり、更に天龍寺の開山夢窓疎石に渡って、足利将軍家の書院茶に台子荘として用いられたと伝えられており、台子は義政時代に発達したとされる。

淡交社 実用茶道用語辞典より
台子は真、行、草に分けられ、
用いる茶道具が変わります。
これは、真の台子…真塗(Shin-nuri)の角4本柱。
通常唐銅、または陶磁器の皆具を用います。
行の台子…桐木地の竹4本柱。草の台子…2本柱又は、
木地の4本柱。
行・草の台子…水指、杓立、建水、
蓋置は皆具ではなくそれぞれ違ったものを
取り合わせます。
写真は、初炭前の様子。香合入れ(ぶりぶり)と
羽箒も乗っていますね。

まず初心者の頃やらかしてしまい怒られたのは、
天板(Tenban)と呼ばれる上の板の部分を持ち上げてしまい先輩に「お道具は下から持つのよ!」と叱られてしまいました。
棚は取り外し可能なものも多く、上の部分を持ち上げると外れてしまうこともあります。更好棚などはほとんどが外すタイプですね。
台子は大変重くとても天板だけでは持ち上がりません。少なくとも2名で静かに動かすとをオススメします。

据え方としては、貴人畳の畳縁から畳目十六目向こうに置きます。
真台子は勝手付は畳目一つあけて据えますが、
台子の大小によっては畳中央に据えることもあります。台子には様々な決まり事があり、改めて一つ一つ読み込んでいきたいものですね。

一、台子は貴人畳の前べりから十六目向こうに
  据える。木目がある場合は地板の根杢(木目
  の根の方)を勝手付にし、天板の根杢を客付
  にする。
一、小間では台子はもちろん、棚物はいっさい
  使用しない。
一、台子のように総飾りにするものは逆勝手の
  席では使用しない。
一、台子には、風炉釜、水指、杓立、蓋置、
  建水を飾るを原則とする(炉の場合は風炉釜
  を除く)。これを総飾りと称し、場合によっ
  てこれら皆具のうちどれかが省略されること
  もある。
一、高麗台子は炉に用いるものである。
一、台子の初炭では、天板の左前隅に羽箒た
  香合を飾る。
一、台子の濃茶点前は、ふつうは天板の中央に
  薄茶器を飾り、水指の前に茶入を飾ってから
  客を迎え付ける。炉の場合、茶入は台子の
  中心に飾る。
一、台子の薄茶点前は天板に薄茶器のみ飾る。

「お茶のおけいこ37 裏千家台子・長板の点前」阿部宗正 (著)世界文化社より

2.台子のお点前について

初期の台子は、神仏への供茶(Kucha)の為の他に書院茶の際道具をお見せする為の展示台としての役割をになっていました。
(書院茶…広間の書院に天目茶碗や唐物茶入など、中国渡来の豪華な茶道具を台子に飾った茶の湯の式)台子のお点前での濃茶と薄茶を比べてみると神仏の供茶から、人を対象にした詫茶への変化の一端を見ることができます。

3.皆具(Kaigu)について

皆具とは、もともと装束、武具、馬具、などの一式が揃ったもののことを指しますが、茶の湯では台子・長板に荘る風炉釜、水指、杓立、建水、蓋置、などをいう。(風炉釜を除く場合もある)。唐銅材を真とし、陶器、磁気、木地、塗物を一色でそろえたものもあります。

こちらは京焼 鈴木康月造 桶川皆具

4.差し通し柄杓(Hishaku)について

長板総荘りや台子点前では、差し通し柄杓を使います。杓立(Shakutate)に立て置きます。合の中に柄が差し通されていて、切止めは真っすぐに切られています。また、風炉でも炉でも同じ柄杓を使用します。
長板総飾りや台子のお点前では、柄杓は蓋置に引くことはありません。
お湯を汲む時に杓立から出します。
(居前から正面の移動が多くあります)
総飾りで杓立が必要なのは、本来柄杓は杓立に立てる為と言われています。確かに、蓋置はその名の通り釜の蓋を置くためのものですが、わび茶の登場で蓋置に柄杓を置くようになりました。

差し通し柄杓
(淡交社 茶道具と茶席のきものonline shop から画像をお借りしました)

<柄杓を杓立から取り出す方法>
  ①両手を草に付きます
  ②右手で柄杓の節下(指一本開けて)を持
   ち、まっすぐ上に上げて13時の方向から
   取り出し、杓立の右に下ろします。
  ③そのまま下板ギリギリまで下げ真っ直ぐ
   自分の方へと引きます。
  ④左手で右手のすぐ上(開けておいたとこ
   ろ)を持ち、右手を柄杓の柄に沿って
   下げ、軽く構えます(鏡柄杓)
*柄杓をしまう際は全く逆の動きをして同じ道を戻ります。

5.火箸の扱いについて

長板や台子のお点前で用いる火箸は「飾り火箸」と言われ特殊な扱いがあります。扱い方が決まっています。柄杓立てに柄杓(差し通し)と一緒に立ててあり、これは頭の部分に飾りがある純金属製のお箸です。飾りは多くが、菊頭/桐頭/鳥頭/椎の実頭などで飾られており、鳥頭などの場合は正面を手前に向けて飾るなどの注意が必要です。

飾り火箸菊頭
(淡交社 茶道具と茶席のきものonline shop から画像をお借りしました)

<火箸の扱い方>
  ①草に両手を付き、杓立ての上の方を2本揃
   えて持ち上げます。
  ②13時の方角、又は右側から取り出し
  (先生により表現は様々ですね)
  ③S字カーブを描くように、建水の跡地を
   避けてそのまま下板ギリギリまで下げ
   自分の方へと引きます。
  ④体の正面に持ってきたら左手を添え、
   右手を箸を持つように持ちかえ、右に
   ずらし、そのまま右手で箸が縦になるよう
   に倒します。
  ⑤右手で左手のすぐ上を持ち、左手で上から
   被せ持ちます。
  ⑥右手を草に付き、左手で長板と風炉先の
   間に火箸を這わせて進めます。
   親指が長板に触るくらいの場所まで進めま
   す。(先生によっては、右手で取り、左手下
   げて、右手で持って左手被せると教える
   方もいらっしゃいます。)
  ⑦一度手を離し、再び火箸の先を持ち更に
   押し進めます。火箸が残り3cmくらいのと
   ころまで押すと親指が長板に触ります。
  *火箸をしまう際は全く逆の動きをして同じ
   道を戻ります。

6.台子点前について

台子における濃茶と薄茶ではいくつか違いがあります。
<濃茶の場合>
 ・茶巾のタイミングは、居前(Imae)にて茶碗を
  手前に引き、茶巾を水指の蓋の上に移動させ
  る。
 ・茶筅通しの為にお湯を一杓入れたら、正面に
  周り杓立てに柄杓を戻す。
 ・居前に戻ったら、中蓋を閉める。
 ・お茶を入れたら、釜の蓋を開け、左手に帛紗
  を乗せ持ちながら正面に周り、正面左膝横に
  台子と平行に仮置きする。
 ・水指の蓋の開閉の仕方は、居前にいるので
  (斜め向きに坐っている)三手で開け閉め。
  右、左、右。
 ・中仕舞いでは、柄杓を取り、正面に周り杓立
  てに入れ、居前に戻り、釜の蓋をし(向こう
  を少し開ける)蓋置を持ち正面に周り、
  建水の跡地に置く。それから客付に向き問答
  する。
 ・水次の後、清めた建水を持って席に入り、
  台子にある蓋置を扱って建水
  に入れて、台子に荘り、水屋口に戻って戸を
  閉める。水次の際は(台子正面向きに坐って
  いる)二手で開け閉め。右→左、左→右。
 ・客の諸道具拝見後、茶道口を開け、何も持た
  ずに席に入り、すぐ客付を向いて坐り諸道具
  の問答。

<薄茶の場合>
 ・茶巾のタイミングは、正面に柄杓を取りに行
  き、戻って構えて釜の蓋を開けたら、茶巾を
  釜の蓋に移動させる。
 ・茶筅通しの為にお湯を一杓入れたら、そのま
  ま柄杓を釜に預ける。
 ・水指の蓋の開閉の仕方は、居前にいるので
  (斜め向きに坐っている)三手で開け閉め。
  右、左、右。
 ・水次の後、茶道口に戻り、戸を閉める。
  水次の際は(台子正面向きに坐っている)
  は二手で開け閉め。右→左、左→右。
 ・客の諸道具拝見後、きれいに清めた建水を
  置いて茶道口を開け、台子正面に真っすぐ
  坐る。建水の中に台子の上の蓋置を扱って
  入れ、荘り、客付きに向き変えて諸道具の
  問答。
 ・台子正面に向き変え、茶杓を水指の上に
  仮置き、薄茶器を台子の上に荘る。

7.まとめ

いかがでしたでしょうか。今日もここまで読んで下さりありがとうございました。今は炉の時期ですので炉のお話が中心でした。炉の台子濃茶は中蓋あり、中じまいあり、特に複雑です。風炉と炉での違いにもいずれ触れてみたいと思います。

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