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アメタ物語 ~序章・モリモト編~

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隔月で行なっているイベント「アメージング・アメタ」で朗読している小説です。現在執筆進行中。500円で最後まで読めます。
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#コラム

5.アメタ物語 〜序章・モリモト編〜

 モリモトの熱意はついにキリコちゃんではなく彼女の母親に通じたらしく、モリモトは幼稚園から帰ると毎日のように平山家に招かれ遊びに行き、自宅では飲んだことが無いような飲み物、例えば紅茶きのこやヨーグルトなどを彼女の母親からごちそうになった。

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4.アメタ物語 〜序章・モリモト編〜

 モリモト家のある路地はまだ全部の家に住民が収まっていたわけではなく、まだ入居者募集の看板が数戸の門の前に出ていた。
 「ソガベさん家のお隣に新しい家族が引っ越してくるらしいわよ」と母親が言ったのを聞いた時には「またか」と思った程度だったが、たまたま引っ越し荷物を業者と転居する家族で運び込んでいるのを見物に行った時にモリモトの身体は産まれてはじめての異常に見舞われることになる。
 転居してきた家族

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1.アメタ物語 〜序章・モリモト編〜

 モリモトは全身に暖かい水の感触をおぼえて目を覚ました。

 空気も暖かく、海の匂いと甘い花の香りがする。身体はうつ伏せで半身が砂と海水に浸かっている。口の中にも砂や海水が入っているようだ。身体を起こしたいが、なんとなく動けないような気がする。穏やかな波がふくらはぎに打ち寄せている。とりあえず、寝そべったままの姿勢で口の中の異物を吐き出す。身体はあちこち痛むし口内は塩っぱく砂でじゃりじゃりとしてい

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