
Photo by
hd4ance
【詩】少女 [inspired by “Self-Prtrait (1932)” by Vieira da Silva]
鉛直に架かる白い梯子を夢中で登る少女がふと手をとめて
宙空を望めば天は遥か遠く晴れ渡っている
目を移せば 彼女がいま登っているのは驚くほど高い絞首台の形の塔で
その不吉な形が辺りを蒼く暗く彩っている
地には先の尖った杭が数本獲物を待ち受けるように埋められている
梯子は少女の後を追うように下の段から消えてしまっていて
彼女の足はいくら登っても下から四段目を踏んでいる
塔に登りついたとして彼女がそこに見るものはなんだろうか
ただ黒い描線が足幅ぎりぎりにギャロウズポールから伸びているだけ
それに気づいた少女は、しかしもう二度と目の前の梯子段から目を逸らすことなく
上をめざしてまた登りはじめた
それが絞首台だとしてだれを吊るすために建てられたものなのかわからない
あるいはそもそもそれは絞首台ではなく異教徒の建てた塔なのかも知れない
少女の小さな手が梯子段をつかむさまは
未来を運命に託した賭博者のそれのように力強く私たちに見えている