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映画レビュー

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見た映画の感想です。ミニシアター系が中心です。
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2024年6月の記事一覧

映画『夜明けのすべて』における職場についての書き残し

 三宅唱監督作品『夜明けのすべて』(2024)については、すでに記事を書いているが、書き残していたことをあらためて記しておきたい。そこでは、三宅のフィルモグラフィーを背景に思ったことを書いたので、省いたことがあった。  公開以来、幾度となく劇場で見たが、少し間がたったゴールデンウイーク中に、帰省中の知人と一緒に京都・出町座で見るという機会があった。その知人はこの種の映画をもともと見るようなタイプではないので、解説を求められ、その際に話した内容を中心に書き残しておきたい。

『こわれゆく女』『ラヴ・ストリームス』~早稲田松竹「ジョン・カサヴェテス特集」から

『こわれゆく女』(ジョン・カサヴェテス監督/1974年/アメリカ/147分/カラー/ビスタ)  カメラのピントがずれようがカットがつながっていなかろうが、問題とはしない。そういう態度で撮影され、編集されるからこそ、俳優とカメラとの相克がそのまま、映画内世界における人物と空間との相克として、観客に受け止められる。ピントのズレは空間の不安を意味し、唐突なカットの切り替わりは空間の混乱を表す。  しかし圧力は必ず開放路を(ときに暴力的に)こじ開けるものである。(ここで「水は低い