【スタートアップのアジャイル開発】atama plusのスクラムマスターってどんなことするの?
こんにちは。atama plusというAI✕教育のスタートアップでスクラムマスターをしている河口です。
僕の自己紹介とatama plusがどういう会社かについては下記の記事をご覧ください。
さてみなさん、突然ですが「スクラムマスター」という役割をご存知でしょうか?
アジャイル開発のスクラムの中で定義される役割なのですが、定義が広くてわかりにくい・・・。また、従来のウォーターフォール開発にない役割になるので、なかなか理解しづらいかと思います。
組織やプロダクトによってスクラムマスターが実際に行う活動は様々だと言われています。本日はatama plusのスクラムマスターが日々どんなことを考え、どんなことをしているかを具体的にお伝えしたいと思います。
スクラムマスターという役割を初めて知った方、スクラムマスターは知っているけれどatama plusのスクラムマスターはどんな役割かを知りたい方が、少しでもイメージを掴んでもらえると嬉しいです!
そもそもスクラムマスターって?
まずはじめに「スクラムマスター」という役割について簡単に説明します。スクラムマスターは、アジャイル開発における「スクラム」というフレームワークに登場する一つの役割です。
スクラムガイドでは、スクラムチームにおいて、開発者、プロダクトオーナー、スクラムマスターという 3つの明確な責任を定義しています。(この定義が抽象的で理解が難しいのですが笑)
スクラムマスターは、スクラムガイドで定義されたスクラムを確立させることの結果に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームと組織において、スクラムの理論とプラティクスを全員に理解してもらえるよう支援することで、その責任を果たす。
スクラムマスターは、スクラムチームの有効性に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームがスクラムフレームワーク内でプラクティスを改善できるようにすることで、その責任を果たす。
スクラムマスターは、スクラムチームと、より大きな組織に奉仕する真のリーダーである。 スクラムマスターは、さまざまな形でスクラムチームを支援する。
(スクラムガイドより)
以上を簡単にまとめると、スクラムマスターとはスクラムというフレームワークが効果的に活用されることに責任を持つ人、となります。
ただ、実際の現場では様々なスクラムマスターがいます。チーム作りが得意なスクラムマスター、スクラムにおける技術プラクティスの導入が得意なスクラムマスター、プロダクトオーナーの戦略づくりの支援が得意なスクラムマスターなどなど。
スクラムというシンプルなフレームワークを効果的に活用する責任を持ちつつ、具体的な活動内容は会社からの期待値、組織のフェーズによって様々です。
「スクラムマスターの役割についてさらに深く理解したい!」という方は、いろいろな解説記事や本もあるので、「スクラムマスター 役割」などで調べていただくか、下記の本などを御覧ください。
atama plusのスクラムマスターはどんなことをするの?
atama plus社内のスクラムマスターの役割は「チームの成功確率の最大化」です。「チームの成功確率の最大化」ってなんだろう?と思うでしょう。ここから丁寧に説明していきます。
主な支援対象は3つあり「チーム」「チームに所属する個人」「チームが所属する組織」になります。どこをどう支援するかはケースバイケースです。最終的にはMission実現に向けてプロダクトチームが自律的に活動できるように、ありとあらゆる支援をします。
まだ抽象度が高いので、さらに具体的に説明していきます。
役割① チームを支援する
まずチームへの支援をみていきましょう。現在僕が支援しているアプリチームと模試チームは下記のような体制です。
※アプリチームとはAI教材「atama+」の開発に、模試チームとはオンライン模試の開発に携わります。
アジャイル開発は、プロダクト戦略を決めるプロダクトオーナー、UXデザイナー、エンジニア、QAなど様々な専門性を持った人たちが同じゴールに向かって協働することで進められます。
しかし、専門性、背景知識が違う人が協働することは実は簡単ではありません。ここでスクラムマスターはプロダクトオーナーや各開発チームを支援します。
まず考えるのは、「チームが自律的に活動できるようにするためにはどうしたらよいのか?」ということです。これについては様々な研究がされています。
例えば、「チームのゴール設定」「チームメンバーの関係性」「チームの成熟度」「チームメンバーのスキルセット」「チーム外からの権限移譲」「チームのリズム」などチームの成立要素は複数存在します。
あらゆる要素がバランス良く揃うことで、同じ目標に向かって協働する真のチームとして成立します。スクラムマスターはチームの成立要素を理解した上で、チームを観察、阻害要因や伸びしろを特定し、チームメンバーとともに乗り越え、成長の支援をしていきます。
例えば、できたばかりのチームだとそもそも「チームメンバーの関係性」が弱いです。ダニエルキムの「成功の循環モデル」などが有名ですが、「関係の質」が向上することで、「思考の質」、「行動の質」、「結果の質」がよくなっていきます。
このような成立条件を理解した上で、チームビルディングのワークショップを企画したり、総当たりの1on1をして相互理解を深めるように促したりします。
また、チームが協働するためにはゴール設定が必要です。そのためスクラムマスターは、プロダクトオーナーの考えているプロダクトゴール、戦略をチーム全員で理解できるような場を設計したり、プロダクトオーナーに業務負荷が偏らないよう、うまく開発チームに任せていく方向にファシリテーションをしたりします。
基本的にはチームとともに1週間を過ごしながら、スクラムのイベント(プランニング、デイリー、スプリントレビュー、レトロスペクティブ)を通し、ファシリテーションやコーチングを用いてチームが成長できるように支援します。
僕がスクラムマスターとして心がけていることは、調整役になりすぎないことです。ファシリテーションの文脈で調整したりすることはもちろんありますが、スクラムマスターが調整役になりすぎることで、チームのベビーシッターのようになってしまい、逆にチームの自律を阻害することもあります。
チームを信頼して任せる。この絶妙なバランスをいつも考えています。
役割② チームに所属する個人を支援する
チームの構成要因として「個人」が存在します。個々人がそれぞれの能力を発揮できるように環境を整えるのもスクラムマスターの役割です。必要に応じてメンバーと1on1をしながらそれぞれの悩みを聞いたり、課題整理の壁打ちをしたり、コーチングを使ってその人自身が目指す先を一緒にクリアにしたりします。
本人が次のアクションで悩んでいる場合は、ある程度コーチングをするとスッキリして次のアクションに移ることもありますし、「あの人との関係性をもっとよくしたい」というような悩みがあった場合は、3人で直接話す機会を設けて、その人自身が自分でその課題を乗り越えられるように支援します。
スクラムマスターとして個人を支援する際、あくまでその人自身が課題解決できるように提案はしますが、強要はしないことを大事にしています。
「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」
これはスクラムマスターとしてすごく大事にしている言葉です。
役割③ チームが所属する組織を支援する
チームが自律するためには、チームの所属する組織の構造も大きく関わります。チームが組織から適切に権限移譲されていなかったり、チーム間の壁があったりすると、チームが自律的に動こうとしても動きづらいということが起こります。
そのため、チームが自律して動くことを支援するためにメンバーとも対話をして横断的な組織課題にも取り組んでいきます。
例えば、OKRを導入したての頃はアプリチーム30人で定期的にOKRの振り返り会を実施しながら、OKR自体についての理解の底上げをしたり、エンジニア間で新しいメンバーと昔からいるメンバーでatama plus特有の知識格差があった際にレクチャー会を企画して知識受粉の機会を提供したりします。
※OKRとは、現在全社で取り入れている目標の管理・設定方法です。
また組織の拡大に伴ってアジャイル開発をどうスケールさせていくかを考えるのもスクラムマスターの1つのテーマです。もちろんスクラムマスターが単独で考えるのではなく、プロダクトオーナー、開発メンバーを巻き込んでファシリテーションをします。
大規模アジャイルについては前回記事を書かせていただいたのでぜひご覧ください。スクラムマスターが組織に対して何を考えて具体的に何をしたのかのイメージがわくと思います。
また、一緒に大規模アジャイルについて考えたメンバーのインタビュー記事もありますので、ぜひ御覧ください。
atama plusのスクラムマスターって何がおもしろいの?
ここまでの説明で、atama plusのスクラムマスターの日々の動きのイメージは湧いてきましたか?
ここからは僕が考えるatama plusのスクラムマスターのおもしろポイントを3つあげさせていただきます。
・人、チーム、組織を科学する
・肩書にとらわれない。チームの成功確率を上げるためにはなんでもやる
・組織の変化がとにかく早い
人、チーム、組織を科学する
スクラムマスターは常にチームのこと、組織のことを考えています。人はどうやったら協働するのか、組織の構造はどういう力学が働くのか。人、チーム、組織の科学を開発現場で探求しています。
もちろん先人たちが残してくれたアジャイルの組織論、プラクティス、スクラムマスターとしてのファシリテーション、コーチングなどを日々学びながら実践しているのですが、やはり開発現場での学びが一番です。
アジャイル開発は、実践の中で暗黙知から形式知へ変換させながら成長する開発手法です。スクラムマスターとして、日々チームを支援し、(時に失敗しながら)実体験として「人」「チーム」「組織」を科学できるのはとてもおもしろい経験だと思います。
またatama plusにはアジャイルがカルチャーとして根付いており、メンバーのアジャイル開発に対する練度は高いほうだと思います。
一見すると、「ある程度自律している組織ならスクラムマスターは必要ないんじゃない?」と思われるかもしれません。しかし、そのような組織ででてくる課題だからこそより本質的な「なぜ」を突き詰めることができます。
atama plusでは、スクラムのルール通りにこれやりましょう、あれやりましょうというスクラムマスターではなく、常に目の前の事象の「なぜ」を考えてチームの活動を予測し、一歩先の提案をしていくことが求められます。
私たちは、ソフトウェア開発の実践あるいは実践を手助けをする活動を通じて、よりよい開発方法を見つけだそうとしている。
(アジャイルソフトウェア開発宣言)
アジャイル開発に終わりはありません。常に「もっとよくできるのでは?」を考え続けるのでそこを探求できるおもしろさがあります。
チームの成功確率を上げるためにはなんでもやる
atama plusのスクラムマスターには定型業務はあまりません。毎週のセレモニーの運営などはありますが、それ以外は基本的にはチームを観察し、いろいろな人と対話し、課題を見つけてその解決に邁進します。
少し過去の話にさかのぼりますが、僕はatama plusで初めてのスクラムマスターになりました。はじめは右も左もわからなかったので、スクラムマスターたるものどういう役割かをいろいろ勉強しました。
しかし、それがかえって僕自身の動きを制限してしまいました。「これはスクラムマスターの仕事ではない」とか「スクラムへのこだわり」みたいなものに固執してたくさん失敗してきました。
ただ、僕もMission実現向けたワンチームの一メンバーです。一般的なスクラムマスターのイメージに固執しすぎて、「これはスクラムマスターの役割ではない」などというよりも組織を変革するリーダーとしての自覚をもち、だれよりもエネルギッシュに動くことが最も大切であることに気づきました。
それからは、「スクラムマスターとしての河口」というより、「atama plusの河口」としてやったほうが良いと思うことはなんでもやるようにしています。
組織の変化がとにかく早い
atama plusはとにかく変化が多いスタートアップです。先日51億円の資金調達を発表しましたが、会社の規模はこれからもどんどん拡大していきます。そして毎月新しい仲間もたくさん入ってきます。
※最近の資金調達のニュースです
それに伴い、組織の変化もかなり早いです。数ヶ月で組織の規模が変わるので、出てくるチームの課題、組織の課題も未知のものです。この変化の中で全体のバランスを整えにいくので、スピード感をもって意思決定していきながらチーム、組織を前に進めます。
僕のスクラムマスターとしての役割、動きも組織の拡大に伴ってどんどん変わっています。役割にとらわれずに、変化を楽しめる方はatama plusのスクラムマスターが合っているかもしれません。
atama plusのスクラムマスターに興味が湧いてきましたか?
僕は2020年1月に社内1人目のスクラムマスターとしてチームを支援してきました。そのなかで様々な葛藤がありました。
あれから、仲間も増えて現在では3人のスクラムマスターが連携を取りながら5チームの支援を行っています。
今回のnoteを読むと、「スクラムマスターってすごく難しそう」と思われるかもしれません。しかし、スクラムマスターも完璧な存在ではありません。実際の現場では、たくさんの失敗と学びの繰り返しです。僕自身もすべての課題を解決できるスキルを備えているわけではないので、日々チームとともに成長しています。
プロダクトオーナー、開発メンバー、スクラムマスターの3役がお互いに支え合っているからこそ、良いチーム、良いプロダクトづくりができると信じています。
大事なことは「誰よりもチームを愛し、チームを信頼すること」
今回のnoteではatama plusのスクラムマスターについてできるだけ具体的に伝えました。もしこのnoteを読んでピンときたはぜひご連絡いただけると嬉しいです。もっと具体的なエピソードなんかもお話できると思います。
スクラムマスターという少し変わった役割への理解が広がると同時に、atama plusのミッションに共感した新しいスクラムマスターと一緒に働けるのを楽しみしております!
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