ダンサー イン ザ ガーデン その②
あんた、今、うちに入ろうと思ったでしょ………ってどうゆう事?
隣の家の敷地に入ろうとした素振りをみせたって事?
それとも、このおばさんはエスパーで、僕の頭の中を読み取ったって事?
もしくは、『僕の顔』が今にも敷地に侵入しそうな顔をしていたって事?
何て答えて良いか分からず、取り合えず「ごめんなさい、気を付けます」とか細く答えた。
―ずっと顔を見ている―
気がするだけ……、いや見ている。
隣のおばさんが僕の顔を、ずっと透視しようと睨んでいる。
僕も見透かされないように、
『僕は、真面目なガス屋さん、今日も他人様の敷地に入ろうなんて、これっぽっちも思っていません』
という思考でガス交換をするように意識した。
すげぇ疲れます。
―それから…―
隣のおばさんは僕の顔をずっと睨んでくる。
僕はなるべくポーカーフェイスでガス交換をするという日々が続く。
―それから、さらに…―
ポーカーフェイスに慣れてきた頃、あえて、
『野球のスパイクを履いて犬のウンチを踏んで隣の家にわざと入る』
というイメージをギンギンにしながら、シレッとガス交換をしてみた。
「ちょっと今、犬のうんちを踏むとか考えてるでしょ!」
と指摘されなかった。
ふふん、やっぱおばさんは、エスパーでもなんでもないな。
―それから…―
『ツイストを踊りながら』とか『白鳥の湖』などの、床にダメージが多そうなダンスをイメージしながら、配送をすることにした。
出来もしないのに、マイケルジャクソンの『ムーンウォーク』もやった。
もちろん、顔は真面目なガス屋さん。
―ある日の事―
『スムースクリミナル』で足だけお客さんの敷地、それ以外はおばさんちの上空というイメージのダンスをやっている時だった。
ほぉら、地面についてないぃぃ、でも領空侵犯はしてるけどねぇ。
ほぉ~ら、凄いでしょぉ~
ほぉ~ら、アメージングだぁ~
そのあまりのしょうもなさに、つい、
「あははははは」
と声に出して笑い出してしまった。
あれだけcoolにガス交換をしていたのに、突然に弾けるような高笑い。
「あんた、今、いかがわしい事、考えてたでしょ!!」
当然、そう怒鳴りつけられるのを覚悟したのだが、隣のおばさんは慌てて部屋に入って扉を閉めて、逃げてしまった。
―それから…―
隣のおばさんは、僕のガス交換の時に出てこなくなった。
下記は娘(6)が書いたマイケルジャクソン
あと、奥さんが僕の文章を読んで、意味を履き違えて描いたイラスト、。
『スムースクリミナルなガス屋さん』
あぁ……これもこれでいいなぁ…。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?