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時間が過ぎていく

自分の素足を見ると、自分のものには見えない。こんなにしわしわだったかと思う。

左足の親指の爪には、自分の足には小さいシューズでフットサルをしてできた血だまりがあった。赤黒く、どこまでも深く血がたまっているようだった。


その血だまりも、爪が伸びるごとに外に押し出されていく。


最初は爪の付け根にあったのに、もう半分はなくなった。赤い爪垢が取れる。そう思って、足をくねくねといじっている指の爪も大分伸びた。指の爪が長いとなんだか不快だから、すぐに切ってしまう。

空はオレンジ色で、太陽がすべての人に時間の流れを知らせる。その丸い夕日に時間を忘れさせられたとしても、それは一瞬だ。またすぐに「家に帰って夕飯を作らないと」とか、「今日は部活で活躍できた」とか思って時間の流れへ戻っていく。


このバッグはこんなにほこりを被ってて、もう使うことは無さそうだ。中学生になりたてのセンスで買ったバッグなので、なんとも言えないダサさがある。バッグの中には、覚えのないキーホルダー。これもダサい。何か大事なものだったんだろう。


明日はどんな日だろう。一年後には、自分を思い出してダサいとか思うのだろうか。髪は伸びて、あと何度切られるのだろう。いずれこの髪が肩に触れ、私は邪魔くさく感じるだろう。

髪が抜ける。この貯めた裏紙はいつ使い切るのだろう。真っ白な面は私の文字で埋まっていく。そこに一本の黒い線。うっすらと見える薄い線は、緩やかでシャープな曲線を描き、黒い線をなぞる。

全ての裏紙を使い切ったとき、私は何を思うのか。今まで書いたメモを全て見返す日は来るのか。


時の流れは絶えず、私たちの体はそれに反応する。一歩一歩は小さくとも、いずれどこかにたどり着く。どんなにつらい思い出も、生きていれば、いずれ和らぐ。

全ては波の上。すべては波の上。すべては何も変わらずに、そこでゆっくり揺られてる。

波の上の木の葉のように、みんなどこかへ向かってる。

水面に陽光が映り、誰かが目を細める。


ずっとやってた駅前の工事終わったんだね。うるさかったわー。この建物めっちゃキレイ。コンクリートに傷が一つもないよ。

それに噴水まで作ってる。水が吹き上がり、落ちていく。霧が顔に触れる。もう暑くなってきたので、こういうのは嬉しい。今年の夏も暑くなるそうだ。ラニーニャとかいうやつの影響らしい。冬はいつもより寒かったけど、雪はあんまり見れなかったな。

ああ夏だ。時間がアスファルトの上で溶けていく。シャーベットアイスみたいに。


また寝るでも起きるでもなく、こんなに妄想して時間を使ってしまった。ふと窓の外を見る。

そして、日が昇る。


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