ウイスキー/アイルランド起源説 大麦のお酒が市民権を得るまで 《歴史の授業①》
■ウイスキーのアイルランド起源説
前回からの続きで、ウイスキーはどこで発祥したのか?というお話です。
このため「アイルランドの1172年頃説は主張するのは根拠が乏しいよね」というところまでが前回です。
ただ、アイルランド発祥説には2つ目の言い分があります。
今回はそのお話です。
■アイルランド発祥説②《状況証拠》
ウイスキーがアイルランドで発祥したと思われる根拠の2つ目は状況証拠です。
「物的証拠」と「状況証拠」の違いとは?分かりやすく解釈 | 言葉の違いが分かる読み物 (meaning-difference.com)
どういうことかというと、
ということです。
実は、チャーリー的にも『アイルランド発祥説』の方が可能性が高いのではないかと考えています。
ということで、『アイルランド発祥説』の状況証拠となる「ヨーロッパのお酒の歴史」について、今回から数話にわたってご紹介したいと思います!
■古代ヨーロッパでイケていたお酒「ワイン」
ヨーロッパのお酒の歴史を語る場合、ワインを抜きには語れません。
ある意味、もっとも原始的なお酒です。
大麦(ビール・ウイスキー)や米(日本酒)など穀物を原料とするお酒は、元々は糖分を持っていないので、デンプンを糖分に変える「糖化工程」が必要となります。
このように、『穀物のお酒』は人的な加工(糖化工程)が必須となるお酒であり、ワインなど『フルーツのお酒』よりも歴史的には後に来ます。
ワインはその赤さの神秘性もあって、キリストに以下のように評されました。
古代から続くワインの歴史を知ろう|たのしいお酒.jp (tanoshiiosake.jp)
キリスト教の広まり(布教)とともに、ワインはヨーロッパ全土へ広がります。
そして、ワインはキリスト教と結びついているだけに、修道院を中心につくられました。
■寒すぎてワインができないよ! 『じゃ、ビール』
ただ、葡萄の栽培はフランスの北部ぐらいが限界でした。
ドイツや、イングランド・スコットランド・アイルランドといった寒い地域では、良い葡萄が育たなかったのです。
そういう寒い地域ででは、寒さに強い大麦などが食用で栽培されていたので、それでお酒をつくることにしました。
こうして、ドイツや、イングランド・スコットランド・アイルランドでは、ワインではなくて、ビールがメインで飲まれるようになります。
ただ、ヨーロッパではワインがイケているお酒でしたので、
とちょっと下に見られていました。
■ビールの地位向上
しかし、水質の良い水に恵まれなかったヨーロッパでは、ワインやビールなどは水よりも衛生的な大切な飲みものでした。
と考えたのが、8~9世紀、神聖ローマ帝国のカール大帝です。
(ちなみにカール大帝はトランプのハートのキングのモデルです)
とカール大帝は命じます。
これにより、ワインより下に見られていたビールの地位が向上し、ヨーロッパ全域へビール醸造が広がるキッカケとなりました。
また、キリスト教的なビールの「キャッチコピー」も生まれます。
このように、「ビールもキリスト教的にOK」という解釈も生まれ、葡萄の栽培に適さない北国では、ビールが飲まれるようになりました。
■こうして
アイルランドやスコットランドでは、ビールが飲まれるようになったわけですが、昔は下面発酵(ラガービール)が発見されていなのでエールビール(上面発酵)でした。
そして、今もこの地域ではエールビールがメインです。
アイリッシュパプ=エールビールって感じは、ありますよね?
その後、ビールと蒸溜技術が出会うことで、「透明なウイスキー」が誕生します。
それを木樽熟成させると、「琥珀色のウイスキー」の爆誕です!
でも、そもそも「蒸溜技術」や「ビール」は、どこで誕生したものなのでしょうか?
次回は、もうちょっと時代を遡って、「ビール」と「蒸溜技術」のそれぞれの誕生について確認してみたいと思います!!