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heldio #5. meat のかつての意味は「食物」一般だった!

はじめに

今回扱う話題は、meat 「肉」です。肉を意味する meat の昔の意味は、実は「食べ物一般」を指していました。

音声で「ミート」といいますと、英語には実は肉だけでなく、3つ異なる単語が存在します。1つがもちろん meat 「肉」。もう1つは、皆さん知っている meet 「出会う」です。そしてもう1つ、これはあまり知られていないと思いますが、mete 「罰を与える」です。mete out という句動詞として使うことが多いです。

このように「ミート」と同じ発音であっても、3つの異なる英単語に対応するのです。英語にはこのような同音異義語がたくさん存在しますね。

meat の原義は「食べ物」

現代英語では meat は「肉、食肉」という意味で用いますが、近代に至るまで「食べ物一般」を意味していました。肉は確かに重要な食べ物ですが、あくまで食べ物の一種にすぎません。もともと広く一般的に食べ物を指したものが、その一種にすぎない肉を表すものへと意味が特化した、特殊化した事例になります。

このもともとの「食べ物」の意味は、実はいろいろなところに痕跡を残しています。meat と聞くと肉以外に思い浮かばないかもしれませんが、複合語を眺めてみるとオリジナルの意味が意外と残っています。

例えば、sweetmeat という複合語があります。そのまま聞くと、「甘い肉」(?)という感じになりますが、実際には「砂糖菓子」の意味です。たいてい砂糖菓子に肉は入っていないので、ここでは食べ物、お菓子ほどの広く緩い意味で meat を使っています。

他には green meat という表現があります。これは、「緑の肉」(?)となりそうですが、「野菜」の意味なのです。青物ということですね。meat を「肉」と理解してしまうと矛盾してしまいますね。「食べ物」という原義がここに残っていると考えれば分かりやすいですね。これに対して red meat というと赤身の肉ということで、これはまさしく食肉、動物の肉ということになります。

さらに mince meat という食品があります。これはクリスマスに西洋でよく食べられる mince pie というパイのことです。甘いお菓子のパイです。中に肉が入っているわけではありません。どちらかというと、普通、ナッツとか野菜が切り刻まれて入っています。その詰め物のことを mince meat というわけですが、ここでの meat もあくまで詰め物の具、食べ物という意味で、決して肉を指すわけではありません。

meat を含む他の表現

他にもいくつか、やや古風なものが多いですが、「肉」の原義が残っているイディオム等を挙げてみます。

before meat, after meat という言い方があります。これは「食前」「食後」という意味です。この meat は食べ物から転じて一般に食事ぐらいの意味で用いられています。

それから重要なことわざが1つあります。One man's meat is another man's poison. 「ある人の肉は別の人にとって毒だ」という言い方で「甲の薬は乙の毒」に相当します。人の好みは様々だということですが、poison は摂取してはいけないもの、それに対して meat は摂取して良いもの、摂取すると良いものということで食べ物の意味ですね。poison に対するのはあくまで食べ物一般です。

sit down to meat という表現もあります。これは「食卓に着く」ほどの意味で、やはりこの meat も別に肉ではなくて食べ物、食事を指します。

それから meat and drink という言い方もあります。これは食べ物と飲み物ということです。決して肉と飲み物ではありません。これを使ったイディオムとしては meat and drink to somebody があります。誰かにとって何よりの楽しみ、つまり飲食物であるような楽しみであり、得意なものであるというような表現で使います。例えば、Politics is meat and drink to him. 「政治は彼にとってお得意のものだ」となります。

まとめ

今回取り上げた meat のように、昔は非常に広い意味だった食べ物一般が、その一部に過ぎない食肉、動物の肉だけを示すようになってしまったという意味の特殊化の事例は、英単語に多く見られます。

いくつか紹介すると、例えば erotic があります。これはエロチックということで、文字通り「エロい、性愛の、いやらしい」という意味になるわけですが、もとはエッチなイメージではなく、一般に愛、つまり love の形容詞でした。「愛の」ということだったのが、その愛のなかでも性愛に特化した形で、erotic という形容詞になっていきました。これも meat と同じように意味の特殊化の事例ということになります。

もう一つの代表例は deer です。現代では「鹿」という意味ですが、もとは動物一般を指しました。つまり狼も deer だったということになります。ところが、動物の一種にすぎない「鹿」の意味に特化し、今に至ります。

最後に動物つながりでもう一つ述べておきますと、hound 「猟犬」があります。猟をするある種の犬です。特定の犬種を指して hound というわけですが、これは古い時代には実は一般的に犬を表しました。つまり今でいう dog に相当するような広い意味を表したのですが、「猟犬」へと意味が特化してしまった例となります。

このような英語の単語にはたくさん意味が特化したもの、意味が変化してきたというものがありますが、今回はその代表例である meat についてお話ししました。以上、Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の「#5. meat のかつての意味は「食物」一般だった!」に基づいて書き起こしました。


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