十年ぶり以上の人と会った。高校生の終わりにちらっと話し方かもしれない人から、これをどうぞ、と渡されたのが、この本だった。
人からお勧めされた本は気が重い。最後まで読んで、かつ、面白かった、と言わなければいけないような気がするから。さっと読んてみたが、ひとまず、今の私にはくまなく読んでみたいと思える本ではなかったが、著者の田口さんと、メメント・モリで知っていた藤原新也さんの対談だけは、全て読んでみた。
最近の私は、平等とか、自由とか、そういう言葉を幾度ともなく使うが、なんか空っぽになってきた。そんな感覚があったから。古典を読めば、その意味するところがわかるわけでもなかろうが、平等や、愛や、そういった近代語が、土台も持たずに崇拝されている感覚への、忌避感。
そして、冒頭にあったこちらの文章も、ひっかかる。虫けら、という言葉は、本当に嫌なものだなとおもった。小さきものは、それが小さいというだけで、価値を小さく見積もられ、どうでもいいものとして扱われる。そのような態度を、実践してしまう心が浅ましいのに。正直、肉を食う哲学者の言葉など、微塵も響かない。特に、生死、という道徳観にまつわることを語りながら、テーブルマナーに則って、皿の上の殺戮に、無関心な人々の言葉には。
死にたいとか、退屈だとか、思っている人間、少なくとも私には、こういうものより、別の本が、救いになるのかもしれない。本にされるような人々の、言葉をみても、偉そうに語りやがって、としか、思えない。