音響オペレータの基礎知識③ 日頃の鍛錬
卓を操作するオペレータとして、必要なスキルの一つが「音質の可視化」です。
今聴こえている音に対して、なにか手を加える必要があるのか、あるとすれば何をどうすれば良いのかを聞き取る技術です。
バンドが演奏しているとき、ミキサーとして卓前に立っていて、
「なんかモコモコしたおとだな〜。」
などと思ったあとで、どのツマミをどうすれば良いのかがわかるようにしなくてはなりません。
卓のオペレータが操作できるのは、主に周波数特性です。
chごとのhigh,mid,lowのつまみと、全体に効くグライコを操作することになります。
なので、音質と、その音質の特徴となる周波数を体に叩き込むのが必要です。
そんな中、僕が使っているのはandroidスマホのこのソフト。
「Spectroid」
スマホのマイクで、その場の音響周波数特性が見えるソフトです。
マイクが拾うのは時間軸の波形ですが、これを周波数軸に変換してくれます。
良い料理人になるには、良い料理を味わってその味を覚えること、が必要ですが、
良い音響オペレータになるにも、良い音響場をたくさん経験することが必要です。
「あーいい音だなー。」と感じるだけでなく、その時の周波数特性がどうなっているかを目で確かめるためにこのソフトが役に立ちます。
もちろん、スマホのマイクなので、プロの音響測定マイクのようにフラットな周波数特性は得られませんが、ライブハウスでこれを見ながら、音を聞くことによってその場の音質がそのスマホで、どのような周波数構成に見えるかがわかります。
特に必要なスキルは、「ハウリングしたときの周波数を知る」ことです。
ハウリングにも二通りあり、
1)マイクを不用意にスピーカーに向けてしまったときのハウリング
2)ホールの音響特性によるハウリング
のうち、2)ホールの音響特性によるハウリングは、発生する周波数が毎回ほぼ同じ、という特徴があります。
スピーカーからの進行波が壁で反射して、また反対側の壁で反射しますが、壁の間の距離がある周波数の波長の整数倍になっていると、その周波数が反射ばかりを繰り返し、減衰が遅くなります。
これが2)のハウリングの原因です。
根本対策は、壁にカーテンをかけるなど反射を抑える工夫が必要ですが、卓のオペレータとしては、パワーアンプの前に入れたグライコで対策することになります。
そのときに、どの周波数を落とせば良いのかが、このソフトでわかります。
楽器や誰の声かに関わらず、なんだかこの周波数に常にピークがある、というのがそれです。
音響オペレータとしては、どこかの周波数にピークがある音を覚えておきましょう。
良い音がしているライブハウスだと、そのような定常的なピークがないはずです。
例えば、110Hzに定在波が立って、ハウリングするような状況を模擬してみると、こんな感じに110Hzにピークが見えます。
下半分は、上半分のスペクトラム波形の時間的経過を示しています。
刻々と変化する音の中で、常に出ている音があるとこのように縦に直線が見えます。
とぎれとぎれにでも、このような直線が見えると、この辺の周波数でハウリングするかも、と予知できるようになります。
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