原了郭
茶道では、茶事の始まりに「汲み出し」を出します。寄付という控え室に集まって身支度を整え、お客様が全員揃ったら喉の乾きを潤すために「汲み出し」という湯飲み一杯の白湯や香煎をお出しします。
香煎の始まりは、京都の『原了郭』からです。
現在、『原了郭』といったらお蕎麦屋さんで見る黒七味が有名です。
『原了郭』は、創業元禄16年(1703年)。先祖は赤穂浪士四十七士の一人、原惣右衛門元辰。その子、原儀左衛門道喜が剃髪して「了郭」と号して店名にしました。原惣右衛門元辰が、当時の漢方医二代目曲瀨道三(秀吉の主治医)とその弟子山脇玄心(御殿医)らに処方を学び御香煎を製造しました。茴香(ういきょう)、陳皮(ちんぴ)などの漢方の原料の数種類を合わせて香ばしく煎り、粉末状にして焼き塩で味付けしています。江戸時代になると原了郭は「御香煎所」として宮家・茶人・文人墨客にも愛用されました。東海道の宿場町や茶屋には必ず置かれ旅人の疲れを癒しました。そこから、茶事の汲み出しに取り入れたと思われます。
香煎の入れ方を教わりましたので、書いておきます。
一、汲み出し茶碗に湯を注ぐ(熱湯は香煎の香りを飛ばしてしまうので注意する)
一、小さじに少し香煎をとり、湯に振り入れる(かき混ぜずに自然にする)
一、香煎が器の縁につかない程度の量が見た目にも美しく美味しい