見出し画像

ウィリアム・グラント&サンズ社 凄いぞ列伝① 《創業期の奮闘編》

■ウィリアム・グラント&サンズ社とは?

◇スコッチ・ウイスキー生産量
  = 世界3位の超大手!


1位 ディアジオ
2位 ペルノ・リカール
3位 ウィアム・グラント&サンズ

世界3位のスコッチメーカーですが、日本ではあまり耳にしない会社名ですよね。

なぜでしょうか?

それは、ウィリアム・グラント&サンズ 日本支店というものが存在していないからで、その商品はブランドによって、サントリーや三陽物産が取り扱っています。

(一方、1位のディアジオには、ディアジオ・ジャパンやMHD、2位のベルノ・リカールには、ペルノ・リカール・ジャパンという日本法人が存在しています。)

ちなみに、「スコッチ」でなく、「世界5大ウイスキー※」となると、3位がウィアム・グラント&サンズから、サントリーへと入れ替わります!

※   [世界5大ウイスキー]
スコッチ/アイリッシュ/アメリカン/カナディアン/ジャパニーズ の5ケ国

このスコッチ業界の雄『ウィアム・グラント&サンズ社』について、今回から何回かに渡り、ご紹介したいと思います。


◾️ウィリアム・グラント&サンズといえば?

◇とにかくグレンフィディックで有名!

・三角のボトルが印象的
・世界で最初に発売されたシングルモルト
・世界で1-2位※に売れているシングルモルト

※  長い間、シングルモルト・ウイスキーの売上でNo.1であったが、直近で、グレンリヴェットに僅差で抜かれた模様。

この会社はとにかく『グレンフィディック』で有名です!

ちなみに、日本ではそこまでメジャーではないですが、スタンダードクラスのブレンディッド・ウイスキー『グランツ』は、本場スコットランドではトップクラスの売上を誇る、安旨スコッチウイスキーです。


◾️ウィリアム・グラント&サンズ社の所有蒸溜所

《スコットランド・モルト蒸溜所》

・グレンフィディック蒸溜所(1887年~)
・バルヴェニー蒸溜所(1892年~)
・キニンヴィ蒸溜所(1990年~)

上記3蒸溜所は、スペイサイドのダフタウン地区の隣り合った立地に存在します。

・アイルサベイ蒸溜所(2007年~)
グレーン蒸溜所のガーヴァン蒸溜所の中に開設したモルト蒸溜所。

《スコットランド・グレーン蒸溜所》
・ガーヴァン蒸溜所(1963年~)
ローランドにある巨大なグレーンウイスキー蒸溜所で、ジンなどもつくっている。

《アイルランド》
・タラモア蒸溜所(2014年~)
タラモアのブランド権を、ペルノ・リカールより購入し、新規にタラモア蒸溜所を開設。(それまでタラモアデューは、ペルノ・リカールのミドルトン蒸溜所でつくられていた)

グレンフィディック蒸溜所 / ガーヴァン蒸溜所は、それぞれ
モルト蒸溜所 / グレーン蒸溜所のカテゴリーにおいて、業界最大級の生産能力を誇ります。

さすが、スコッチ業界の雄ですね!


◾️ウィリアム・グラント&サンズ社の歴史

・1887年 グレンフィディック蒸溜所を開設
・1892年 バルヴェニー蒸溜所を開設(グレンフィディックの隣りに)

・1898年 グランツ スタンド・ファスト(ブレンディッド・ウイスキー)を発売
・1898年 12月、モルト原酒の納品先であったパティゾンズ社が破産

・1963年 ガーヴァン蒸溜所(グレーン蒸溜所)を開設
・1963年 業界初のシングルモルト・ウイスキー「グレンフィディック」を発売

・1969年 スコットランド初の専門的なビジターセンターを開設
・1990年 キニンヴィ蒸溜所を開設(バルヴェニーの隣りに)

・1999年 ヘンドリックス・ジンを発売
・2003年 モンキーショルダー(ブレンディッド・モルト)を発売

・2007年 アイルサベイ蒸溜所を開設
・2014年 新タラモア蒸溜所を開設

・2019年 グレンフェィディックに第三蒸溜棟を開設


■ウィリアム・グラント&サンズ 凄いぞ!列伝《創業期の奮闘編》

スコッチウイスキー業界を牽引するウィリアム・グラント&サンズ社ですが、今だにファミリー企業です。
そして、ファミリー企業ならではの、チャレンジ精神に満ちた逸話があまたありますので、ご紹介したいと思います!


■逸話① ウイスキー業界と関係のない家系

もともと、スペイサイドでは密造酒製造にはじまる代々の蒸溜家一族が多いです。
しかし、創業者のウィリアム・グランさんは貧しい仕立屋の息子でした。
家計を助けるため、少年時代は採石場などでも働き、その後、モートラック蒸溜所に会計係として20年勤務。
その後、独立して、ウイスキーづくりをはじめるため、1886年からグレンフィディック蒸溜所の建設に着手することとなります。

このグレンフィディック蒸溜所を着工した1886年は、ゴールデンディケイドと呼ばれるスコッチ・ウイスキーの絶頂期に突入しているため、ブレンド会社がその豊富な基金力をもとに開設するケースが多かったのです。

そのため、「蒸溜家一族以外」から「個人経営」で、新規参入する蒸溜所は珍しく、ウィリアムのウイスキーづくりへの情熱を感じますね!


■逸話② 資金力に乏しい苦労人

「個人経営」&「蒸溜家一族以外から新規参入」は凄いのですが、言っても「個人経営」なので、「情熱」はあれど、元手となる「資金」が足りません。
メーソン(石工)を一人雇って、その人の指示で、9人の子供たち(子だくさん!)と一緒に、「家族総出で石を積んで蒸溜所を建設」したという逸話を持ちます。

日本最初のウイスキー蒸溜所である山崎蒸溜所も、サントリー創業者の鳥井信治郎が立ち上げた時には、山崎初代工場長(のちのニッカウイスキーの創業者)竹鶴政孝が細かい設計指示を出しながらのドタバタ続きだったと言われていますが、さすがに「自分で石を積み上げた」わけではありません。

ウィリアム・グラント、気合がハンパじゃないですね。

そして、ウィリアム・グラント家族が石を積み始めたのが1886年。
鳥井が山崎蒸溜所の建設を発表したのが1923年なので、この間37年です。

さらに、鳥井がサントリーの前身・鳥井商店を創業したのと比べると、鳥井商店の創業が1899年なので、ウィリアムの石積みの1886年とは13年違い。

そこまで時代は違わないのです!

ちょっと意外ですね。


■逸話③ 中古スチルでスタート!

ちなみに、新品を買う余裕がないので、当初のポットスチルはカードゥ蒸溜所の中古だったと言います。

そんな感じで、その後に増設したポットスチルも寄せ集めだったので、グレンフィディックのスチルの形状はスペイサイドとしては珍しく、ストレート型・ランタン型・バルジ型など、色々な型が入り混じったスタイルとなりました。

その後、「グレンフィディックの原酒は美味しいわー」という評価を受けるに至ったので、その形状を変えるわけにもいかず、現在も様々な形状のスチルを継承して蒸溜をしています!
(老朽化により新しくスチルを入れ替える場合も、同じ形状で更新)

そして、ウィリアム・グラント&サンズ社では、今だにカードゥ蒸溜所に恩義を感じているそうです。


■次回は

「ウィリアム・グラント&サンズ社 凄いぞ!列伝」の続きです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?