映画『はたらく細胞』|良改変な37兆の細胞物語【ネタバレあり感想】
『はたらく細胞』が実写映画化されたので先週見にいきました。
まだ公開中なのでまだ見てない人は観に行ってから読むのをおすすめします。
神奈川県川崎の映画館で見たのですが、舞台のセットが飾ってあった。細かいセットがいい作品を作るんですね。
なお、役者さんがイベントで来ていることを知らずに帰った模様。
昼からの上映にすれば良かった。
監督は『のだめカンタービレ』や『テルマエロマエ』を手掛けた方です。
『はたらく細胞』と『はたらく細胞BLACK』はアニメ化もされている人気作品。放送当時は同時放送だったので、無印版でほっこりしてブラック版で絶望する落差で風邪を引きそうでしたね。
この作品、外伝が多いんですよ。
キャラクターの性質上、人間の数ほど物語が作れるのは強いですよね。
巻数も6巻と少なくてサクッと読めて勉強になります。
あらすじ
登場人物
漆崎日胡(ニコ)/演:芦田愛菜
健康な高校生。医学部の大学を目指している。
映画オリジナルキャラ。
芦田愛菜さん、もう20歳なんですね。時の流れは早いもんだ。
赤血球(AE3803)/演:永野芽郁
ニコの体内の細胞。血液循環により、酸素を体内に運ぶ役割。
新人赤血球で迷子になりがち。
原作版と同じ番号なので同じ個体なんでしょうか。
原作は花澤香菜さんの名演技でリアクション芸でやかましかったですが、実写版はほどほどに。
白血球(好中球)/演:佐藤健
ニコの体内の細胞。体内に侵入したウイルスを排除する役割。
擬人化としてはクールなお兄さんで狂気的に殺菌をしていきます。
漆崎茂/演:阿部サダヲ
ニコの父親。酒!タバコ大好きな不摂生おじさん。
スピンオフ作品『はらたく細胞BLACK』の「本体」に当たる人物。
芦田愛菜さんとは『マルモのおきて』でのキャスティングを思い出しますね。私は見てないんですけど、当時はすごい流行ってました。
あれ2011年の作品ってことはもう13年経ったのか・・・。
鈴木福さんが出演しなかったのが惜しい。
新米赤血球/演:板垣李光人
ニコの父親の中の細胞。過酷な労働環境に絶望している。
スピンオフ作品『はらたく細胞BLACK』の主人公がモデル。
その他豪華キャストで原作に登場した細胞や細菌が登場します。
主題歌
Official髭男dism『50%』
ヒゲダンですね。
良い歌詞じゃねーか!!!
「生命活動に奔走する細胞たち」というのがメインテーマの作品ですが、ゆっくりでいいよと語りかけるような温かい曲。
ボーカルの方が身体を壊したようで、健康第一という思いで作ったそうです。2020年代、令和時代にぴったりなチルいけど頑張りたくなる曲ですね。
感想
ド文系でも楽しめる。ただ子どもにはやや刺激強めか?
高校の理科系科目が難しすぎて挫折して、古文漢文日本史の人文科目に行った身ですが、非常に細胞のはたらきがわかりやすくて面白かったです。
白血球、血小板、赤血球・・・中学理科で習ったなぁとしみじみ。
反面、後半パートはかなりショッキングな展開なので子どもは怖いかもしれません。とはいえ、病気の治療として間違ったことは描写していないので正しく現実的な知識を学べる教材としてグッドだと思います。
低学年のうちに「はたらく細胞」を見ていれば、高学年の理科で理解度が深まるかもしれませんよね。
あと、原作を知らなくても楽しめます。
前半パート
コメディ要素多めでおもしろおかしく細胞や病気の紹介をして楽しく見れました。
細胞の説明をマクロファージさんが紹介してくれるのですが、完全にポケモン図鑑のそれで笑った。
アドレナリンを放出する神経細胞はアゲアゲなDJKOO氏が演じたり、アニメで人気だった血小板ちゃんたちも子役が素晴らしい演技で原作と遜色ないクオリティーでした。
白血球のレセプターという機能は漫画と同じで帽子にくっついてるんですけど、あれが「ピポン⭐️」って鳴るたびにシュールな笑い声が聞こえてきました。
実写版だと『有吉の壁』がチラついて佐藤栞里さんの「壁クリアです!」の幻聴が。
実写映画ってお遊戯会みたいな感じになる危険性がありますが、特に気になりませんでした。『のだめ』も『テルマエロマエ』も原作の雰囲気を崩さずに上手く実写化していたのでさすがの一言。
物語の展開としては、ニコパートで身体に症状→細胞パートで細胞たちが病気や怪我に対して活躍→父親パート→父親の細胞パートと繰り返していきます。
特に父親の不摂生によって細胞たちが苦しむ様子は漫画版同様に大人だとやや笑えない微妙な気持ちに。
彼の体内は戦時中のような昭和風だったり、肝臓の見た目は歌舞伎町。『龍が如く』っぽくて割と笑いが起きてました。
排便シーンは筋肉を相撲VSラグビーとして擬人化され迫真で面白かったんですけどね。
映画『クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』の野原家VS筋肉の迫真のトイレ戦を思い出した。
加藤諒演じる先輩赤血球も死亡するし、ギャグ調なのに笑えない。
BLACK版はメインキャラ以外の死亡率が高いので、生命の残酷さを感じます。
実写を観て一層自分の身体を労わろうと思いました。
私は酒もタバコも嗜まないのですが中年までに健康に気をつけたい。
後半パート
コメディタッチな前半から転じてニコが「白血病」となってしまい闘病パートに。かなりシリアスな展開。
ここの比重がかなり長くて、ずっと重苦しく明るいギャグ映画感は消えます。賛否分かれそうです。
原作でも癌細胞との戦闘はありましたが、死闘ではありましたが細胞たちの力で勝ち切りました。
映画では、薬物や放射線、骨髄移植で治していきますが、どんどん細胞が死亡していく描写は悲しい。
原作の細胞たちが次々と死亡するのでファンからしたらショックかもしれませんね。
「輸血」によって父親の新米赤血球(板垣李光人)が、ニコの赤血球(永野芽郁)と合流。ここが漫画版と違う点ですね。
良いクロスオーバーですが、父親が献血車で血を提供していましたが、都合よくニコのところに届くのか・・・?と考えるのは野暮か。
また、クロスオーバーの影響で『BLACK版』の白血球と新米赤血球の下りはできなくなりますね。続編が出るならどう調理するのか。
原作でも人気だったキラーT細胞やNK細胞も力尽きてしまいます。
実際の治療を擬人化するからこそ、リアリティがあってわかりやすかったです。
放射線はオーロラとして描写され綺麗でしたが、ジュッと赤血球が消滅するのは『ガンダムSEED』のレクイエムや原子爆弾を彷彿とさせますよね・・・。
お、逆転か?と思ったら病状が悪化。
お、やっと逆転か?と思ったらラスボス強化の展開が何回か続いて、大きなカタルシスはありません。
人間パートで「笑顔が免疫力につながる」旨の描写があったから、笑顔の力で白血球が強くなる・・・みたいな展開もなし。
現実は甘くないことを伝えたかったのでしょうかね。
最後に骨髄移植によって別世界の女の子がやってきた時に小さな希望が見えて少し泣いちゃいました。
ドナーは中々見つからないって聞きますから、海外からドナーが見つかったんだと説明無しでわかる描写は良かった。
白血病って血液の癌だということを知りました。
親戚や仕事先のお客様で白血病の方がいたのですが、よくわからずにいました。無知の知だぁ。
FP3級でも生活習慣病や死亡率の高い疾病は習うんですけどね。
実際どんな病気なのか漠然としか知らないことを気付かされました。
勉強になるからぜひ続編やドラマ化してほしいですね。
ラスボスの演技、グッド
ラスボスはバンド「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukaseさんが演じていました。音楽畑の方だからこそのいい意味で「異質感」があって良かったです。
細胞への労い
ニコが寛解して医者に感謝を伝えるシーン。
お医者さんは「感謝は君の細胞に伝えて」と言って、ニコが自分自身に感謝を伝えるシーンが本当に好き。
漫画版では、「外の人(本体)」は描写されずに細胞がひたすら頑張り続けて労いの言葉はありません。生物の機能なんですからそりゃそうですよね。
だからこそ、本体である人間が細胞たちに感謝を伝えるシーンは、彼らが報われた瞬間なのかもしれません。
私たち人間が寝てるときも、働かない時も、どんな時も生きるために動き続ける細胞たち。
今この瞬間、私たちが生き続けられているのは細胞が頑張っているからと改めて考えさせられました。
私は脂肪腫という、脂肪細胞が異常増殖する病気になって手術をしました。
ただ単に背中がプニプニになるだけの病気で大事にはなりませんでしたが、手術は体力を使いますよね・・・。二度と入院は懲り懲りと思いましたよ。
もしかしたら、私の体内での細胞が頑張ってたのかな。
37兆の細胞でできている私たち
赤血球は120日、白血球は12時間、細胞たちが生まれては死にを繰り返して私たち人間を動かしています。
まさに一つの社会、世界、宇宙なんだなと思っちゃいますよね。
生まれ変わりエンド
細胞たちは白血病の治療でほぼ全滅したものの、永野芽郁さんと佐藤健さん演じる赤血球と白血球は髪色と武器が変わって生まれ変わっていました。
原作だとレギュラーメンバーは寿命で死ななかったから、原作ファンからしたらややショッキングな改変。賛否別れそう。
調べた知識で恐縮ですが、赤血球の寿命は約120日だそうです。
死亡した赤血球はヘムとグロビンに分解されて、一部が新しい赤血球を作る部品になるとか。
てことは、前世の赤血球は力尽きて再生成されたと考えると生まれ変わりエンドは納得かな?
最期に赤血球(永野芽郁)が引き継ぎ書を次の赤血球に託したのも、文字通り「はたらく」細胞としての使命を全うしてかっこよかった。
生まれ変わった白血球の武器がダガーから日本刀になって飛天御剣流のポーズをしていたのは中の人ネタとして割と笑いが起きてましたね。
『はたらく細胞BLACK』の白血球は未登場
うおおい!白血球さん未登場かい!!
原作版の白血球と違い、BLACK版の白血球は女性です。
アニメでは日笠陽子さんが担当していた長髪でグラマラスな最強のお姉さんでしたが、残念ながら未登場。
やっぱキャスティングが難しかったかぁ。
続編に期待ですが、話の展開的に新米赤血球とは会えないので残念ですね。
外伝要素があると思わなかったので、あるだけましか。
エンディング
スタッフロールでは、ニコの勉強ノートという形でキャラ紹介。
説明もわかりやすくて見入っちゃいました。
ヒゲダンの歌詞までしっかり聴けなかったのですが、YouTubeで聴いて感動。
まとめ
原作通りなぞった実写ではなく、無印版と『BLACK』の両方をいい塩梅にミックスしてオリジナル要素を追加。
原作には無かった人間たちのドラマも追加されてより細胞たちの解像度が上がったんじゃないかなと思います。
勧善懲悪なカタルシスは少ないですが、現実的な闘病生活も絶妙でしたね。
理系じゃなくても、理科の知識がなくても楽しめます。
反面子どもには刺激がやや強めなので多少の覚悟はいるかとは思いました。
今日はここまで。
本日の記事をご覧いただき、ありがとうございました!
また次回もぜひお楽しみに!
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