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不妊治療中の私の読書録 「漢方小説」

多嚢胞卵巣で自力でスムーズに排卵できていなかったからか、PMSに悩まされることはほとんどなかった。が、排卵誘発剤を服用して定期的に排卵されるようになってから、生理前の気分の落ち込みに悩まされるようになった。仕事のちょっとしたミスが増えたり、上司の一言で激しく気分が沈んだり、仕事が手につかなくなった。

それが、生理が来る6時間前くらい(ほんと、計ったようにこのくらいの時間)に、すぅっと憑き物が落ちたみたいに、霧が晴れるように頭がクリアになっていく。

これがPMSか!あの忌まわしきヤツなのか!と感慨深く思うと同時に、仕事に支障が出るのはどうしたものかとかかってるクリニックで相談したところ、「加味逍遥散」という漢方を処方された。先生は「まぁ効くかわからないけどお守り代わりに」といっていた。そのとおり、そんなに効いた感じはなく、まぁこんなもんかというところ。

その後きたリセット(生理)の後、気分が回復せず突然涙が出るよう。眠りが浅く中途覚醒も頻繁になり、なんにもやる気が出なくなって、とうとう心療内科の門をくぐった。問診票と鬱の質問シートに回答し、「うつ状態」と診断された。しかし、不妊治療中であることも鑑み、ここでも漢方薬が処方された。

「柴胡加竜骨牡蛎湯」というストレスや不眠に効くという漢方薬だ。味はシナモンのような感じ。1日3回、食前に飲む。

漢方薬というと効果が出るのに時間がかかるイメージだったが、1回目に飲んだ直後、不思議と気分が多少上向いた感じがあった。

それから毎日、たまに忘れるが服用を続けており、前向きになったりやる気満々!みたいにはならないけど、フラットに仕事にも治療にも取り組めてると思う。

私が行った心療内科は中国人の先生で、東洋医学をベースにしているところだった。そして、メンタルの柔軟さ(諦めのよさやあんまり傷つかないってことで、強さではない)では自信のあった私がハードル高く考えていた心療内科に行ったわけだ。東洋医学の先生×漢方という信頼と、この私がハードルを越えた、という2点があって、さらに薬の効き目が増強されたのかもしれない。

最初の加味逍遥散は、先生も疑心暗鬼で出していたから、効きが弱かったのかも。

「漢方小説」

前置きが長くなりましたが、標題の件。

昔の恋人から結婚すると聞いた主人公のみのりは、後日突然全身が震えだして救急車に運ばれる。いろんな病院を訪ね歩き、最終的にたどり着いたのが東洋医学の病院だった。そこから自分の身体と精神に向き合っていくという話。

漢方、案外効くジャーン、と思っていろいろ調べようかと考えてた時に、あ、そういえばと思い出したのがこの小説だった。きっと自分に重ね合わせられると期待してたわけではないが、思いの外ぐっとくる箇所がたくさんあった。

「精神があさっての方向に向いてる」

みのりの飲み仲間の森ポンが、いろいろ調子を崩しがちな女性たちに向けて言った言葉だ。言われた当の女性たちはこの言葉にムカつくのだが、私は、なるほどうまい言い方があるなと思った。ムカついてるのはきっと図星だからだ。

とはいえ私も図星だよ。どうしたいのかわかってない。サラリーマンなんだから仕事も気の進まないことでもやらないと。でも子供は欲しい。仕事から逃げたいから子供が欲しいのか?と思うことも。いやいやそんなはずはない、でも治療のことを考えると仕事なんかどうでもよくなる。

みのりがたどりついたのは、東洋医学の身体面「五臓」に精神面「七情」を振り分ける考え方だ。そこで結局自分はどうしたいのかという、自身のテーマを見いだす。

目の前に迫る具体的な問題を克服しようとするのは困難ばかりが目立ってものすごく高い壁に感じてしまう。だけど、その先の自分はどうなっていたいのかを自覚できると、自ずと課題解決に近づけるのかもしれない。

不妊治療頑張っても結局子供はできないかもしれない。それでも人生は続く。どっちにしろ、続く日々の先にどうなっていたいのか。

昨日夫と出かけ、行きたかった鰻屋が混んでて断られて、20分歩いて別の鰻屋に行ったらギリギリ2人だけカウンターに座れた。明るい店主とチャキチャキしたお姉さんで切り盛りするアットホームな店。最後に残った煮こごりと肝焼きを食べられた。秘伝の漬け物が美味しかった。鰻はもちろんふわふわで絶品。満足して帰路につく。途中成城石井でおつまみを買い、家でノンアルワインでもう一杯。可愛いけど愛想のない愛猫の爪切りに夫婦で協力して挑んだ。

結局のところ、これより先、上って何があるんだろう?それを確かめたくて子供が欲しいのかもしれない。

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