読書記録14 『柳田国男 その人間と思想』
橋川文三『柳田国夫 その人間と思想』
(講談社学術文庫 1977年)
民俗学といえば、柳田國男。
本屋でたまたま見かけ、復刻されていた講談社学術文庫を手にとってみた。
生まれから、学生時代。就職から戦前戦後、そして晩年。内容は、柳田という人物の伝記のような流れで構成されている。
開国して、近代化へと爆進していく日本。
時間が足りない。様々な事情をひっくるめて、誤魔化して進んでいくことになる。国民は当然、置き去りになった。
柳田國男は、農政学を学び今生きている人たちとその先に生まれてくる人たちをより良くしていこうと奉職する。しかし、誤魔化して辻褄をあわせるような国家の動きに次第に疎外感を覚えるようになる。
柳田の政治理念は、
『過去と未来にわたる国民の総体の幸福』
同僚にまであの男のいうことはわからぬといわれてしまう始末だ。そして、この官吏生活の中で後に壮大な意味を持つ旅が始まった。
『柳田の学問は常民が保存した過去=民間伝承の研究を通して、現在の問題に解答を見出そうとする目的があった』と著書にはある。
これもまた、私の専門の歴史学で考えてしまうが、歴史学は史料を重視するがゆえ見えなくなってしまった部分が大きい。こんなに昔から「なぜ?」と言ってきた人がいるんだなと興味深かった。
特に刺さった文章は、敗戦後の柳田が述べた言葉だ。
「普通民衆となるほどというところまで、対談しなければすまされぬ。数が多いから無理として押しつける、盲従させろということになれば今までの政治と格別の変わりはない」
柳田國男に対して、ニュートラルな人というイメージをもった。
今、同じような歴史が今も繰り返されている。
考えようとしなくなっている。
考えなくて良くなっている。
どう考えたらいいかわからなくなっている。
盲従などしたくはない。それでいいのか。
駄目なら、ノーと言うべきだ。