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ニセアカシアと遊園地

この時期に漂う、丸みのある甘い香りの正体がニセアカシアだということを知った。

この香りを嗅ぐと、幼い頃よく連れていってもらった海沿いの遊園地の、カラフルなプードルのショーを思い出す。観客席で嗅いだ香りに似ているのだ。

つい最近まで、あのプードルは甘い香りの香水を纏っていたのかしら…と思っていたが、ステージの近くにニセアカシアが植わっていたのかもしれない。

遊園地は何年も前に閉園して、建物は何も残っていない。
けれど、毎年ニセアカシアの匂いがその遊園地で遊んだ記憶を思い出すきっかけになっている。

そういえばステージの近くには砂金を探すアトラクションがあったな、とか。
ジェットコースターから見えた磯の風景とか。

幼い頃の記憶が知らない間に薄れていくことを寂しく感じていたが、季節の巡りが、思い出を引き出すきっかけになってくれているようで嬉しい。

年に1回でも思い出せば記憶は長持ちする。
今の季節を記憶に当てがえる空想も楽しめる。
ニセアカシアが咲いていたならあの日の遊園地の緑はきっとこんな感じだったはずで…、とか。

今年地元に帰ったらあの遊園地の跡地へ行って、
ニセアカシアの木があるか確かめてみようかな。