秋
秋が殺された。
僕は彼が大好きだった。
過ぎ去っていく思い出を憂い、これから訪れる長いまどろみを鎮座して待つ彼。
そんな健気さが大好きだ。
思い出を残すにはまどろんでいる暇はなく、
まどろんでいる最中に思い出は作れない。
そんな彼らを繋ぐ彼。
なんとすごいことだろう。
世界は寸分の隙間もなくつながり、周り始める。
彼がいなければ、僕らつながれない。
彼の体温も、空気も、彼が纏う紅のコートも、好きだった。
僕は彼に包まれるのが好きだった。
周りゆく季節の中、僕はいつだって彼を愛おしく思う。どうか、また本来の彼が僕らを包んでくれますように、僕は祈ります。