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『ゆとりですがなにかインターナショナル』|ゆとり世代とは何だったのか【ネタバレ映画感想】

今年の日本の出生数が70万人を切るんだってさ。
物理的に減っていく若者(赤ちゃん)。
そろそろゆとり世代が親世代になる時期。

そんな時、Amazonプライムでふと「ゆとりですがなにか?」のドラマが公開されていたので全話一気見してみました。

本作に登場する坂間の部下である山岸や、教育実習生の悦子先生が自分と同世代だったので、本当に「あるある~」と思いながら楽しめました。

その勢いで映画版も観たので、今回はその感想を書いていきます。

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あらすじ

<野心がない><競争意識がない><協調生がない>【ゆとり世代】
かつて勝手にそう名付けられた彼らも30代半ばを迎え、それぞれ人生の岐路に立たされていた・・・。
中略
想像を超える新時代の波も押し寄せ、物語は予想外の展開へ・・・!!
時代は変わった。俺たちは・・・どうだ!?

『ゆとりですがなにかインターナショナル』公式ホームページより

2016年放映のドラマ版から7年後の2023年のお話。
29歳だった主人公たちも36歳と中堅世代になりました。

映画情報

監督:水田伸生
脚本:宮藤官九郎
制作会社:日テレアックスオン

主題歌

感覚ピエロ『ノンフィクションの僕らよ』

『テイルズオブアライズ』の主題歌を担当していたバンドです。

「僕らを立ち塞いだこの世界も続いていくのさ」
「僕らは僕らでありたいの」
って歌詞が「ゆとり世代」以降の若者たちの叫びに聞こえますね。
もしかしたら、もっと上の先輩たちも若い時はそう思っていたのかも。

登場人物

大きく3名の「ゆとり第一世代」が主人公の群像劇です。
それぞれの関係者たちも、物語に巻き込まれていきます。

坂間 正和(演-岡田将生)
2023年の映画時点で36歳。
主人公の一人で元サラリーマン。ドラマ版で会社を退職。
会社の同期の宮下茜と結婚し、その後家業の酒蔵を兄と共に継いだ。
普段は他人に気を遣って優柔不断風だが、思いが爆発したらスゴみがある。

山路 一豊(演-松坂桃李)
2023年の映画時点で36歳。
主人公の一人で小学校の先生。
(公立の小学校っぽいけどほとんどの先生が異動してないのは謎)
いわゆる残念なイケメンで未だに女性経験ゼロ。
貧乏くじを引きがち。
ドラマ版では生徒親、友達に童貞とばれている。

道上 まりぶ(演-柳楽優弥)
2023年の映画時点で36歳。
ドラマでは11浪していた受験生。
中国人の妻子がおり、かつて坂間の妹にも手を出した浮ついたチャラ男。
本作のトラブルメーカー。
中国で事業が失敗し出戻りで坂間家に居候する。手取り12万。

ゆとり世代とは

ざっくり言うと、学習内容の削減や個性を尊重する「ゆとり教育」を受けた世代のことです。

子どもの自主性や想像力を育てることを目的としていましたが、結果として学力低下が広がったと評価されています。

これらの反省を活かし、「さとり世代」や「Z世代」の教育では授業時間の増加や新しい科目の追加が進められています。

しかし、子どもの数が減っているにもかかわらず、教員の負担は増加しており、人手不足が深刻な状況だそうです。

私の教育実習中の苦労については、こちらの記事をご覧ください。

Wikipediaのゆとり教育にめっちゃわかりやすい表があったので引用します。

Wikipedia「ゆとり教育

坂間たちは1987年生まれなのでゆとり教育の最前線だったことがわかりますね。
※後輩の山岸や悦子先生は2002年の学習指導要領が改定されたときに小学生だった世代です。

感想

前提が長かったですが、ここから観た感想です。

ゆとり世代要素はそこまでなかった。

ドラマ版では、ゆとり世代の苦悩や生き様が面白おかしく描かれていましたが、映画では彼ら「ゆとり第1世代」も立派な三十代半ばに。

いわゆる「お兄さん」と「おっさん」の中間的な年齢ですね。

坂間は結婚して子どももでき、少し落ち着いた雰囲気になり、今作では普通のお父さんとしての苦悩が描かれている印象でした。

かつて話題になった「ゆとり世代」も、大人になって落ち着いてきたということでしょうか。

とはいえ、山路とまりぶは相変わらずハチャメチャで、ドラマ版そのままの姿を楽しませてくれました。

また、LGBTQ、テレワーク、Z世代といった新しい価値観や多様性も作中で触れられていますが、それが主題というわけではなく、あくまで背景として描かれていました。

坂間家中心の物語で無駄のない展開

坂間家を巡る物語は、一般家庭を描いたホームドラマのように仕上がっていました。

ドラマ版では全10話・1話46分の合計460分という尺があり、三人それぞれの物語が複雑に絡み合っていましたが、今作は約2時間というコンパクトな内容に凝縮されています。

物語の基本軸は坂間家の騒動。
一見関係のなさそうな三人の関係者が、実は薄く繋がり合っているという群像劇的な展開が面白く、見応えがありました。

また、物語の途中ではしっかりと謎を残しつつ、最後には一気に回収されていく流れが非常に爽快で、見終わった後のスッキリ感が印象的です。
山路はいつになったら春が来るのか。

ちなみに、今作は『ハングオーバー!』シリーズをオマージュしているとのこと。
これは『ハングオーバー!』も観ておくべきかもしれませんね……。

エンディングでの種明かしが面白い

物語のエンディングは、父親の仏前で坂間家の家族が本音を吐露するという回想形式で描かれています。

いぶし銀の職人・服部と女将さんのやり取りは思わず笑ってしまうほどユーモラスでした。
仏壇に向かって故人と話す姿が描かれていますが、手を合わせる習慣のない人には「これが一般的な家庭なのか?」と感じられるかもしれません。

個人的に印象的だったのは、茜さんのセリフです。

「私ね、お父さんに会ったことないけどね、この家が好きなの。」

この言葉には、家族としての繋がりや愛情を感じさせる温かさがあり、物語全体を締めくくる素晴らしい一言だと感じました。


ゆとり世代ってなんだったんだろう

ゆとり第一世代は「就職氷河期」と重なり、不況や東日本大震災、増税といった苦難をダイレクトに受けた世代です。
さらに、中堅となった今はコロナ禍という試練に直面し、まさに「泣きっ面に蜂」といった状況。

氷河期世代以降の人々にとって、日本のかつての栄華は「歴史」としてしか知ることができません。
生まれた時から不況に直面し、冷笑的な物の見方を持つようになるのも無理はありませんよね。

投稿主自身は、山岸や悦子先生と同じ「ゆとり第二世代」に属しますが、この世代は「したたか」な人が多い印象です。
公共の場では本心を絶対に口にせず、虎視眈々とゆるく生きることを狙っている。

結婚する人は結婚し、個人事業主として自由に生きる人もいたりと、それぞれが自分のやり方で上手に世間と折り合いをつけているように見えます。

余談ですが、ゆとり世代の大谷翔平選手が活躍し始めてからこの世代は叩かれなかったようにも見える・・・。実力でネジ伏せてありがたい限り。

ドラマ版のゆとりちゃんの手紙

もう一つ、ドラマ版で印象的だったシーンを紹介します。
坂間の妹「ゆとりちゃん」が、まりぶに送った手紙の内容です。

ゆとり世代もそう。
作って名前をつけたのは大人なんだから、ちゃんと面倒を見るべきですよね。
そして今度は、私たちが社会を作る番。
子どもを産んで名前をつける番、ですよね。

ドラマ版『ゆとりですがなにか』9話

ゆとり教育は、当時の賢い大人たちが勝手に方針を決めて私たちに指導しました。
にもかかわらず、「これだからゆとりは……」と、子どものときから社会人になっても大人に怒られる始末。

「ゆとり教育」という教育システムは名ばかりで、受験や学歴社会は変わりませんでした。

当時の親や教師、そして上司たちは暴力的な人が多く、「ゆとり」とは程遠い環境でした。小学生の頃、担任が授業中に教室でタバコを吸っていたことを覚えていますよね。

いつの世も若者は老人に叩かれる構造

ここで、兼好法師の著作『徒然草』から一節を引用してみましょう。

何事も古き世のみぞ慕はしき。今様は無下にいやしくこそなりゆくめれ。
(中略)
最勝講の御聴聞所なるをば「御香の炉」とこそ言ふを、「香炉」と言ふ。
くちをしとぞ古き人は仰せられし。

『徒然草22段』著:兼好法師

意訳すると、
「最近の世の中は下品になってしまった。若者は『御香の炉』と正しく呼ぶべきものを『香炉』と省略して言うなんて嘆かわしい」と、年寄りが若者に対して嘆いていたという内容です。

鎌倉時代から、年配の人々が若者の言葉遣いに文句を言う「老害」の構図は存在していたんですね。

もっとも、『徒然草』は伝聞形式のエッセイであり、兼好法師自身がこの話をどう捉えていたかはわかりません。もしかすると、こうした年長者の嘆きを皮肉った話として書かれたのかもしれませんね。
こうやって若者世代を守ってくれる視点をもった老人がいると嬉しいですね。

まとめ

「つづく」とあったので、彼らが40代になった時にまた新作が作られるかもしれません。いっそのこと、孫世代が登場するまで続けてほしいですね。

どの時代でも若い世代は叩かれるものですが、それぞれの世代が自分らしく生きれば良いのです。今、ゆとり世代が親世代になり、新たな社会を作る時期を迎えています。

本作は、ゆとり世代が抱える葛藤や成長をユーモラスに描きながら、次世代への希望を感じさせる作品でした。時代を超えたテーマが込められた物語として、これからも語り継がれていくことでしょう。

今日はここまで。
本日の記事をご覧いただき、ありがとうございました!
また次回もぜひお楽しみに!


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けんこうなほうしの徒然なるnote
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