穴
僕ら、穴を掘る。
生まれたからには、穴を掘ります。
手を使っても、足を使っても、スコップを使っても構いません。穴を掘るのです。
暗い、痛い、咳が出る。
けれども、生まれたからには穴を掘ることを止めることは難しいです。1人残らず全員です。
掘ってる最中、掘りやすい箇所も掘りづらい箇所もあるでしょう。けれど、大した差はありません。
どうせ掘るんです。
奥に、奥に、奥に。
下を掘っていると思います。けれども、本当のところは分かりません。今、たまたま地面が下にあるように感じているだけで、僕たち逆さまかもしれないからです。
掘ることや土に慣れてたまに休憩しながら楽に掘る人もいれば、手足やスコップが折れてしまって土に埋まってしまう人もいるでしょう。一度掘り始めたら出ることは出来ないんです。
しんどいなら、掘る方向を変えてもいいですよ。
でも、掘ってください。休み休みでも掘ってください。
誰のためとかじゃないんですよ。あなたのためでもありません。そんな話じゃないんです。諦めてください。
穴に果てはありません。
あってもどうせ辿りつきませんし、途中であなたは埋もれます。
けれど、穴の先に何があるかは、人それぞれ違います。穴の先に何があるかは、あなたが決めてしまって大丈夫です。穴の先はちゃんとあると思います。
辿り着かなくても、それだけは保証します。
いいやどうか、せめてそれくらいはさせて下さい。
しんどい気持ちは、分かっているつもりです。
私だって掘っているのですから。
私の穴の先には、きっとあなたに繋がってるって思います。だからなんとか、なんとか掘り続けていられます。ありがとう。本当にありがとう。私はあなたを、愛しているんです。