見出し画像

【考察】結婚ラッシュだぁ!!孤独に備えろぉ!!【孤独】

ここ数ヶ月の僕のテーマは間違いなく「孤独」あるいは「人と人の繋がり」だった。

というのも4月に新社会人になってから、1か月間一人も友達が出来ず、ガチぼっち生活を送っていたのだ。昼食を食べる友人もいないから、昼はずーーっとお菓子のピーナッツをかじっていた(そしたら痩せた、やったー)。

ひとりでいるのは好きだから別にそれでも構わないのだけれど、時折心に飛来する「このままずっとぼっちだったらヤバいなあ」という想いが孤独への興味を引いたのかもしれない。

「職場での友人関係と最もほど遠い従業員は、昇進とも最もほど遠い人間」という言葉が脳裏にちらつくのだ。僕もサラリーマンだし、現代人だからね。

ということで最近は「人との繋がり」とか「孤独」について色々調べたり考えたりしていた。そこから分かったことは、現代科学の知見では「幸せとは人と繋がることである」ということだ。

人類が生き残る上で、ほかの種に卓越していた能力は”協力する能力”だっただろうから、他者との繋がりに対して何よりも敏感であるのは当然だろう。僕が感じた「ぼっちはヤバいなあ」という感覚は、脳が無意識に出していたアラートだったのかもしれない。


一方で人との繋がりは、現代では何だか危うくなっているようにも思える。人間関係は安らぎを与えるものというよりは、むしろストレスをもたらす煩わしいものになってしまった印象さえある。かくいう僕も、そう感じることが多い。

だがいくら人間関係が煩わしくても、繋がりは必要だ。僕たちの脳は近代以降成立した個人主義のイデオロギーに基づいて設計されていない。どんなに自立した個人がもてはやされようと、繋がりがなければ僕たちの脳は危険信号を出す。

もっと危険なのは、孤独で危険信号が出すぎると逆に繋がりを遠ざけるようになってしまうということだ。脳がバグってしまって人のことを考える能力を失ってしまうのである。

個人主義が進むと孤独が生まれやすくなる。だが孤独を解消するのは結構難しい。そんな葛藤をうまく捉えて共感を呼んだのが『ぼっち・ざ・ろっく!』という作品な気がする。

現代では「俺ぼっちだワww」とか言って自虐する風潮すらある孤独であるが、孤独は単に寂しくて悲しいという個人の問題にとどまらない、洒落にならない実害がある。孤独はうつ病は勿論、心疾患などの病気を誘発することが知られているからだ。

要するに孤独をいかに解消するのかという問題は、割と重要な社会課題であるような気がする。特に若者にとって。

というわけでこの記事では、僕たち世代にとって孤独がなぜ重要な問題であるのか、また孤独をいかにして防ぐのかという点を考えてみたいと思う。


同期が次々結婚する”30歳の壁”と裏に潜む”青年の危機”

孤独はいかにして生まれるのだろうか。大雑把に考えると、孤独は"離別イベント"を経て発生すると考えられる。せっかく人間関係を構築しても、卒業・転勤・喧嘩・死別など様々な離別イベントによって構築した人間関係が消滅してしまうと孤独になってしまう。

孤独と孤立には違いがあり、孤独とは「主観的に自分が独りぼっちだと寂しさを感じている状態」であり、孤立とは「客観的に他者とどれくらいの時間・頻度で出会うか」という指標である。
孤独を研究したカシオポによれば、健康被害など実害は孤立よりも自分がどう感じるかという孤独によって左右されるという。

内閣官房孤独・孤立対策担当室が、全国の2万人を対象に実施した調査によれば、全年代のうち最も孤独を感じやすいのは20~30代だった。筆者の年齢はドンピシャなので、この事実には危機感を感じる。

図1:UCLA孤独感尺度に基づく年齢階級別孤独感
(『人々のつながりに関する基礎調査(令和3年)  調査結果の概要』より)

ではこの時期に孤独を招くイベントとは何であろうか。意外なことに(?)、それは”結婚”であると思われる。

話は変わるが、最近周囲の人間がどしどし結婚している。

僕は結婚する予定もつもりもないので、「シンクロニシティかなあ」なんて他人ごとでボンヤリしていたのだが、友人と話していたところ、どうやら"2年目の壁"と"30歳の壁"というのがあるらしい。

この壁は何かというと結婚についての壁で、まず社会人2年目に結婚する人が増え、次に30歳前後で再び結婚する人が増えるというモノらしい(友人のオリジナル説かもしれない)。

社会人2年目は、仕事にも慣れてきて生活も安定し始めたタイミングだろう。また30歳という人生の節目に、結婚という人生のターニングポイントを持ってくるというのも理解できる。


ここで注目すべきは、最も孤独を感じやすい20~30代に人間関係が大きく変化するという点だ。これを顕著に表すのが、一日のうちに過ごす時間の年齢ごとの推移を、過ごす人の属性ごとに示した下図だ。

図2:他者と一日に過ごす時間の年齢ごとの推移
"American Time Use Survey (2009-2019) and Lindberg (2017)"を基に作成

家庭を持つようになると、当然ながら家庭(パートナー)や子供に割く時間が増えていく。一方で友人に割く時間は減少していく。このことから言えるのは、20〜30代のこの時期に、所属するコミュニティの数が激減するということだ。

例えば既婚者であれば、生活はどうしても家族優先になる。子供やパートナーをほったらかして大学時代の友人なんかと飲みまくっているわけにはいかないだろう。逆に未婚者の場合には、周囲の友人が家庭優先になることで友人と会う機会はどうしても少なくなる。

関わる友人のコミュニティが少ないということは、冗長性がないということだ。例えば既婚者が、急に離婚するといった離別イベントを迎えると、今まで家庭が埋めていた人間関係が空白になる。空白を埋めるために友人たちに連絡を取ろうにも、疎遠になってしまっているため気まずく連絡が取れない、といったことが考えられる。

未婚者の場合はより分かりやすい。ただでさえ少ない一緒に過ごしていた友人との間に離別イベント(例えば喧嘩や転勤など)が起こってしまうと、その空白を埋めるのはかなり難しくなる。みんな家庭や仕事でいっぱいいっぱいだからだ。

要するに、最も孤独を感じやすい20~30代は、所属するコミュニティの数が少なくなることで孤独へのレジリエンスが低くなる可能性が高いのではないだろうか。この仮説を「青年の危機」と呼ぶことにしよう。


青年の危機に備える

長くなったので一旦まとめる。

  • 孤独は離別イベントによって発生する。

  • 20~30代には最も孤独を感じやすい。

  • 20~30代に友人関係は希薄になり、家庭関係が増加する。

  • 人間関係を少ないコミュニティに依存するようになり、離別イベントへの耐性が低くなる(青年の危機)。

さて、青年の危機に対処するにはどうすればいいのだろうか。

離別イベントによって孤独になった際、孤独を回避するには2通りの方法がある。一つは新しい人間関係を作ること。もう一つは既存の人間関係を頼ることだ。だが、新しい人間関係を築くのは労力がいる。一説によれば新しい友人が”親友”になるには200時間が必要だという。ただでさえ友人と過ごす時間が少なくなっているのに、これは難しい注文だろう。

一方で、もう一つの解決策「既存の人間関係を頼る」というのは、今工夫すれば実行可能な対策だ。つまり、多様なコミュニティとの関係を維持するということである。平たく言えば、もし職場の人間関係が悪くなれば(離別イベント)、大学・高校時代の人間関係を頼ってそちらに逃げれるようにしておくのである。

非常に現金な話であるが、人間関係は過ごす時間の長さで決定されてしまう。どんなに仲の良かった人でも、環境が変わり連絡をとらないようになると、人間関係的な順位はどんどん下がっていく。

つまり人間関係を維持するには定期的な交流の機会を設け、人間関係を更新していく必要があると言える。

「800万件以上の電話を分析したノートルダム大学の調査によると、2週間おきに何らかの形で連絡を取るのが、良い目標になるようだ。その最低限の頻度を保てば、友人関係が持続する可能性が高くなる。」

https://president.jp/articles/-/69173?page=3


私事だが、僕は今年の3月に離別イベント(卒業・上京)を迎えた。つまり大学時代の人間関係がこれから疎遠になる可能性があるわけだ。

これまでの議論を踏まえると、ここから30歳の壁や青年の危機に備えるには、30歳までの7年間で人間関係を維持し続ける必要があるといえる。

そうはいっても、人間関係というのは疎遠になればなるほど、連絡をとるのが億劫にならないだろうか。一緒にいたときはあれほど気軽に連絡できたのに、連絡をとらない期間が長くなればなるほど、「今さら連絡するのもなあ」と気まずくなる。

というわけで、ネガティブでない離別(卒業とか転勤とか)の場合には、面倒くさがらずにこまめに連絡しあったり、飲みに行ったりするのが大事だ。


少し長くなってしまったので今回はこの辺で終わっておこう。まとめると、孤独を回避するのは、特に若い世代にとって重要な問題で、そのためには昔の友人たちとも定期的に連絡を取り合おうということだ。

ここまでの話を基に、次の記事では人間関係を維持する簡単な解決策となるLINEbotを紹介したい。

参考文献

『孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか』 著:ジョン=カシオポ, ウィリアム=パトリック

『残酷すぎる人間法則 9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する』 
著:エリック=バーカー

『残酷すぎる成功法則』 著:エリック=バーカー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?