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いりこと山椒

ふと思い出したのでだらだらと書いてみる。 もう半世紀以上前のこと。

家の出汁の基本はいりこ(煮干し)だったのだけれど、祖母や母はそのいりこの頭と腹わたと尻尾を手で一匹ずつ取り除いてから出汁を取っていた。 味噌汁にはそのままいりこが入っているのだけれど、僕は魚が苦手だったのでそれをお椀から出してから飲んでいた。

床漬け(とこづけ:糠味噌漬け。田舎は発祥の地とされる北九州市(小倉)の郊外)に入れる生の山椒の実も、束になった枝を買ってきて、一つ一つ手でちぎって更にすり鉢で摺ってから入れていた。
大きな甕に結構な量を入れるので、祖母の家(母の実家)で作業する時は祖母、叔母、母の三人でやる事も屡々だった。
僕は脇で見ているだけなのだが、生の山椒の実を摺ると香りが強烈過ぎて、乗り物酔いみたいに気分が悪くなる事もあった(勿論漬物そのものは美味に仕上がる)。

今こんな風に手間暇かけて料理する家なんてそうそう無いだろうね。 決して立派な家柄とかじゃなくて、かつての本当に庶民の家の風景。

現在、僕は食事係なので出汁を取ったりするのだけれど、切出汁昆布と鰹節パックで簡単に済ませている。 いりこの下処理なんてとても出来ない。
だけどなんだかね、あのゆっくりした時間が懐かしくもある。 歳、取ったね。

(山椒に関してはもしかすると母の実家の庭に生えていた木から取っていたのかも。この辺り記憶曖昧。)

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