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『Cloud クラウド』 虚ろな人間たちが導く暗黒世界

Cloud クラウド
・監督
黒沢清

・脚本
黒沢清

・出演者
菅田将暉
古川琴音
奥平大兼
岡山天音
荒川良々
窪田正孝


〈あらすじ〉

“転売ヤー”として真面目に働く主人公・吉井(菅田将暉)。彼が知らず知らずのうちにバラまいた憎悪の粒はネット社会の闇を吸って成長し、どす黒い“集団狂気”へとエスカレート。誹謗中傷、フェイクニュース――悪意のスパイラルによってネット社会に拡がった憎悪は、実体をもった不特定多数の集団へと姿を変え、暴走をはじめる。やがて彼らがはじめた“狩りゲーム”の標的となった吉井の「日常」は、急速に破壊されていく―― 。(公式YouTube予告編より。)



 久々に映画を観ながら卒倒しかけた。観ている間こちらが予想する展開を裏切り続け、こんなにも空疎で、いやだからこそどこまでも広がる異常な暗黒世界に導かれるなんて全く予想していなかった。

 主人公は「転売屋」を生業としている若者・吉井。「転売屋」という肩書きの彼のように、どこまでも平凡で利己的、虚ろなキャラクターがこの映画を象徴している。

 そんな彼が対峙するのもまた無責任で利己的、どこまでも虚ろで
──自分の実存や行動に「何でだろう?」と疑いを持つのを諦めた人たち──
という暗黒世界の住人だ。

 そんな虚ろで単彩色の内面しか持ち合わせていないキャラクターが、恐怖の対象として描かれる異常性にフレッシュさを感じた。
 「どこまでも平凡で俗物的な怨念が、さらに平凡で俗物的な怨念を呼び寄せる」という対立構造がとても現代的に感じることに驚嘆する。
 さらには「自分がしたいからするだけ」といった一番平坦な内面を持ち合わせた人間が最たる恐怖の象徴とされていることに戦慄した。
 このような異常な地獄は映画でか味わえないし、そんな映画が大好きだ。

 ケレンさはミニマム(だがしかし確実にある)なカメラワークでネチネチとワンカットで魅せる手練手管を使った黒澤清ならではの恐怖演出の数々も見事だったし、70年代アクション風の乾いた銃撃戦もとても楽しかった。

 超オススメです!!!!


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