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相続財産が不動産をメインとするとき

 相続税申告の際、不動産評価については建物は固定資産税評価額。土地については路線価や倍率方式が使われる。いずれにしても基準は国税庁の算定方式が使われます。

 ところが、相続の際の分割目的の評価基準は課税目的の評価とは違います。当事者間で特に争いがなければ、相続税評価で分割しても構わないのですが、争いのある場合は相続税評価では済みません。専門家に相談する等法的手続きを考える必要があります。

 相続の争いは財産が多くある場合だけではありません。相続税評価としては3,000万円+相続人人数✖️600万円以下なら相続税がかからないので、遺産相続も問題にならないと思いがちですが、法的な争いはこの数千万円ぐらいの額を巡る争いが意外に多いです。特に主たる相続財産が不動産で、他の金融資産がわずかの場合、精算方法を巡って結構親族間の争いがあります。

 法的には、調停→裁判と進みますが、この場合でも相続税評価で合意出来れば良いのですが、そうでなければ、不動産評価は時価となります。

 時価の評価は一般的には関係者それぞれが不動産会社に見積もりを依頼し、それらを集計した平均が採用されることが多いです。しかし不動産会社の見積もりは依頼した方の希望に寄り添ってしまう場合もあり、それらを平均した値でも当事者の納得が出来なくなる場合もあります。そうなると鑑定に持ち込まれます。鑑定では裁判所が選ぶ不動産鑑定士により時価が鑑定され、これに基づいて手続きを進めることになります。

 時価は首都圏等都市部では上昇しており、結構高くなっていますが、逆に地方で取引希望のない物件は相続税評価を下回る場合もあります。物件の個別事情もありますので、第三者が出した公正な価格での評価合意を目指すことで解決を図ります。

 評価が確定してから次に遺産分割となるのですが、大きな土地であれば、分筆という形で現物の分割も出来ますが、ほぼ以下の形の中から分けることになるでしょう。

 1.代償取得 
 これは相続する不動産を誰か(例えば現在の居住者)が単独で取得し代わりに他の相続人が貰えるはずの額を金銭で払います。例えば、1億円の不動産がありこれを兄弟2人で分けると、相続分は2分の1ずつになります。兄が不動産を取得した場合、兄から弟に5000万円払います。この5000万円を代償金といいます。

 2.換価分割
 都市部では不動産価格の高騰により、代償分割で誰かが取得しても他の相続人に代償金が払えないケースが多く生じています。そうすると売ってお金にして分けることになります。都市部では結構買い手が付きます。売却も業者等に売るか競売にするか方法がありますが、出来れば任意に売却したいものです。しかし売却方法に争いが生ずると最終的には競売を選択することもあります。

 3.共有取得
 代償取得も換価分割も出来なかった時は、相続人間の共有にすることがあります。一見すると勘弁な解決方法ですが、問題の先送りにしかなりません。例えば3兄弟で共有にした財産は維持費の点でもめることがあり、アパート等だと家賃収入でもめることもあります。最大の問題は次の相続です。3人に2人ずつ子供がいれば最悪6分の1ずつになります。兄弟がずっと仲良しでいても、その子供のことまでは分かりません。その時点でまた争いになる確率は高いのです。

 また、共有については実は自分の持分については、共有者の承諾がなくても売却が出来ます。最近は共有持分の売買を専門としている業者もありますので、経済的に困った共有者が知らないうちに第三者に売ってしまい、思わぬ事態に発展することもあります。

 相続についてもし可能であるなら、お盆の時期等で家族・親族が集まった際に話し合いが出来ればいいのですが、なかなかしにくい話ではあります。


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