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ブレンディッド・ウイスキーがワイン市場を飲み込んだ! 《ブレンディッド史④》
■前回までのおさらい
19世紀半ば(1860年くらいまで)は、ヨーロッパの貴族階級(フランスやイングランド)で嗜まれていたのは「葡萄のお酒」でした。
◇葡萄のお酒
・葡萄を原料とする「醸造酒=ワイン」
・葡萄を原料とする「酒精強化ワイン=シェリーなど」
・葡萄を原料とする「醸造酒=ブランデー」
一方で、ウイスキーは、アイルランドやスコットランドで飲まれている地酒でした。
それが、1860年頃になると
・連続式蒸溜機の普及によりグレーンウイスキーが誕生
・モルトウイスキー×グレーンウイスキー=ブレンディッドの誕生
によって、スコッチ(のブレンディッド・ウイスキー)が、一気にウイスキー界のトップに躍り出るという現象が起こります。
そしてその破竹の勢いは止まらず、このスコッチ・ウイスキー(=ブレンディッド・ウイスキー)がついに、ヨーロッパ酒類業界の王者『ワイン文化圏』をも飲み込むこととなるのです!
今回は、ワインとスコッチ・ウイスキーの立場逆転の瞬間について解説してみたいと思います。
■ワインの強敵! 「フィロキセラ」
フィロキセラ。
ワインを嗜む方なら、ご存じかと思います。
こいつがヨーロッパで猛威を振るい、ワイン用のブドウの木が壊滅的なダメージを負うことになります。
◇フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)
ブドウネアブラムシ(葡萄根油虫)は、ブドウ樹の葉や根にコブを生成してブドウ樹の生育を阻害し、やがて枯死に至らせる昆虫である。別名はフィロキセラ(Phylloxera、旧学名の Phylloxera vastatrix にちなむ)。19世紀後半、品種改良のためにヨーロッパへ移入したアメリカ原産のブドウ樹に付着していたことで、ブドウネアブラムシへの抵抗力を持っていないヨーロッパブドウ(ヴィニフェラ種)に全滅に近いほどの被害をおよぼし、多くの歴史あるワイナリーがそのワイン畑と共に失われた。
超訳すると
・アメリカからヨーロッパに、ブドウの木を枯らす害虫が入って来た。
・アメリカ系のブドウの木は、この害虫に耐性があったが、ヨーロッパ系のブドウの木はこの木に耐性がなかった。
・この害虫のせいで、ヨーロッパのブドウの木はほぼ全滅した。
ほぼ全滅!
ハンパじゃないインパクトです!!
結果的に、このフィロキセラにやられていない純粋なヨーロッパ系のブドウの木はヨーロッパ本土にはなくなってしまい、チリ(ヨーロッパの人がブドウの木とともに移住した)などユーラシア大陸から離れた場所のみとなるそうです。
そう考えると、チリワインってお値段がお求めやすいことが多いですが、あらためて飲んでみたいですね!
おっと、話を戻します。
■フィロキセラ対策
最終的にはこの害虫への対策が生み出されます。
それが『接ぎ木』です!
◇接ぎ木
接ぎ木(つぎき)とは、2個以上の植物体を、人為的に作った切断面で接着して、1つの個体とすることである。
害虫に耐性のあるアメリカ系ブドウの木を持ってきて、ヨーロッパの地で植えて、その生えてきたアメリカ系ブドウの木に、ヨーロッパ系ブドウを接ぎ木して(=人工的にくっつけて)、ヨーロッパ系ブドウの実を収獲できるようにしました。
ただ、この対策を編み出すのに30年近い試行錯誤が必要でした。
■フィキセラが到来したのが・・・
1963年にワインの本場:フランスのコート・デュ・ローヌ地方で初めて確認されると、アッという間にフランス全土、そしてヨーロッパ全土へと広がってしまいます。
世界中のブドウを襲った害虫「フィロキセラ」とは? | エノテカ - ワインの読み物 (enoteca.co.jp)
そして、1890年代に接ぎ木が編み出されるまで、ヨーロッパではワインの生産量が激減することになるのです。
■でもお酒は飲みたいですよね?
ヨーロッパで千年以上にわたり、「イケているお酒」として君臨していた『ワイン』。
それが飲めなくなったのですから一大事です!!
ブドウがなくなればワインだけでなく、シェリー・ポート・マディラ、ブランデーなどブドウを原材料とするお酒は全てつくれなくなります。
でも、一度覚えてしまった「お酒」は飲みたいものです!
(私もその気持ちはよーーーーーーーーーく、わかります。)
で、このフィロキセラがヨーロッパを襲った時期が、1863年から30年間くらい。
1863年というと・・・
そう!
スコットランドで、ブランディッド・ウイスキーが爆誕して、アイリッシュ・ウイスキーも蹴散らしてウイスキー界を席巻していた時期と一致します。
■ブレンディッド・ウイスキーを飲んでみると・・・
ワインやシェリー酒が無くなってしまったフランスやイングランドの貴族は、
田舎臭いから本当は飲みたくないけど、
しょうがねーから、
スコットランドの酒を飲むか!
とスコットランドのウイスキーを飲みます。
(ウイスキーは大麦をはじめ穀物原料なので、フィロキセラは影響がありません)
そうすると、
え、何これ! ウマッ!!
となったのです。
そこには今まで聞いていた「田舎のドギツい味のダサい酒」ではなくて、
モルト原酒とグレーン原酒が
絶妙にマッチした
ブレンディッド・ウイスキー
(木樽熟成アリ)
があったのです!!
■こうして
スコッチ・ウイスキーは
《内的要因》
ブレンディッド・ウイスキーの発明
《外的要因》
フィロキセラによるワイン欠乏の影響により、ヨーロッパ全土で口にされるようになった
という「内的要因」と「外的要因」の両方から、ヨーロッパ(当時の世界の中心)で「至高の酒」として嗜まれるようになったのです!
ちなみに、現在もフランスはスコッチ・ウイスキーの輸出先国としてはトップクラスです!
■もう少し深掘り!
これで終わると思いきや、もう少しマニアックに掘り下げてみたいと思いまます!
次回に続きます。