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映画レビュー

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見た映画の感想です。ミニシアター系が中心です。
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2023年12月の記事一覧

2023 映画鑑賞この一年

 2023年に見た映画は延べ130本でした。昨年比5本増とほぼ変わらぬ鑑賞頻度でしたが、その中身は大きく変わり、今年は大半が旧作となりました。そこで今年の「映画鑑賞この一年」は印象深い旧作の上映イベントを振り返りたいと思います。 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ リプリーズ(6月24日~/渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー)  濱口竜介が影響を受けた監督として必ず名を挙げるジョン・カサヴェテスの特集上映です。  中でも特に衝撃を受けたのは『チャ

『1日240時間』in パルシネマ「万博映画特集~70年大阪万博の光と影~」

 1970年大阪万博にちなんだ映画の特集上映「万博映画特集~70年大阪万博の光と影~」が12月10日から19日にかけて、神戸・新開地の「パルシネマしんこうえん」であり、10日には同万博の会場で公開された安部公房脚本、勅使河原宏監督の珍品『1日240時間』が上映された。  本特集は、同じテーマで甲南大学文学部が12月上旬に開催した第1回「甲南映画祭」の地域連携企画として、パルシネマでの興行が実現したもの。  服用すると10倍の速さで動けるようになる加速剤「アクセレチン」が発

『ある精肉店のはなし』評/技能の必然性をとらえた映像記録

 名前だけは知っていた『ある精肉店のはなし』(纐纈あや監督、2013年)というドキュメンタリー映画は、ついに見る機会を逸したままだったが、公開10周年の記念日に当たる2023年11月29日、大阪・十三の第七藝術劇場にて上映があると聞きつけて仕事帰りに向かった。  冒頭、家の裏にある牛舎から牛を引き出していく。男手一本でやや興奮ぎみの牛をなだめすかしながら屠場へ連れて行く。  その日は「屠畜見学会」が催され、衆人環視の中、牛を「割る」のである。牛の眉間にハンマーを振り下ろし