ウイスキー用のポットスチルで「ブランデー」はつくれるか?《和製ブランデー③》
■前回からの続きです。
それでは、ウイスキー蒸溜所のブランデーづくり参入について、シミュレーション(妄想!?)してみたいと思います。
■蒸溜器(ポットスチル)
実は逆に、本来はブランデー用である「シャラント型アランビック※」で、ウイスキーづくりをしている日本国内の有名クラフト蒸溜所があります。
(※アランビック=アラビア語で「蒸溜器」のこと。ウイスキーでいうところのポットスチル。アランビック型スチルと呼んだりもします。)
それは、長濱蒸溜所です!
長濱浪漫ビールウイスキー - 長濱浪漫ビール (romanbeer.com)
■ブランデー用スチル
その長濱蒸溜所のポットスチルがこちらです。
このウイスキー蒸溜所ではあまり見かけない形状のスチル(なんかアラジンのランプみたい)は、本来はブランデー用のもの(シャラント型アランビック)です。
長濱蒸溜所は、スコットランドのストラスアーン蒸溜所にインスパイヤされて、ウイスキーづくりに参入したと言われています。
ストラスアーンは、「慣例的に2,000L以下の小さいサイズのポットスチルでのウイスキーづくりを認めてこなかった」スコットランドのウイスキー業界において、国側に初めて2,000L以下サイズのスチルでの生産を認めさせた『スコットランド クラフトウイスキー業界の雄』です。
ストラスアーンについては以前に記事にしています ↓
法改正までのパッション! 世界で急増、クラフト蒸溜所!!|チャーリー / ウイスキー日記 (note.com)
そこで使用されていたのがこのブランデー用のシャラント型アランビックのポットスチルでした。
このように、ブランデー用スチルでウイスキーづくりをやっている蒸溜所が、実際にあります。
それもスコットランドと日本の『クラフトウイスキー業界の雄』とも呼べる有名な蒸溜所です。
ということは逆に、ウイスキー用ポットスチルでブランデーづくりはできるのではないかと思うのです。
■「ワイナリーと蒸溜所」 協業のメリット
このワイナリーとウイスキー蒸溜所の協業では、とても大きなメリットがあると思います。
それが、
ということです。
クラフトワイナリーが増え、新規のワイン生産が増える中で、「ワインが、狙った通りの味わいにならない」ケースもあることでしょう。
ウイスキーの場合は、基本的には原酒をブレンドしますので、そういう『ヤンチャな原酒』はブレンドの中に少量を使用して、使っていくことになります。
また、そのような「ヤンチャな原酒」こそが、ウイスキー原酒の魅力であるとサントリーの前・チーフブレンダー輿水精一さんが、NHKのプロフェッショナルで言っていました。(かなり以前の放送ではありますが)
『優等生では面白くない』
第32回 輿水精一(2006年11月9日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀 (nhk.or.jp)
一方で、ワインでそのようなヤンチャな原酒ができあがった時、ウイスキー同様に「ブレンドして使用する」こともあり得ます。
(ワインも1樽1樽の熟成に個体差がでるので、いくつかの樽をブレンドしてから瓶詰めすることが一般的なようです。)
ただ、「ヤンチャすぎて手に負えないワイン」もできあがることがあると思います。
新規に生産を開始したクラフトワイナリーなら、なおさらその可能性は高いでしょう。
その場合、ブレンド用に使用する以外のリカバリー方法があるんです!
どのような方法か、想像がつきますか??
■ブランデーはワインを蒸溜してつくります!
いきなり答えからです!
その「ヤンチャすぎるワイン原酒」を、蒸溜所へ融通(売却)して蒸溜してしまえば、「ブランデー用の原酒(無色透明)」のできあがりです!!
これを木樽熟成させて、琥珀色をつけるとブランデーの完成となります。
このように、「ヤンチャすぎるワイン原酒」を融通できるのであれば、ワイナリー側も蒸溜所側もハッピーになるのではないかと思います!
■次回は
実はこのような蒸溜による「原酒再生」によって「WIN-WIN」の関係となる事例は結構ある話です。
次回はヤンチャな原酒を、蒸溜することで価値を再生した事例をご紹介し、ジャパニーズ・ブランデーの可能性を空想してみたいと思います。
次回が「令和のジャパニーズ・ブランデー」の最終回(4回目)です!
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